Episode.4-E-a~二歩の距離~
前話:Episode.4-E
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雪那と岡田が一緒に過ごす時間が、日に日に増えていった。
最初は、ただの偶然だと思っていた。
だが、それは違った。
偶然ではなく、必然だった。
自分が選んだ結果――そう思い知らされる日々だった。
昼休み、雪那は岡田の隣に座る。
箸を手にして、口を動かしながら、彼の話を聞いている。
たまに頷き、時には短い言葉を返していた。
その反応の薄さが、彼女らしいといえばらしい。
岡田はというと、まだその関係に不慣れな様子だった。
戸惑いを隠せず、緊張の色が顔ににじむ。
けれど、彼なりに頑張っているのだろう。
彼女を気遣うような目線も、不器用な笑みも、どこか誠実だった。
クラスの連中は最初、彼らの関係に首をかしげていた。
だが、人の関心など続いてもせいぜい数日。
今ではすっかり風景の一部になってしまった。
笑い声の一つも交えながら、岡田を軽口で揶揄う声すらある。
「岡田、いつの間に攻略したんだよー」
「え?まさか高嶺さんに告白とかしたの?」
冗談めかして放たれる言葉に、岡田はうまく笑えずにいる。
それでも、否定も肯定もせず、ただ受け流していた。
彼はたぶん、自分が今、どういう立ち位置にいるのか――まだ掴みかねているのだろう。
圭はというと、それを少し離れた席から、ただ眺めるだけだった。
何も口には出さず、視線だけをそっと向けて。
彼女が圭に声をかけてくることは、ほとんどなくなった。
すれ違うときも、目が合うときも、彼女は無言だった。
まるで――最初から、関わりなどなかったかのように。
そうして胸の奥が、じんわりと痛んだ。
「……はぁ」
教室の隅、窓際の席にて。
圭は小さく息を吐いて、バッグの中から一冊の文庫を取り出した。
活字の並ぶページをめくることで、思考の波を少しでも静めようとした。
本の中は静かだ。誰も干渉してこない。誰も頼ってこない。
そして、自分も誰の感情に影響を受けずに済む。
そうやって、ただ文字を追い、世界に沈む。
それだけで――心が少しだけ、平らになった気がした。
けれど。
教室の反対側で、雪那が岡田に顔を向けるのが、どうしても視界の端に映ってしまう。
声にならない声が、胸の奥で鳴っている気がした。
その正体が、未だにわからない。
わかりたくないのかもしれない。
認めてしまえば、きっともう、今までの自分には戻れない。
本の活字が、急に霞んだ。
読みかけの一行が、目に入ってこない。
風が吹いた。
窓の外では、葉が静かに揺れていた。
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