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せつな  作者: 666
春編
13/817

Episode.4-E-a~二歩の距離~

前話:Episode.4-E

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/12/

 雪那と岡田が一緒に過ごす時間が、日に日に増えていった。


 最初は、ただの偶然だと思っていた。

 だが、それは違った。

 偶然ではなく、必然だった。

 自分が選んだ結果――そう思い知らされる日々だった。


 昼休み、雪那は岡田の隣に座る。

 箸を手にして、口を動かしながら、彼の話を聞いている。

 たまに頷き、時には短い言葉を返していた。

 その反応の薄さが、彼女らしいといえばらしい。


 岡田はというと、まだその関係に不慣れな様子だった。

 戸惑いを隠せず、緊張の色が顔ににじむ。 

 けれど、彼なりに頑張っているのだろう。

 彼女を気遣うような目線も、不器用な笑みも、どこか誠実だった。


 クラスの連中は最初、彼らの関係に首をかしげていた。

 だが、人の関心など続いてもせいぜい数日。

 今ではすっかり風景の一部になってしまった。

 笑い声の一つも交えながら、岡田を軽口で揶揄う声すらある。



「岡田、いつの間に攻略したんだよー」


「え?まさか高嶺さんに告白とかしたの?」



 冗談めかして放たれる言葉に、岡田はうまく笑えずにいる。

 それでも、否定も肯定もせず、ただ受け流していた。

 彼はたぶん、自分が今、どういう立ち位置にいるのか――まだ掴みかねているのだろう。


 圭はというと、それを少し離れた席から、ただ眺めるだけだった。

 何も口には出さず、視線だけをそっと向けて。


 彼女が圭に声をかけてくることは、ほとんどなくなった。

 すれ違うときも、目が合うときも、彼女は無言だった。

 まるで――最初から、関わりなどなかったかのように。


 そうして胸の奥が、じんわりと痛んだ。



「……はぁ」



 教室の隅、窓際の席にて。

 圭は小さく息を吐いて、バッグの中から一冊の文庫を取り出した。

 活字の並ぶページをめくることで、思考の波を少しでも静めようとした。


 本の中は静かだ。誰も干渉してこない。誰も頼ってこない。

 そして、自分も誰の感情に影響を受けずに済む。

 そうやって、ただ文字を追い、世界に沈む。

 それだけで――心が少しだけ、平らになった気がした。


 けれど。


 教室の反対側で、雪那が岡田に顔を向けるのが、どうしても視界の端に映ってしまう。

 声にならない声が、胸の奥で鳴っている気がした。

 その正体が、未だにわからない。


 わかりたくないのかもしれない。

 認めてしまえば、きっともう、今までの自分には戻れない。


 本の活字が、急に霞んだ。

 読みかけの一行が、目に入ってこない。


 風が吹いた。

 窓の外では、葉が静かに揺れていた。

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/14/

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