Episode.8-F~肌を撫でる柔風、心をなぞる呟き~
前話:Episode.7-F
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翌日。春の日差しが柔らかく教室を照らす中、委員会を決めるホームルームが行われた。
担任の先生が一つひとつの委員会名を読み上げていく中、図書委員の欄に圭の名前が呼ばれる。
そして、その次に続いたのは――
「三枝結菜さん、篠原圭くん、図書委員、よろしく」
結菜の名前だった。
いつも通りだ。去年も、その前も、同じ顔ぶれだった。
だけど、なぜか今年はほんの少しだけ、その響きが新鮮に感じられた。
「また一緒だね」
結菜がいつもの控えめな声で、けれどどこか嬉しそうに笑う。
圭は小さく頷き、教室を出て並んで歩き出した。
図書室へと向かう廊下。
窓から差し込む光が、ゆっくりとふたりの足元を撫でていた。
その途中で、結菜がふと話題を切り出す。
「最近さ、圭くん……なんか、話題になってるよね」
言い方は柔らかいが、その内容は鋭かった。
圭は一瞬、足を止めかける。
「……まぁ、なんとなく自覚はあるよ。放課後、いろいろと目立っちゃったからね」
「うん、私も詳しくは聞いてないけど……」
そう前置きしながらも、結菜は歩きながらぽつりと呟く。
圭にも届くか届かないか、風の音に紛れるような小さな声で。
「……ちょっと妬いちゃうな」
聞こえなかったふりをするべきだったのかもしれない。
けれど、その言葉は圭の耳に確かに届いていて、心の中に妙な波紋を残した。
そんな微妙な空気を抱えながら、ふたりは図書室の扉を開けた。
そこに先に来ていたのは――凛だった。
「よっ、センパイ! おー、そっちの子が三枝先輩?」
元気な声とともに手をひらひらと振る凛。
結菜は少し驚いた様子を見せたが、すぐに表情を整える。
「こんにちは、三枝結菜です。図書委員で……」
「有栖川凛です! 一年だけど、センパイのストーカーじゃないから安心してね〜」
冗談めかした凛の言葉に、結菜は小さく笑った。
空気が和らいでいくのを感じながら、圭は二人の間に軽く紹介を挟む。
そうしてしばらく、軽く会話を交わすと、委員長が資料を手に現れた。
「えーっと、それじゃ簡単に今年の図書委員の仕事について説明するね」
説明は思っていたよりもあっさりと終わった。
年間の大まかな予定と、日直制の当番表だけが配られ、特に目新しい内容はなかった。
「じゃ、これで今日の活動は終わり。あとは自由にしていいよ」
委員長の言葉と同時に、室内は解散ムードになる。
「せっかく早く終わったし、帰ろっか?」
凛が言うと、結菜も小さく頷いた。
自然と三人の足が図書室を後にし、廊下へと向かう。
少し不思議な組み合わせ。けれど、どこか悪くない。
春の風が、まだ幼い関係を静かに撫でていた。
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