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せつな  作者: 666
春編
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Episode.8-F~肌を撫でる柔風、心をなぞる呟き~

前話:Episode.7-F

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/54/

 翌日。春の日差しが柔らかく教室を照らす中、委員会を決めるホームルームが行われた。

 担任の先生が一つひとつの委員会名を読み上げていく中、図書委員の欄に圭の名前が呼ばれる。

 そして、その次に続いたのは――


「三枝結菜さん、篠原圭くん、図書委員、よろしく」


 結菜の名前だった。


 いつも通りだ。去年も、その前も、同じ顔ぶれだった。

 だけど、なぜか今年はほんの少しだけ、その響きが新鮮に感じられた。


「また一緒だね」


 結菜がいつもの控えめな声で、けれどどこか嬉しそうに笑う。

 圭は小さく頷き、教室を出て並んで歩き出した。

 図書室へと向かう廊下。

 窓から差し込む光が、ゆっくりとふたりの足元を撫でていた。

 その途中で、結菜がふと話題を切り出す。


「最近さ、圭くん……なんか、話題になってるよね」


 言い方は柔らかいが、その内容は鋭かった。

 圭は一瞬、足を止めかける。


「……まぁ、なんとなく自覚はあるよ。放課後、いろいろと目立っちゃったからね」

「うん、私も詳しくは聞いてないけど……」


 そう前置きしながらも、結菜は歩きながらぽつりと呟く。

 圭にも届くか届かないか、風の音に紛れるような小さな声で。


「……ちょっと妬いちゃうな」


 聞こえなかったふりをするべきだったのかもしれない。

 けれど、その言葉は圭の耳に確かに届いていて、心の中に妙な波紋を残した。

 そんな微妙な空気を抱えながら、ふたりは図書室の扉を開けた。

 そこに先に来ていたのは――凛だった。


「よっ、センパイ! おー、そっちの子が三枝先輩?」


 元気な声とともに手をひらひらと振る凛。

 結菜は少し驚いた様子を見せたが、すぐに表情を整える。


「こんにちは、三枝結菜です。図書委員で……」

「有栖川凛です! 一年だけど、センパイのストーカーじゃないから安心してね〜」


 冗談めかした凛の言葉に、結菜は小さく笑った。

 空気が和らいでいくのを感じながら、圭は二人の間に軽く紹介を挟む。

 そうしてしばらく、軽く会話を交わすと、委員長が資料を手に現れた。


「えーっと、それじゃ簡単に今年の図書委員の仕事について説明するね」


 説明は思っていたよりもあっさりと終わった。

 年間の大まかな予定と、日直制の当番表だけが配られ、特に目新しい内容はなかった。


「じゃ、これで今日の活動は終わり。あとは自由にしていいよ」


 委員長の言葉と同時に、室内は解散ムードになる。


「せっかく早く終わったし、帰ろっか?」


 凛が言うと、結菜も小さく頷いた。

 自然と三人の足が図書室を後にし、廊下へと向かう。

 少し不思議な組み合わせ。けれど、どこか悪くない。

 春の風が、まだ幼い関係を静かに撫でていた。

続き→9-Gへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/68/

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