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せつな  作者: 666
春編
42/817

Episode.5-J~兎が肉食じゃないという証拠はない~

前話:Episode.4-H

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/19/

「……いいよ。くっつけよう」


 圭がそう答えると、凛はぱっと表情を明るくした。

 てっきり机を横に並べるのかと思っていたが、彼女が動かしたのは椅子だった。

 ギィ、と静かな音を立てて凛は自分の椅子をこちらに寄せ、遠慮なく圭の隣に腰を下ろした。


「よいしょっと」


 そのまま、彼女は自然な仕草で圭の肩にもたれかかる。

 肩と肩が触れ合う距離――いや、それどころではなかった。

 体重の大半を預けてきたその様子は、傍から見れば「親密なふたり」の絵面そのものだった。

 案の定、教室の空気がざわつき始める。


「ちょ、なにあれ……」

「え、付き合ってるの?」


 女子たちの声が小さな波紋のように広がっていく。

 男子たちの視線もちらちらとこちらを向いていた。

 羨望、嫉妬、そして少しの興味混じりの疑念。

 様々な感情が圭の背中を刺すように突き刺さってくる。


「凛、ちょっと……近すぎ――」

「やーだ。くっつけていいって言ったのセンパイじゃん」


 そう言ってさらにぐっと体重を預けてくる凛。

 その声には悪びれる様子もなく、どこか確信犯めいたものがあった。


「ねぇねぇ、付き合ってるの?」

「えーっ! どっちから告ったの?」


 すぐ近くにいた女子たちが詰め寄るように訊いてきた。

 圭が口を開く前に、凛が少し得意げに、頬を紅潮させながら言う。


「そう見えますか〜?」


 その声と同時に、彼女の腕が圭の腕に絡もうとする。

 まるで恋人のように。

 いや、それ以上に、周囲をからかうような動作だった。


「……やめろって」


 圭は慌ててその腕を振り払った。

 少し強めに振り払ってしまったことに、ほんのわずかな後悔が走る。


「俺たちは……付き合ってない。中学からの友達。それだけだ」


 言葉に力がこもる。

 その語気に、女子たちは「ふーん」と興味半分、納得半分の表情で引いていく。


 ――そのとき。


 カン、カン、カン――と教室のスピーカーから予鈴が鳴り響いた。

 緊張を含んだ空気が、少しだけほぐれる。

 圭は内心で安堵した。


「お、チャイムだ。いいタイミング~」


 凛はくるりと立ち上がり、机の上の空になった弁当箱を手早く片づける。

 そして、何もなかったかのような顔で笑いながら言った。


「じゃ、そろそろ戻るね。センパイ、ありがと」


 彼女のその言葉には、昼休みのあれこれを帳消しにするような軽やかさがあった。



【選択肢1】:

 「送っていくよ」クラスまで一緒に歩く。→6-Dへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/47/


【選択肢2】:

 「うん、またな」そのまま一人で帰らせる。→6-Eへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/48/

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