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Episode.5-G~フラグ~

前話:Episode.4-D

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/11/

 頼んだのは、深煎りのコーヒーだった。

 香ばしい香りが湯気とともに立ちのぼり、鼻腔を穏やかにくすぐる。

 カップを受け取った圭は、続けて自分用に軽めのランチセットを追加で頼んだ。


「まだ、お昼食べてないでしょ?」


 そう尋ねると、雪那は静かに「うん」と頷き、再び無言に戻る。

 二人はそれぞれの飲み物と食事に手を伸ばし、会話のないまま、カトラリーの音だけがテーブルに響く。

 このカフェ特有の静けさが、空気のすき間を心地よく満たしていた。

(やっぱり……ここは落ち着く)

 コーヒーをひと口飲みながら、圭はそっと雪那の横顔を見た。

 窓の向こうから注ぐ日差しが、彼女の白い頬を淡く染めている。

 食後、テーブルに残った食器を静かに片付けるタイミングで、ふと訊いてみた。


「昔……君が関係を結んでた人って、どんな人だったの?」


 突飛な質問だと自分でも思った。

 けれど、それは純粋な興味ではなく――“自分は、どうして選ばれたのか”を知りたいという感情に近かった。

 雪那はすぐには答えず、コーヒーの入ったカップに視線を落とした。


「……自分勝手な人ばかりだったよ」


 その声は、表情以上に冷めていた。


「みんなして、私のことを振り回して。でも、それでよかった。私は何も決めなくていいもの」


 言葉だけを聞けば、彼女がその状況に納得していたようにも感じられる。

 だが、圭は尋ねた。


「……嫌なこととかなかったの?」


 少しの沈黙ののち、雪那はぼそりと答えた。


「……あったよ。そういう人もいた。不埒な人とか、私のことをアクセサリーみたいに扱う人とか」


 口調は淡々としていたが、どこか目が揺れていた。

(――聞けてよかった)

 その話が嬉しいわけではない。

 でも、“無かった”と言われるよりも、ずっと良かった。

 彼女が確かに何かを感じ、何かを抱えて、今ここにいるのだと知れたから。

 圭はそっと、指先で自分のカップを撫でた。

(自分は……絶対に、そうならない)

 ただその一心で、言葉にはせず、静かに決意を刻んだ。

続き→6-Cへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/46/

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