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Episode.5-D~ホッと一息~

前話:Episode.4-C

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/10/

 迷いながらも、圭はカウンターの上部に大きく掲げられていた、カラフルな新発売メニューに視線を止めた。

 ホイップクリームにベリーソース、トッピングされたマカロン。甘さが視覚から迫ってくるような一杯――女子向けだと、誰もが一目でわかる代物。


(女の子は甘いのが好き……たぶん)


 それは完全に偏見に近い想像だったが、外しているわけでもない。“正解ではないが、間違ってもいない”という消極的な安心感に身を預け、注文を決めた。

 自分は、いつも通りのオーソドックスなホットコーヒーを。店員に受け取った甘ったるいドリンクのケバケバしさに、思わず目を細める。

 そっと雪那のもとへ向かうと、彼女はすでに窓際の席で静かに座っていた。

 何も言わず、圭は彼女の前にそのドリンクを置く。

 雪那はその様子を見ても、特に目を輝かせることもなかった。

 写真を撮るでもなく、表情を変えるでもなく、ただ静かにストローを口に咥え、ゆっくりと甘い液体を吸い込む。


(……そういうタイプじゃないのか)


 カフェでよく見かける“映え”を気にする女子高生たちとは、やはり違う。

 彼女のそっけなさを見て、圭はそう思った。

 周囲では制服姿の女子たちが賑やかに談笑している。それらの声に囲まれながら、二人のテーブルだけが、不自然なほど静寂に包まれていた。



――――――



「……何も聞かないんだね」


 その言葉が、突然ぽつりと落ちてきた。

 圭は顔を上げる。

 雪那はカップに両手を添えたまま、視線だけをこちらに向けていた。

 目元に感情の影はない。だが、その言葉の裏にあるものは、圭を静かに引っかかせる。


「……何か聞いてほしいの?」


 そう問い返すと、雪那は首を横に振った。

 けれどその仕草には、どこか微かな迷いが見えた気がした。

 圭は戸惑いながらも、その意味を探ろうとする。だが、彼女はそれ以上、何も言わない。

 ただ――もう一度、視線を落としながら、ぼそっと呟いた。


「……苦いのが、好き」


 その言葉に、圭はようやくすべてを理解した。


「……そうなんだ。ごめん。今度から、そうするよ」


 そう答えるのが、精一杯だった。

 謝罪が必要だったのかも分からない。

 だが、それ以外に言える言葉が、彼にはなかった。

 雪那は、何も言わなかった。

 ただまた、カップを手に取り、ゆっくりと口をつけた。

 ――どうやら、全部間違いだったようだ。

 圭は、目の前の静かな少女と、そのわずかな声の意味を、ずっと考え続けていた。

続き→6-Bへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/45/

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