Episode.10-C~風紀委員は風紀を守らない~
前話:Episode.9-B
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午後の図書室には、静けさという名の温度があった。
薄曇りの空から差し込む曖昧な光が、書架の上で柔らかく揺れている。静かなエアコンの風と、紙の匂い。そこはまさに、情報と時間が静かに堆積していく空間だった。
「……図書委員の仕事は、基本的に当番制で動いています。昼休みと放課後、図書室のカウンターに立ってもらいます。貸出記録、返却本の整理、予約本の受け渡し……」
正面のテーブルでは、委員長が資料を手に真面目な口調で話していた。
だが圭にとっては、聞き覚えのある内容だった。
丁寧な説明は新人にとってはありがたいが、すでに一通り経験している圭にとっては、ほとんど確認作業のようなものだった。頷きながらも、その意識の多くは流し読みのように周囲へ向いていた。
ふと、視線を感じた。
無意識に軽く首を巡らせると、他のクラスの人達の合間からこちらを覗いている、人影があった。
圭はそれを目視した途端、目を見開く。
――有栖川凛。
中学時代からの付き合いのある後輩。今も変わらず、くしゃっとした笑顔で、小さく手を振っている。
圭も小さく手を振り返すと、凛は満足そうに、ふにゃりと笑った。
その姿に、思わず口元が綻びそうになる。だが、その瞬間――
ポケットの中の携帯が小さく震えた。
画面を見ると、そこには「高嶺雪那」からのメッセージが届いていた。
《別のクラスの男子に連絡先聞かれたけど、渡したほうがいいかな?》
圭は思わず眉をひそめた。
(たしか……あの子、風紀委員だったような)
雪那が目立つのは仕方ない。それは彼女の雰囲気や容姿に由来するもので、本人の意思とは無関係なところで引き寄せてしまうものだろう。
けれど――話したこともないような相手がいきなり連絡先を聞いてくるのは、どう考えても節度を欠いている。
《断っといて》
簡潔に返す。
その直後、すぐ隣で本に目を落としていた結菜が、ふと小声で話しかけてきた。
「……圭くん、さっきの……高嶺さん?」
「え、ああ……ちょっと用事で」
「ふぅん……なんか、親しいんだね」
結菜の声音はいつもと変わらず静かだったが、わずかに語尾が引っかかるように感じられた。
圭は笑ってごまかそうとする。
「いや、そんなことないって」
「……そう」
結菜が目線を戻しかけたとき、図書室のざわめきが大きくなった。
どうやら委員長の話が終わったようだ。
周りに合わせて席から立ちあがろうとすると、図書室に似つかわしくない明るい元気な声が耳に飛び込んできた。
「センパイ、久しぶり〜!」
「びっくりしたよ。本当に久しぶりだね」
目の前に学校指定の制服を着た凛がやってくる。
彼女と会うのは実に一年ぶりだ。顔を見たら懐かしさが込み上げてきて、何から話そうかと言葉を選ぶ。
そのとき、ちょうど委員長が圭の前にやってくる。
「篠原くん、ちょっと手伝ってもらえないかな? 今日、新刊の箱が届いてね。ちょっと男手が欲しいんだ」
「あ、えーっと」
どうしようか。
手伝ってもいいが、別に自分以外にも男子はいる。
選択。
【選択肢1】:
新刊運びを手伝う→11-Cへ
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【選択肢2】:
手伝いを断る→11-Dへ
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