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せつな  作者: 666
春編
12/817

Episode.4-E~物語の主人公になれたら~

前話:Episode.3-C

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/6/

 朝の空気は、妙に澄んでいた。

 晴れた空が広がっているのに、圭の胸の中だけが曇っていた。


「……無事、岡田くんと関係を結べたよ」


 登校してすぐ、雪那はそう言った。

 無表情のまま、淡々と。何の感慨も、ためらいもないように。


「……そう、か。おめでとう。良かった、な」


 圭は笑ってみせた。それがどんな顔だったのか、自分ではよく分からなかった。

 言葉はすらすらと口を出た。だが心は、それに追いついていなかった。


“なんでだろうな。”


 目の前の少女のことを思えば、これは良いことのはずだった。

 彼女は、自分の意思ではなく、誰かの選択を頼りにしないと日々を送ることができない。

 それを分かっていながら、自分はその願いを――最初の選択を――断ったのだ。

 それでも彼女の力になりたいと思い、せめて次の選択だけはと、岡田を選んだ。


なのに――なぜ。


 なぜ、こんなにも胸が痛むのか。


「ありがとう、圭くん。あなたが選んでくれたおかげだよ」


 雪那はそう言って、ふわりと微笑んだ。

 それはきっと、彼女にとっての「感謝」の表現だったのだろう。


 けれど、その笑みが胸を締めつけた。

 彼女が別の誰かと歩むことを、今の自分はどうしても心から祝えなかった。


 矛盾していた。

 願いを断ったのは自分。選んだのも自分。

 なのに、その結果が目の前に現れた瞬間、自分の胸がこんなにも乱れるとは思っていなかった。


「じゃあ、行くね。岡田くんが待ってるから」


 雪那はそれきり、背を向けて歩き出す。

 その後ろ姿を、圭はただ、見送るしかなかった。


 歩幅も、背筋の伸び具合も、昨日までと何も変わらない。

 けれど――彼女は、もう圭の傍にはいない。


 別れの言葉すらなかったのに、それは確かに「別れ」だった。


 そうして彼女は圭の元を離れ、岡田と過ごすようになった。

 昼休みに見かける彼女の隣には、もう他の誰かがいる。

 誰かと話し、誰かに笑い、誰かの言葉に頷く――それが、雪那の日常になっていった。


 圭はと言えば、ただ静かにその様子を見ていた。

 遠くもなく、近くもない距離から。

 視界には入るのに、もう手の届かない場所から。


 この選択が、果たして正しかったのかは分からない。

 自分の心は、今なおその選択を肯定しきれずにいる。

 ただ――ただひとつだけ願うのは。


 この選択が、彼女にとって良いものとなってくれること。

 それだけだった。


 風が吹いた。色の付いた春の終わりを告げるような、少し冷たい風だった。

 校舎の影に揺れる木々が、ざわざわと音を立てた。


 どこかで、鐘が鳴った。


 そして物語は――静かに幕を引いた。

【選択肢1】:

 最初からやり直す。→Episode.1へ

 https://ncode.syosetu.com/n6562kv/1/


【選択肢2】:

 続きを読む。→4-E-aへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/13/

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