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せつな  作者: 666
春編
112/1444

Episode.14-F~回避行動~

前話:Episode.13-C

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/100/

「……ねぇ、センパイ。山、行こっ?」


 悪戯っぽい笑みとともに、凛が身体を乗り出してくる。

 その眼差しには確信と甘えが入り混じっていて、断られることを想定していないようだった。

 圭は一拍置いてから、深くため息をついた。


「……だめ。今日は勉強するって決めただろ」

「えぇ~、でも頭使いすぎて熱持ってるもん~」


 と、こめかみに手を当ててアピールする凛。

 その様子に結菜がくすっと笑う。


「じゃあ冷やしたら?」

「冷やすのが山の風! 自然の力だよ、センパイ!」


 完全に理屈のようで理屈ではない言い分に、圭は顔をしかめた。


「……いいか、凛。今この数時間、集中して勉強できなかったら」

「うん?」

「その代わりに夏休み、何日か補習で潰れることになるんだぞ」

「……やだ」

「だろ? だったら、今やろう。俺も手伝うから」


 静かに、けれど決然と言い切ったその言葉に、凛の表情が一瞬きゅっと引き締まった。

 しばらく口を尖らせていたが、やがて渋々頷く。


「……センパイが言うなら、やるよ。補習はいやだもん……」

「素直でよろしい」


 にやにやしながらも、凛はノートを開き直した。

 その瞬間、圭のスマホが軽く震える。

 画面を見ると、そこには見慣れた名前――高嶺雪那。


 《カフェで飲み物、何頼めばいいか分からない。選んで》

 (……そっちも、頑張ってるんだな)

 《隣の友達と同じのにすればいいと思うよ》

 《わかった》


 間もなく、また通知が来る。


 《右の友達? 左の友達?》

 (……なんだその質問)


 少し笑いながらも、圭は短く返す。


 《左》

 《了解》


 それだけのやり取りだった。

 だが、そのやり取りには、確かに“お互いの日常がつながっている”という感覚があった。

 スマホを伏せると、隣から凛の声が飛ぶ。


「センパイ、このページのここの問題、さっぱりなんだけど」

「どれどれ……あー、これはまずこっちの式から見直そうか」


 そうして、また筆記の音が重なっていく。

 勉強の進捗は緩やかだったが、確かな一歩がそこにはあった。

 カフェの中は落ち着いた雰囲気に包まれていて、窓の外には午後の陽射しが広がっている。

 場所は違えど、同じように勉強に向き合う誰かがいる。

 そう思うと、不思議と背筋が伸びた。

 こうして時間は、静かに、けれど確かに過ぎていった。


続き→15-Cへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/122/

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