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せつな  作者: 666
春編
45/817

Episode.6-B~113cm~

前話:Episode.5-D

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/23/

 カフェを出ると、空はすっかり夕焼けに染まっていた。

 茜色が街を包み、ガラス窓やアスファルトに赤い光を落としている。

 放課後のざわめきも幾分か落ち着き、通りには穏やかな時間が流れていた。


「……どこか、行きたいところある?」


 圭が尋ねると、雪那はゆっくりと首を横に振った。


「……君の行くところについていく」


 その答えは、もう慣れた返答だったが――どこか、少しだけ柔らかいようにも感じられた。

 (……僕の行きたい場所、ね)

 改めて思い返してみても、このあたりに“行きたい”と思えるような場所はなかった。駅前の喧騒も、ショッピングモールの賑わいも、今は求めていない。


「……じゃあ、帰ろっか」


 そう言って歩き出す。

 夕方の帰路。

 ほんの少しだけ足取りは軽く、けれど不安がないわけでもなかった。

 そうして、横断歩道の前で足を止めた時だった――



――――――



 ――ブオォォォォオオオッ!


 信号が黄色に変わったのと同時に、重低音が耳を突き刺す。

 大通りを大型トラックが走り抜けていった。

 ブレーキをかけることもなく、鋼鉄の車体はそのまま速度を落とさず交差点を突っ切る。

 その先には、ゆるやかなカーブ。

 トラックは勢いを削ぐこともなく、鉄の塊をひねりながら、金切り音をあげて旋回に入っていった。

 キィ――ッという金属音が、空気を裂いた。

 夕焼けの中に、何かが冷たく切り込んでくるような、不協和音。

 雪那は風に揺れた前髪を指で抑えながら、横に立つはずの圭に目をやった。

 そこに、彼の姿はなかった。


「……?」


 すぐに視線を落とす。

 足元に、しゃがみ込んだ圭の姿があった。

 最初は、靴紐でも結んでいるのかと思った。

 だが、違った。

 彼の肩は小刻みに震えていた。

 喉の奥から漏れる呼吸は、浅く、不規則で――胸のあたりを握りしめるようにして、圭はその場から動けずにいた。

 汗が、額から滴っている。

 あるいは、それは涙かもしれなかった。

 呼吸が追いつかず、まるで溺れているかのような姿。


「……篠原くん」


 思わず、雪那は手を伸ばしていた。


「大丈夫?」


 けれど、その言葉に反応することもなく。

 圭は、震える手をポケットに突っ込んだ。

 そして――取り出したのは、ひとつのサイコロだった。

 1と2だけが彫られた、その小さな選択の象徴。

 圭はそれを、無意識のまま――

 床に、叩きつけた。

 乾いた音が、夕暮れの交差点に響いた。


【選択肢1】:

 1→7-Cへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/51/


【選択肢2】:

 2→7-Dへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/52/

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