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せつな  作者: 666
春編
37/817

Episode.5-H-j~視線を感じる~

前話:Episode.5-H-i

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/36/

 季節は、ゆるやかな暖かさから、確かな暑さへと変わりつつあった。

 教室の窓から差し込む光は強く、午後の授業中には誰もが少しだけまぶたを重くする。

 その中で、圭と雪那の関係も、静かに日を重ねていた。

 といっても、特別なことは何もない。

 ただ、昼休みに一緒に屋上へ行って、並んでご飯を食べる。

 それ以外は、以前と変わらず、それぞれの時間を過ごしているだけ。

 だが、人の目というのは、思っている以上に鋭い。


「ねぇねぇ、二人ってさ……お昼休み、どこに行ってるの?」


 授業が終わって間もなく、クラスの女子たち数人が机の周りに集まってきた。

 その笑顔はやけに明るく、だがどこか探るような色も含んでいた。


 その言葉で、圭は初めて――

 この何気ない日々が、周囲からは“そういう関係”に見えているのだと気づいた。


「……一緒にご飯、食べてるだけだよ」


 嘘をつく意味もない。

 ごまかそうとしても、きっと言葉の端から見抜かれる。

 だったら、正直に言うのが一番だ。


「え~、じゃあ、付き合ってるの?」

「いや」


 短く、即答した。

 だが、それはそれで何かを想像させるらしく、女子たちは顔を見合わせてニヤニヤと笑う。

 昼休み、いつものように雪那のもとへ向かおうとしたときだった。


「高嶺さん、今日一緒にお昼食べ……」

「だめだよ、邪魔しちゃ」

「あっ、そっか。ごめん、やっぱなんでもない!」


 あたふたと引き返していく女子たちの背中を見送りながら、圭は思わず苦笑した。


「……なんか、ごめんね? 高嶺さん」


 そう声をかけると、雪那は少しだけ首を傾げ、静かに答えた。


「何で謝るの? こうなること、望んでたんでしょ?」

「それってどういう……あ」


”君の居場所がなくならないように”


 ああ、そうだ――。


 そんなことも、言ったな。

 あのときは、本心からそう思っていた。

 だけど今は、そんな理由なんて二の次で。

 ただ、昼休みに一緒に過ごす時間が、自然と“特別”になっていた。


「行かなくていいの? お昼ご飯、食べる時間なくなるよ」


 雪那の声が、いつものように淡々と届く。


「……うん、行こうか」


 そうして二人は、並んで教室を出ていった。

 他人の視線の中を、何も気にせず、まっすぐに。

続き→5-H-kへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/38/

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