Episode.6-B~113cm~
前話:Episode.5-D
https://ncode.syosetu.com/n6562kv/23/
カフェを出ると、空はすっかり夕焼けに染まっていた。
茜色が街を包み、ガラス窓やアスファルトに赤い光を落としている。
放課後のざわめきも幾分か落ち着き、通りには穏やかな時間が流れていた。
「……どこか、行きたいところある?」
圭が尋ねると、雪那はゆっくりと首を横に振った。
「……君の行くところについていく」
その答えは、もう慣れた返答だったが――どこか、少しだけ柔らかいようにも感じられた。
(……僕の行きたい場所、ね)
改めて思い返してみても、このあたりに“行きたい”と思えるような場所はなかった。駅前の喧騒も、ショッピングモールの賑わいも、今は求めていない。
「……じゃあ、帰ろっか」
そう言って歩き出す。
夕方の帰路。
ほんの少しだけ足取りは軽く、けれど不安がないわけでもなかった。
そうして、横断歩道の前で足を止めた時だった――
――――――
――ブオォォォォオオオッ!
信号が黄色に変わったのと同時に、重低音が耳を突き刺す。
大通りを大型トラックが走り抜けていった。
ブレーキをかけることもなく、鋼鉄の車体はそのまま速度を落とさず交差点を突っ切る。
その先には、ゆるやかなカーブ。
トラックは勢いを削ぐこともなく、鉄の塊をひねりながら、金切り音をあげて旋回に入っていった。
キィ――ッという金属音が、空気を裂いた。
夕焼けの中に、何かが冷たく切り込んでくるような、不協和音。
雪那は風に揺れた前髪を指で抑えながら、横に立つはずの圭に目をやった。
そこに、彼の姿はなかった。
「……?」
すぐに視線を落とす。
足元に、しゃがみ込んだ圭の姿があった。
最初は、靴紐でも結んでいるのかと思った。
だが、違った。
彼の肩は小刻みに震えていた。
喉の奥から漏れる呼吸は、浅く、不規則で――胸のあたりを握りしめるようにして、圭はその場から動けずにいた。
汗が、額から滴っている。
あるいは、それは涙かもしれなかった。
呼吸が追いつかず、まるで溺れているかのような姿。
「……篠原くん」
思わず、雪那は手を伸ばしていた。
「大丈夫?」
けれど、その言葉に反応することもなく。
圭は、震える手をポケットに突っ込んだ。
そして――取り出したのは、ひとつのサイコロだった。
1と2だけが彫られた、その小さな選択の象徴。
圭はそれを、無意識のまま――
床に、叩きつけた。
乾いた音が、夕暮れの交差点に響いた。
【選択肢1】:
1→7-Cへ
https://ncode.syosetu.com/n6562kv/51/
【選択肢2】:
2→7-Dへ
https://ncode.syosetu.com/n6562kv/52/




