Episode.8-A~人によって思いやりの方向性なんて違う~
前話:Episode.7-A
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高嶺雪那が転校してきてから、一週間が経とうとしていた。
最初は物珍しさから注目を集めた彼女も、今ではすっかりクラスの輪の中に溶け込み、声をかけられることも珍しくなくなった。もちろん、自分から話しかけることはほとんどない。それでも、その場に存在するだけで自然と空気ができる――それが、雪那という少女だった。
そして彼女の隣には、常に圭がいた。
二人はあの日の“選択”を境に、密接な距離を保ち続けていた。クラスメイトの誰もが、もはやその関係に特別な説明を求めることもない。あの二人はそういう関係なのだ、と、なんとなく納得し、なんとなく見守っている。
だからこそ――ある意味で“面倒くさくも微笑ましい”日常が、今も続いていた。
――――――
「……なぁ圭。高嶺ちゃんってさ、いつも何食べてるの?」
昼休み、弁当を広げたテーブルに森川が顔を出してきた。隣では、雪那が黙々と箸を動かしている。
「別に普通だけど。昨日は卵焼きと肉団子だったかな」
「え、圭が作ってんの?」
「いや、そんなわけないだろ。自分で用意してる」
「へぇ〜、意外と家庭的なんだなあ……」
そう言いながら森川は雪那の弁当にちらりと目を向けたが、当の本人は気にする素振りもなく、ただ食事を続けていた。
「なあ、高嶺ちゃん。俺にも弁当作ってよ~」
冗談混じりにそう言った森川に、雪那は一瞬だけ手を止め、首を傾けてから圭の方を見た。
「……作れば良いの?」
「いや、いいから! 冗談だから!」
「……そうなの?」
純粋に言葉を受け取ってしまった雪那は圭に選択を求めようとしたため、圭は慌てて止めに入る。
言った本人の森川はその様子に少し驚いた表情をしていた。
「え、マジで作ってくれる世界線あるのか……!」
「いや、ないから。というか、お前はいつも購買のパンがあるから大丈夫だろ」
「え、マジで作ってくれる世界線あるのか……!」
「いや、ないから。というか、お前はいつも購買のパンがあるから大丈夫だろ」
冗談めかして笑う森川を圭はあしらう。
そんな中でも雪那は静かに昼ごはんを口に運んでいた。
――――――
そして――
その日は委員会決めの時間だった。
風紀、図書、文化、体育、保健……教室の黒板には所狭しと役割が並び、生徒たちはざわざわと自分の名前を書く準備を進めていた。
圭はふと隣の雪那に視線を向ける。
「……何か、やりたい委員会ある?」
雪那は迷いもなく、答えた。
「……篠原君が、決めて」
もう慣れたやりとりだった。返答を予期していたとはいえ、圭は小さくため息をついた。
(……そろそろ、何か自分で選ばせた方がいいのかもしれない)
そう考えていると、前の席に座っていた女子が、椅子を半分だけ振り向けて話しかけてきた。
「ねえ、高嶺さん。一緒に、委員会……やらな――」
その声は途中でしぼんだ。
女子の視線が圭を一瞥し、そしてすぐに伏せられる。
「……や、やっぱ何でもない!」
無理に笑いながら、女子はまた前を向いてしまった。
その一瞬のやりとりは短かったが、圭には痛いほど伝わってきた。
――ああ、僕たちは、もう“セット”扱いなんだ。
雪那が一人で動く未来を、周囲が想像しなくなりつつある。
それが、妙に息苦しかった。
雪那自身は気にしていないようだった。ただ静かに、圭の言葉を待っている。
(どうする……? 僕と同じ委員会に入れて、ずっと一緒に行動させるべきか……それとも、別の委員会に入れて、彼女に新しい繋がりを作らせるべきか……)
思考は迷いの海に沈んでいく。
そして、圭は再び、彼女の“選択”を、今ここで決めなければならなかった。
【選択肢1】:
圭と同じ委員会に入れる→9-Aへ
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【選択肢2】:
別の委員会に彼女を入れる→9-Bへ
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