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Episode.6-E~このクラスの話題の渦中は一体誰?~

前話:Episode.5-J

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/42/

「……うん、またな」


 そう言って凛に手を振ると、彼女はぱっと笑顔を見せた。

 「じゃあね〜」とだけ言い残し、軽快な足取りで廊下を駆けていく。

 制服のスカートが翻り、手に下げた弁当箱が小さく揺れていた。


(あいつ、あんなに急がなくても……)


 昼休みが終わるタイミングは他の生徒も移動を始める時間だ。

 廊下は人通りが増えている。誰かとぶつかったりしなければいいが――

 そんな取り越し苦労が、頭をかすめる。

 圭は静かに教室へと戻った。

 すると、自分の席の周りに妙な人だかりができているのが目に入る。


「圭くん、あんな可愛い子と知り合いだったんだね〜!」

「馴れ初めとか、教えてよ~!」


 女子たちの視線が、明らかに興味と好奇心、そして少しのからかいを混ぜて向けられてくる。

 囲まれた机の中央に立たされるような構図に、圭は思わずため息をつきたくなった。


「いや、別に付き合ってるわけじゃないから……中学の時からの知り合いで」

「へぇ〜、それにしてもあの距離感、怪しいなぁ〜?」

「手、繋いでた? てか凛ちゃん、なんかすっごく馴染んでたよね」


 質問が矢継ぎ早に飛んでくる。

 そのすべてに、圭は適当に笑いながら答えた。

 余計な波風は立てたくない。だからこそ、あえて深くは語らず、適当に受け流す。

 ちょうどそのとき、救いの鐘のように予鈴が鳴った。

 チャイムが教室の空気を切り替え、女子たちは「あ〜残念」と言いながら自席へと戻っていった。

 ようやく解放された気持ちで、圭は席に腰を下ろす。

 なんだか自分が転校生になったような気さえして、少し可笑しかった。

 ふと、横に視線を送る。


 ――そこに、雪那がいた。


 いつの間にか席に戻っていたらしい。

 相変わらずの無表情、相変わらずの沈黙。

 まるで空気のように、そこにいるのに誰にも存在を認識されていない。

 クラスメイトたちも、もう彼女に声をかけることはなくなった。

 誰かが席を外しても、誰も心配しない。

 話しかけようとも思わない。

 まるで、最初からそこになどいなかったかのように。


(彼女は……本当に、このクラスの一員なんだろうか)


 圭の胸に、冷たい感情が沈んだ。

 ほんの少し前まで、彼女は声をかけてきた。

 何かを訴えるように。何かに縋るように。

 それを、断ったのは自分だ。

 それでも、彼女の背中がこんなにも遠くに見えるのは――

 なぜだろうか。


 理由のわからない悲しさが、胸の奥でじわじわと広がっていった。

続き→7-Fへ

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