Episode.5-I~君は教室から姿を消した~
足音が、階段にぽつぽつと響いていた。
屋上へ向かうのは、今日も同じだった。
ただ――誰かを追いかけるためではなく、一人になるため。
教室を出るとき、ふと視線を廊下の先に向けたが、もうそこに雪那の姿を探すことはなかった。
彼女の背中を追うことは、もうない。
圭はそう、選んだのだった。
助けになりたいという気持ちよりも、彼女から「関わらないで」と言われたあの言葉が――
あのまっすぐな拒絶が――どうしようもなく心に残っていた。
だから、圭は自分の意思を曲げた。
やめるという選択。
引くという判断。
それが最善かどうかは、もうどうでもよかった。
重たい気配を背中にまといながら、屋上の扉を押す。
ギィ、と金属の軋む音がして――空が広がった。
今日は、晴れていなかった。
空は雲に覆われていた。
灰色に塗られたその天蓋は、まるで圭の心をそのまま投影したようだった。
風も吹かず、ただ静かに、重たい空気が辺りを包んでいる。
屋上の片隅に腰を下ろし、弁当の蓋を開けた。
昨日と同じ中身。けれど、味はしなかった。
空腹を満たすためだけに箸を動かす。
ひと口、ふた口。
口の中はやけに乾いていた。
そのとき、不意に――ぽつり。
額に、冷たいものが触れた。
見上げれば、空から小さな雨粒がひとつ、ふたつ、静かに落ちてくる。
音もなく、確かに、降っていた。
すぐに弁当箱を閉じたが、それよりも早く、雨は肩を濡らし、髪を湿らせていった。
けれど、圭は立ち上がらなかった。
弁当も持ち帰らなかった。
ただ、座ったまま、やがて立ち尽くし、雨に打たれた。
どうしようもなく、ただそこにいた。
灰色の空の下、静かに降る雨の中、圭の姿はにじんでいくように――小さく、淡く、孤独だった。
――*――*――
BAD END
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