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Episode.11-H~勉強ってやってると楽しいけど、やらないと楽しくない~

前話:Episode.10-G

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/76/

 放課後の図書室は、いつものように静寂をたたえていた。

 背の高い本棚が光を柔らかく遮り、木の机に映る影の輪郭さえも、どこか優しい。

 その一角に、三人並んで席を取り、教科書とノートを広げていた。


「……し〜っ、だよ」


 圭が人差し指を口元に立てると、凛は「は〜い」と小声で返しながらも、気配の大きな伸びを一つ。


「図書室って、やっぱ静かすぎて緊張する……でも、眠くなる前に頑張らないとね〜」

「そう言ってさっきから一問も解いてないじゃん」


 圭の指摘に、凛は舌を出して誤魔化す。

 隣の結菜が、そんなふたりのやりとりに苦笑しつつ、そっとプリントを一枚差し出した。


「じゃあ、この問題からやってみない? この前の授業の範囲だし、公式もここにメモしてあるよ」

「……ありがたや〜三枝先輩、神様〜!」


 凛は両手で拝むような仕草をしてから、素直に鉛筆を走らせはじめた。

 一方の圭も、自分の問題集を開いて式を書き始めていた。

 机の上には三者三様の筆記音が重なり合い、それが図書室の静寂に溶けていく。

 時折、凛が「これどうやるの?」と質問し、圭が簡潔に説明する。

 それを見ていた結菜が、補足を入れるように語る。


「でもね、その応用問題になると式の順序がちょっと変わるから気をつけて。……ここ、見てみて」

「おおっ、なるほど!」


 三人のやり取りは、静かながらも温かく、どこか居心地が良かった。

 差し込む夕日が本棚の影を伸ばしていく。

 空気は冷たくなりつつあるのに、机のまわりには不思議な熱がこもっていた。


「これ……思ったより、楽しいかも」


 凛がふと漏らした一言に、誰も返さなかった。

 けれど、その場にいた三人とも、きっと同じ気持ちだったのだろう。

 図書室の時計の針が静かに時を刻んでいた。

続き→13-Gへ


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