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Episode.10-C~風紀委員は風紀を守らない~

前話:Episode.9-B

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/63/

 午後の図書室には、静けさという名の温度があった。

 薄曇りの空から差し込む曖昧な光が、書架の上で柔らかく揺れている。静かなエアコンの風と、紙の匂い。そこはまさに、情報と時間が静かに堆積していく空間だった。


「……図書委員の仕事は、基本的に当番制で動いています。昼休みと放課後、図書室のカウンターに立ってもらいます。貸出記録、返却本の整理、予約本の受け渡し……」


 正面のテーブルでは、委員長が資料を手に真面目な口調で話していた。

 だが圭にとっては、聞き覚えのある内容だった。

 丁寧な説明は新人にとってはありがたいが、すでに一通り経験している圭にとっては、ほとんど確認作業のようなものだった。頷きながらも、その意識の多くは流し読みのように周囲へ向いていた。

 ふと、視線を感じた。

 無意識に軽く首を巡らせると、他のクラスの人達の合間からこちらを覗いている、人影があった。

 圭はそれを目視した途端、目を見開く。

 ――有栖川凛。

 中学時代からの付き合いのある後輩。今も変わらず、くしゃっとした笑顔で、小さく手を振っている。

 圭も小さく手を振り返すと、凛は満足そうに、ふにゃりと笑った。

 その姿に、思わず口元が綻びそうになる。だが、その瞬間――

 ポケットの中の携帯が小さく震えた。

 画面を見ると、そこには「高嶺雪那」からのメッセージが届いていた。


 《別のクラスの男子に連絡先聞かれたけど、渡したほうがいいかな?》


 圭は思わず眉をひそめた。

 (たしか……あの子、風紀委員だったような)

 雪那が目立つのは仕方ない。それは彼女の雰囲気や容姿に由来するもので、本人の意思とは無関係なところで引き寄せてしまうものだろう。

 けれど――話したこともないような相手がいきなり連絡先を聞いてくるのは、どう考えても節度を欠いている。


 《断っといて》


 簡潔に返す。

 その直後、すぐ隣で本に目を落としていた結菜が、ふと小声で話しかけてきた。


「……圭くん、さっきの……高嶺さん?」

「え、ああ……ちょっと用事で」

「ふぅん……なんか、親しいんだね」


 結菜の声音はいつもと変わらず静かだったが、わずかに語尾が引っかかるように感じられた。

 圭は笑ってごまかそうとする。


「いや、そんなことないって」

「……そう」


 結菜が目線を戻しかけたとき、図書室のざわめきが大きくなった。

 どうやら委員長の話が終わったようだ。

 周りに合わせて席から立ちあがろうとすると、図書室に似つかわしくない明るい元気な声が耳に飛び込んできた。


「センパイ、久しぶり〜!」

「びっくりしたよ。本当に久しぶりだね」


 目の前に学校指定の制服を着た凛がやってくる。

 彼女と会うのは実に一年ぶりだ。顔を見たら懐かしさが込み上げてきて、何から話そうかと言葉を選ぶ。

 そのとき、ちょうど委員長が圭の前にやってくる。


「篠原くん、ちょっと手伝ってもらえないかな? 今日、新刊の箱が届いてね。ちょっと男手が欲しいんだ」

「あ、えーっと」


 どうしようか。

 手伝ってもいいが、別に自分以外にも男子はいる。


 選択。



【選択肢1】:

 新刊運びを手伝う→11-Cへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/81/


【選択肢2】:

 手伝いを断る→11-Dへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/82/

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