Episode.10-F~ちゃんと君を知りたい~
前話:Episode.9-D
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図書室へと続く道を、圭は曲がらなかった。
そのまま昇降口を抜け、靴を履き替え、誰にも見つからないように校門を後にする。
逃げるような足取りだった。
圭は、雪那のことを結菜に託して、自分は委員会へ行くことをやめた。
どこかで一人になって、考えたかった。
心の中に溜まっていく靄の正体を整理したかった。
だが、何をどう考えても、明確な答えは出なかった。
(……答えなんて、もう出るわけがない)
これは“問題”ではない。
“過去に起きた結果”なのだ。
変えることはできないし、やり直しもできない。
今この瞬間考えることのすべてが、「もしあの時……」というたらればでしかない。
空は薄曇りだった。
ベンチに腰を下ろし、どこを見つめるでもなく座っていると、細い靴音が近づいてくる。
「……圭くん」
振り向くと、そこには結菜がいた。
彼女は制服の裾を軽く整えながら、ほっとしたような笑みを浮かべていた。
「……どうしてここに?」
「委員会が終わってすぐ探しに来たんだよ」
息は乱れていなかった。けれど、その言葉の裏に焦りと優しさが滲んでいる。
圭は答えに詰まりながらも、視線を落とした。
「……心配、かけた?」
「うん。すごく」
結菜は迷いのない声で言い切った。
「最近の圭くん、ずっと何かに囚われてるみたいで。……優しいけど、苦しそうだった」
その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
「……ねぇ。教えて?」
「最近の圭くんのこと、ちゃんと聞かせて」
まっすぐに向けられるその視線に、圭は目をそらすことができなかった。
ほんの少しだけ間を置いて、口を開いた。
「……かいつまんで話すよ」
ぽつり、ぽつりと。
雪那と交わした関係のこと。自分の役割のこと。クラスでの出来事。
そして、自分の中に芽生えた、取り返しのつかない後悔。
言葉にすればするほど、重かった心が少しだけ軽くなるような気がした。
話の途中で、結菜は一度も口を挟まなかった。
ただ、黙って隣にいてくれるその存在が、圭には何より救いだった。
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