Episode.10-E~ゆっくりと毒に体を蝕まれる~
前話:Episode.9-D
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足は迷いながらも、昇降口ではなく、図書室へと向かっていた。
どこか麻痺したような思考のまま、圭は教室から歩き出し、静まり返った廊下を進んでいく。
ドアを開け、図書室に入った瞬間の空気――
静かで、冷たくて、少しだけ古い紙の匂いがした。
それなのに、その後の記憶は曖昧だった。
委員長が丁寧に説明してくれた業務内容も、何も頭に入ってこなかった。
凛とばったり再会して、何か話をしたような気がする。
けれど、何を話したのかも、どう反応したのかも――一切、思い出せない。
唯一、はっきりと覚えているのは、委員長から「次期の委員長を任せたい」と言われて、断ったこと。
なぜかは自分でもわからない。ただ、頷けなかった。
そして、そのすべての選択が、どこか“否定的”だったように思えた。
何もかもがどうでもよくて、頭の中には空虚な風だけが吹いていた。
――――――
それから数日。
圭は、何をどうしていいのかわからないまま、ぼんやりとした日々を過ごしていた。
雪那と交わす“選択”も、次第に雑になっていった。
返答は曖昧になり、どこか上の空で、指先ひとつで返すような会話。
関係は形だけ続いていたが、何かが確実に壊れつつあることを、圭自身も気づいていた。
でも――それを止めるだけの力が、もう残っていなかった。
――――――
そして、放課後の教室。
机にノートを開いたままうつむいていた圭に、雪那が静かに声をかけてきた。
「……篠原くん」
顔を上げると、彼女はいつも通りの無表情だった。
ただ、その目だけは、確かな決意を宿していた。
「私との関係が、あなたを苦しめているのなら……」
「……この関係は、やめるべきだと思う」
その言葉は、重く、はっきりと胸の中に落ちた。
圭は何も言えなかった。
首を縦にも横にも振れず、ただ俯くことしかできなかった。
彼女の靴音が教室を遠ざかるまで、耳を塞ぐこともできなかった。
静かに始まり、静かに終わった関係。
それが、最善だったのかもしれない。
けれど、今の圭には、それすらもわからなかった。
――*――*――
BAD END
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