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Episode.5-H-k~テストアレルギー~

前話:Episode.5-H-j

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/37/

 テスト二週間前。

 教室の空気が、少しだけ張り詰めたものへと変わっていた。

 普段は騒がしい昼休みも、ノートを開く音や教科書をめくる音がそこかしこに散らばっている。

 けれど、圭と雪那の二人は、そんな空気を気にすることもなく、いつものように屋上へと足を運んでいた。

 昼ごはんを済ませ、風の吹く静かな場所で、それぞれの時間を過ごす。

 本来であれば、圭は哲学書のページをめくっているところだ。

 だが、今は違う。手にしているのは、ぶ厚い英語の教科書だった。


 テスト前の学生としての自覚は、さすがにある。


「高嶺さんは、勉強しないの?」


 何気なく問いかけると、雪那は小説を手にしたまま無言で動かない。

 それどころか、視線を落とすその様子は、文字を追っているというより……本に穴を開ける勢いで睨みつけていた。


「……勉強、苦手だったりする?」


 その一言に、雪那の肩がピクリと跳ねた。

 ビクッという反応があからさまに伝わってくる。

 目は逸らしたまま、口も開かないが――その沈黙が、なによりの肯定だった。

 圭は笑いをこらえながら、優しく声をかける。


「もしよかったら、勉強教えるよ」


 しばらくの間。

 風がページをぱらぱらとめくる音だけが、二人の間に流れる。


「……いいの?」


 ぽつりと落ちたその声は、どこか不安げで、けれどわずかに希望を帯びていた。


「もちろん。うちの学校、赤点だと夏休みに補習あるし。高嶺さんだって、夏まで勉強したくはないでしょ?」


 すると雪那は、そっと頷いた。


「……じゃあ。お願い、します」


 その小さな声は、確かに「助けを求める」声だった。

 こうして、二人の静かな勉強会が始まった。

 ベンチに並んで座り、教科書を広げ、わからないところを指さして説明する。

 雪那は頷いたり、メモをとったり。言葉は少ないままだが、確かに「学ぼう」とする意思があった。

 屋上を吹き抜ける風が、開かれたノートの端をくすぐっている。

 もう、そこには春の気配はなく、夏の匂いが混じっていた。

続き→5-H-lへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/39/

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