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Episode.10-F~ちゃんと君を知りたい~

前話:Episode.9-D

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/65/

 図書室へと続く道を、圭は曲がらなかった。

 そのまま昇降口を抜け、靴を履き替え、誰にも見つからないように校門を後にする。

 逃げるような足取りだった。

 圭は、雪那のことを結菜に託して、自分は委員会へ行くことをやめた。

 どこかで一人になって、考えたかった。

 心の中に溜まっていく靄の正体を整理したかった。

 だが、何をどう考えても、明確な答えは出なかった。


(……答えなんて、もう出るわけがない)


 これは“問題”ではない。

 “過去に起きた結果”なのだ。

 変えることはできないし、やり直しもできない。

 今この瞬間考えることのすべてが、「もしあの時……」というたらればでしかない。

 空は薄曇りだった。

 ベンチに腰を下ろし、どこを見つめるでもなく座っていると、細い靴音が近づいてくる。


「……圭くん」


 振り向くと、そこには結菜がいた。

 彼女は制服の裾を軽く整えながら、ほっとしたような笑みを浮かべていた。


「……どうしてここに?」

「委員会が終わってすぐ探しに来たんだよ」


 息は乱れていなかった。けれど、その言葉の裏に焦りと優しさが滲んでいる。

 圭は答えに詰まりながらも、視線を落とした。


「……心配、かけた?」

「うん。すごく」


 結菜は迷いのない声で言い切った。


「最近の圭くん、ずっと何かに囚われてるみたいで。……優しいけど、苦しそうだった」


 その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


「……ねぇ。教えて?」

「最近の圭くんのこと、ちゃんと聞かせて」


 まっすぐに向けられるその視線に、圭は目をそらすことができなかった。

 ほんの少しだけ間を置いて、口を開いた。


「……かいつまんで話すよ」


 ぽつり、ぽつりと。

 雪那と交わした関係のこと。自分の役割のこと。クラスでの出来事。

 そして、自分の中に芽生えた、取り返しのつかない後悔。

 言葉にすればするほど、重かった心が少しだけ軽くなるような気がした。

 話の途中で、結菜は一度も口を挟まなかった。

 ただ、黙って隣にいてくれるその存在が、圭には何より救いだった。

続き→11-Gへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/84/

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