Episode.6-E~このクラスの話題の渦中は一体誰?~
前話:Episode.5-J
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「……うん、またな」
そう言って凛に手を振ると、彼女はぱっと笑顔を見せた。
「じゃあね〜」とだけ言い残し、軽快な足取りで廊下を駆けていく。
制服のスカートが翻り、手に下げた弁当箱が小さく揺れていた。
(あいつ、あんなに急がなくても……)
昼休みが終わるタイミングは他の生徒も移動を始める時間だ。
廊下は人通りが増えている。誰かとぶつかったりしなければいいが――
そんな取り越し苦労が、頭をかすめる。
圭は静かに教室へと戻った。
すると、自分の席の周りに妙な人だかりができているのが目に入る。
「圭くん、あんな可愛い子と知り合いだったんだね〜!」
「馴れ初めとか、教えてよ~!」
女子たちの視線が、明らかに興味と好奇心、そして少しのからかいを混ぜて向けられてくる。
囲まれた机の中央に立たされるような構図に、圭は思わずため息をつきたくなった。
「いや、別に付き合ってるわけじゃないから……中学の時からの知り合いで」
「へぇ〜、それにしてもあの距離感、怪しいなぁ〜?」
「手、繋いでた? てか凛ちゃん、なんかすっごく馴染んでたよね」
質問が矢継ぎ早に飛んでくる。
そのすべてに、圭は適当に笑いながら答えた。
余計な波風は立てたくない。だからこそ、あえて深くは語らず、適当に受け流す。
ちょうどそのとき、救いの鐘のように予鈴が鳴った。
チャイムが教室の空気を切り替え、女子たちは「あ〜残念」と言いながら自席へと戻っていった。
ようやく解放された気持ちで、圭は席に腰を下ろす。
なんだか自分が転校生になったような気さえして、少し可笑しかった。
ふと、横に視線を送る。
――そこに、雪那がいた。
いつの間にか席に戻っていたらしい。
相変わらずの無表情、相変わらずの沈黙。
まるで空気のように、そこにいるのに誰にも存在を認識されていない。
クラスメイトたちも、もう彼女に声をかけることはなくなった。
誰かが席を外しても、誰も心配しない。
話しかけようとも思わない。
まるで、最初からそこになどいなかったかのように。
(彼女は……本当に、このクラスの一員なんだろうか)
圭の胸に、冷たい感情が沈んだ。
ほんの少し前まで、彼女は声をかけてきた。
何かを訴えるように。何かに縋るように。
それを、断ったのは自分だ。
それでも、彼女の背中がこんなにも遠くに見えるのは――
なぜだろうか。
理由のわからない悲しさが、胸の奥でじわじわと広がっていった。
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