Episode.11-E~少々やりすぎてしまったようです~
前話:Episode.10-D
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「……ダメ」
背後から聞こえたその一言は、小さく、けれどはっきりとした拒絶だった。
委員長からの推薦にどう応えるべきか迷っていた圭は、その言葉に戸惑いながらも、結局口を開いた。
「すみません。……推薦は、辞退します」
「そうか。残念だな」
委員長は肩をすくめてから、少し考えるように視線を巡らせた。
「じゃあ、三枝さんとかどうかな?」
「えっ、わたしですか……? えっと、考えておきます……」
突然の指名に、結菜は小さく狼狽しつつも、断ることなく曖昧に返した。
そんなやり取りの後、凛がすぐさま寄ってきて口を尖らせる。
「えー、もったいないよ、センパイ~。せっかく頼られてたのに!」
「……僕も、なんで断ったのか、正直よくわかんない」
圭は苦笑混じりに答える。
理由がはっきりしていたわけではない。ただ、あの瞬間――雪那の声の熱に、思考が引っ張られてしまったのだ。
その張本人はといえば、何かに気づいたように、小さく身を縮こませていた。
「……ごめんなさい。勝手に、口出しして……」
その謝罪に、結菜と凛が一斉に口を揃える。
「高嶺さん、勝手に決めちゃだめだよ」
「そうそう、センパイのことなのに~」
普段はあまり感情を表に出さない雪那が、焦ったように目を伏せて小さく頭を下げる。
「……いいよ。過ぎたことは」
圭はそれだけ言って、彼女の顔をじっと見た。
(この関係は、雪那が“選ばずに済むように”という前提で始まった。けれど)
今の雪那は、確かに自分の意思で言葉を放った。
選択の意志が、彼女の中に芽生えてきているのなら――
(それは、きっといいことなんだ)
――――――
空気を和らげようと、誰かが提案した。
「せっかくだし、みんなで本借りようよ」
その言葉に、自然と四人は書棚へと散っていった――はずだった。
だが、圭が一冊の小説を手に取って棚を見ていると、すぐ隣に雪那が立っていた。
そして、彼女はそっと袖を引いた。
「……篠原くんのおすすめがいい」
無表情の奥に、ほんのりとした熱がこもっている。
「え、じゃあわたしも選んで欲しいなー」
すかさず結菜も食いついてくる。
「ずるいずるい~! センパイ、わたしにも何か選んで~」
凛までが圭にぴったりと寄り添ってくる。
図書室の静かな空間に、無言の競り合いが始まっていた。
(……いや、自由に選んでくれればいいのに)
そう思いながらも、圭はそっと笑みをこぼす。
袖に指を添える雪那も、やや距離の近い凛も、さりげなく間に入ってくる結菜も――
誰もが不器用なやり方で、自分に手を伸ばそうとしてくれている。
そんな空気を、圭はどこかくすぐったく、そして少しだけ愛おしく感じていた。
【選択肢1】:
小説→12-Dへ
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【選択肢2】:
哲学書→12-Eへ
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