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Episode.5-B~喧騒は好奇心を駆り立てる~

前話:Episode.4-A

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/8/

「きゃー! 見て見て、このワンピかわいくない?」


「ちょっと、こっちにもいいのあったよ!」



 駅前のショッピングモールの入り口から、女子たちが弾けるような勢いで駆け出していった。大きな自動ドアが開き、涼しい冷気が吹き抜ける中、笑い声が次々に店内へと吸い込まれていく。

 その流れの中で、雪那もまた、女子たちに手を引かれていた。

 表情こそ変わらないものの、されるがままについて行くその姿は、どこか不思議な絵面だった。けれど、今日の主役は彼女だ――ならば、それでいい。

 (女子が楽しい場所を選ぶのは、当然だよな)

 圭はそんなふうに思いながら、男子たちと少し距離を取りつつ歩いていた。正直、モールの女子向け店舗は自分には無縁の世界だ。だが、それでもクラス全体が楽しそうな様子を見ていると、自然と足取りも軽くなる。



「なあ、さっきのって何だったんだよ?」



 突然、森川が、肘で圭の脇腹をつついてきた。



「……何が?」


「とぼけんなよ。さっき、高嶺さんがお前に話しかけてたじゃねぇか。いつの間に仲良くなったんだよ」


「……たまたまだよ。別に仲が良いとかそういうわけじゃない」



 圭は肩をすくめてごまかす。

 けれど、森川の目は納得していなかった。



「ふーん……まぁ、いいけどさ。抜け駆けはダメだからな!」



 その言葉が冗談交じりだったとしても、圭の心には小さな波紋が広がっていた。



――――――



 数十分後。

 一行はモールのフードコートに集合していた。モール内を歩き回ってさすがに疲れたのか、飲み物を手に席に着く者、スマホで写真を確認する者、思い思いにくつろいでいる。

 圭も雪那の隣の空席に座ろうとした、その時。


「ねえ圭くん」


 声をかけてきたのは、クラスの女子の一人だった。にこにことした表情だが、その目はどこか探るような色を含んでいる。


「圭くんと雪那ちゃんって、さっきも一緒にいたし……ね? そういう感じなの?」

「えっ……いや、違うって。たまたまだって」


 再びの否定。けれど、それも薄っぺらく聞こえるのか、女子たちは顔を見合わせてくすくすと笑い合う。


「じゃあ、雪那ちゃん。本当に何もないの?」


 女子が雪那に話を振ると、彼女は一度だけ圭の方を見やった。


「……特別なことじゃ、ないよ」


 その言葉は、確かに“否定”ではあった。けれど、それが“肯定”でもないということもまた、誰の耳にもはっきりと伝わってしまう類のものだった。

 彼女の淡々とした返答が、かえって曖昧さを助長したのだ。


――そして、その日を境に、


 クラスの中ではいつしか“あの二人は付き合っているらしい”という共通認識が、密やかに、しかし確かに広がりはじめていた。

 誰かがそう口にすることはない。

 けれど、目線や空気、ちょっとした会話の端々に、それは表れていく。

 まるで、そこに明確な線引きがあるかのように。

続き→6-Aへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/44/

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