Episode.5-H-a~サイアク~
前話:Episode.5-H
https://ncode.syosetu.com/n6562kv/27/
昼休みの屋上には、今日もまた二人の姿があった。
誰もいない空間に、風がゆるやかに吹き抜ける。
ベンチの上に腰を下ろした雪那は、少しだけ体をこちらから逸らしていた。
だが、圭の問いかけに背を向けることはなかった。
「……懲りないね」
ぽつりと、雪那が呟いた。
感情の読めない声。けれど、そこに確かな疲れと戸惑いが滲んでいた。
圭は手に持った箸を止めぬまま、軽く笑った。
「お昼ご飯、食べなくて……お腹、空かないの?」
「……別に。食べても食べなくても同じ」
そう返した雪那は、足元の床をじっと見つめていた。
その横顔にあるのは諦めか、虚無か――それは圭にも分からなかった。
「ただ探す時間が少なくなるから、今は食べてないだけ」
また、いつものように淡々とした口調だった。
その言葉の意味を深く問う前に――
ぐぅ、と小さな音が響いた。
風の音に紛れず、確かに聞こえたその音は、雪那のお腹からの訴えだった。
沈黙。
雪那は目を伏せたまま、動かない。
顔を見られるのを避けるように、わずかにうつむいていた。
そして、小さく、焦ったような声で言った。
「……そういうことだから。もう来ないでね」
それだけを告げると、彼女はすっと立ち上がり、扉の方へと向かっていった。
足音はやけに軽く、まるでその場から逃れるための足取りのようにも思えた。
圭は追わなかった。
ベンチに残ったまま、手に持った箸をゆっくりと置く。
弁当は途中のまま。けれど、今は食欲もなかった。
ふと、視線を上げる。
空は今日もまた、眩しいほどの青だった。
一点の曇りもなく広がるその空が、どこまでも無垢で、どこまでも遠くて。
その青さの下で、圭は一人、息を吸った。
誰にも届かぬ、問いかけのように。
【選択肢1】:
次の日も雪那を追いかける→5-H-bへ
https://ncode.syosetu.com/n6562kv/29/
【選択肢2】:
諦める→5-Iへ
https://ncode.syosetu.com/n6562kv/41/




