Episode.5-F~ゲームのように好感度が上がるシステムが欲しい~
前話:Episode.4-D
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注文したのは、さっぱりとしたオレンジジュースだった。
雪那の好みを正確に知っているわけではない。
だが、彼女の白くて薄い表情には、濃い苦味よりも、爽やかな酸味の方が似合う気がした。
テーブルに運ばれてきたのは、氷の浮かぶ透き通ったオレンジジュースと、自分用に追加した軽めのランチセット。
そういえば今日は、まだ昼食をとっていなかったことを思い出した。
「まだ、お昼食べてないでしょ?」
何気なく尋ねると、雪那は静かに「うん」とだけ頷いた。
二人はそれぞれの飲み物と食事に手を伸ばした。
言葉はなかった。
ただ静かに、ナイフとフォークの音と、氷がグラスを叩く音だけが響く。
この、何も強制されない穏やかな時間。
(やっぱり……こういう空間が、好きだ)
圭はふと、そう思った。
やがて、食事を終えると、自然とぽつぽつと会話が始まる。
「……いつからこの関係、続けてるの?」
カップを指でなぞりながら問いかけると、雪那は少し考えるように目線を落とした。
「……あまり覚えてないけど、中学入る前から、かな」
「そんなに前から……」
思わず感心した声が漏れた。
「逆に、すごいな。それだけ続けてるって」
雪那は特に感情を乗せるでもなく、曖昧に頷いた。
圭は少し間を置いて、続けた。
「……どうして、こんなことしてるの?」
「誰かに、自分のことを決めてもらうのが……楽だったから」
それは、初日に彼女が言っていた言葉とまったく同じだった。
でも、圭はもう一歩踏み込んでみたくなった。
「えーとね。そういうことじゃなくて……“きっかけ”とかさ。何かあったの?」
雪那はその問いに、目を伏せたまま黙っていた。
無言――それが返答だった。
(……まだ、話せないか)
その沈黙を、圭は無理に埋めようとはしなかった。
それからは、どこかぎこちないまま、他愛もない話を繰り返した。
会話が始まり、そして無言で切られ、また別の話題を出す。
それでも、二人の間にある空気は、決して嫌なものではなかった。
互いに深く入り込まないからこそ保てる距離。
でも、その少し先を探ろうとする自分がいるのも、また事実だった。
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