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Episode.4-G~根比べ~

前話:Episode.3-D

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/7/

「……ごめん、また後で」

 


 凛の言葉を遮るように、圭は振り返った。


 廊下の向こう、背を向けて歩いていく雪那の姿が小さくなっていく。

 それを視界に捉えながら、凛の方へと短く頭を下げた。



「センパイ……」



 彼女の声には、かすかに寂しさが混じっていた。

 それでも凛は笑った。自分を誤魔化すように、けれど誇らしげに。



「……ちゃんと、選べたんだね。センパイのこと、応援するよ」



 いつもの調子で明るく。

 その一言が、今の圭の背中を押した。


 走り出す。

 逃げるためではなく、向き合うために。


 階段を駆け上がった先で、雪那の後ろ姿を見つけた。

 彼女はもう一つ上の階へ行こうとしていた。



「待って、高嶺さん!」



 足音が止まる。

 ゆっくりと振り返った彼女の顔は、やはりいつものように感情の薄い無表情だった。

 けれど、確かに驚いたような色が、ほんのわずかにその瞳に浮かんでいた。



「……何?」


「一緒に、昼ご飯、食べない?」



 その場しのぎの言葉ではなかった。

 ただの気まぐれでもなかった。


 言葉を口にした瞬間、自分の中にわずかでもあった迷いは、風に吹かれて消えていた。


 雪那は少しだけ首を傾げたまま、こちらを見つめる。

 その仕草が、どこか小動物のようにも見えた。



「……何で?」


「理由とかないよ……ただ、一緒にどうかなって」



 短く言ったその一言に、雪那はほんの少しの間をおいたあと、小さく頷いた。


 昼下がりの屋上。

 夏の気配が忍び寄る、高い空の下。

 風がゆるやかに髪を揺らしていた。


 二人並んで座り、簡単な弁当を広げる。

 沈黙が少しだけ続いたあと、圭が切り出す。



「いつも……昼ご飯、どこで食べてるの?」


「……食べてない」



 あまりにも淡々とした答えに、言葉を失う。



「最近、君の変な噂が広まってる。三年生の教室に行ってるとか」


「……合ってるよ」



 またしても、簡潔な肯定だった。


 理由は聞かない。

 きっと彼女なりのルールがある。

 けれど、そのルールが彼女を蝕んでいる気がして、胸が痛んだ。


 雪那は、ふと立ち上がった。

 空に向けて視線を投げる。



「もう……関わらないほうがいいよ」



 静かな声だった。

 まるで、自分自身にも言い聞かせるように。



「あなたは……他の人と違う気がする。だから、余計に……。あなたのこと、大事にしてくれる人と一緒にいた方が、きっと……いいよ」



 そう言って、彼女は踵を返す。

 足音はすぐに風の中へと紛れていった。


 屋上に一人残された圭は、弁当を閉じることも忘れたまま、青空を見上げた。


 雲ひとつない、完璧な青。


 本来なら、気持ちの良いはずの空。

 けれど今は、不思議と胸の奥に沈む鈍色を映しているように思えた。


 “彼女を――諦めるのか、諦めないのか”


 風が吹いた。


 選択の時は、きっともう遠くない。


【選択肢1】:

 次の日も彼女のことを追いかける→ 5-H

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/27/


【選択肢2】:

 彼女のことを諦める→ 5-I

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/41/

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