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せつな  作者: 666
春編
25/817

Episode.5-F~ゲームのように好感度が上がるシステムが欲しい~

前話:Episode.4-D

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/11/

 注文したのは、さっぱりとしたオレンジジュースだった。

 雪那の好みを正確に知っているわけではない。

 だが、彼女の白くて薄い表情には、濃い苦味よりも、爽やかな酸味の方が似合う気がした。

 テーブルに運ばれてきたのは、氷の浮かぶ透き通ったオレンジジュースと、自分用に追加した軽めのランチセット。

 そういえば今日は、まだ昼食をとっていなかったことを思い出した。


「まだ、お昼食べてないでしょ?」


 何気なく尋ねると、雪那は静かに「うん」とだけ頷いた。

 二人はそれぞれの飲み物と食事に手を伸ばした。

 言葉はなかった。

 ただ静かに、ナイフとフォークの音と、氷がグラスを叩く音だけが響く。

 この、何も強制されない穏やかな時間。

(やっぱり……こういう空間が、好きだ)

 圭はふと、そう思った。

 やがて、食事を終えると、自然とぽつぽつと会話が始まる。


「……いつからこの関係、続けてるの?」


 カップを指でなぞりながら問いかけると、雪那は少し考えるように目線を落とした。


「……あまり覚えてないけど、中学入る前から、かな」

「そんなに前から……」


 思わず感心した声が漏れた。


「逆に、すごいな。それだけ続けてるって」


 雪那は特に感情を乗せるでもなく、曖昧に頷いた。

 圭は少し間を置いて、続けた。


「……どうして、こんなことしてるの?」

「誰かに、自分のことを決めてもらうのが……楽だったから」


 それは、初日に彼女が言っていた言葉とまったく同じだった。

 でも、圭はもう一歩踏み込んでみたくなった。


「えーとね。そういうことじゃなくて……“きっかけ”とかさ。何かあったの?」


 雪那はその問いに、目を伏せたまま黙っていた。

 無言――それが返答だった。

(……まだ、話せないか)

 その沈黙を、圭は無理に埋めようとはしなかった。

 それからは、どこかぎこちないまま、他愛もない話を繰り返した。

 会話が始まり、そして無言で切られ、また別の話題を出す。

 それでも、二人の間にある空気は、決して嫌なものではなかった。

 互いに深く入り込まないからこそ保てる距離。

 でも、その少し先を探ろうとする自分がいるのも、また事実だった。

続き→6-Cへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/46/

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