Episode.14-F~回避行動~
前話:Episode.13-C
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「……ねぇ、センパイ。山、行こっ?」
悪戯っぽい笑みとともに、凛が身体を乗り出してくる。
その眼差しには確信と甘えが入り混じっていて、断られることを想定していないようだった。
圭は一拍置いてから、深くため息をついた。
「……だめ。今日は勉強するって決めただろ」
「えぇ~、でも頭使いすぎて熱持ってるもん~」
と、こめかみに手を当ててアピールする凛。
その様子に結菜がくすっと笑う。
「じゃあ冷やしたら?」
「冷やすのが山の風! 自然の力だよ、センパイ!」
完全に理屈のようで理屈ではない言い分に、圭は顔をしかめた。
「……いいか、凛。今この数時間、集中して勉強できなかったら」
「うん?」
「その代わりに夏休み、何日か補習で潰れることになるんだぞ」
「……やだ」
「だろ? だったら、今やろう。俺も手伝うから」
静かに、けれど決然と言い切ったその言葉に、凛の表情が一瞬きゅっと引き締まった。
しばらく口を尖らせていたが、やがて渋々頷く。
「……センパイが言うなら、やるよ。補習はいやだもん……」
「素直でよろしい」
にやにやしながらも、凛はノートを開き直した。
その瞬間、圭のスマホが軽く震える。
画面を見ると、そこには見慣れた名前――高嶺雪那。
《カフェで飲み物、何頼めばいいか分からない。選んで》
(……そっちも、頑張ってるんだな)
《隣の友達と同じのにすればいいと思うよ》
《わかった》
間もなく、また通知が来る。
《右の友達? 左の友達?》
(……なんだその質問)
少し笑いながらも、圭は短く返す。
《左》
《了解》
それだけのやり取りだった。
だが、そのやり取りには、確かに“お互いの日常がつながっている”という感覚があった。
スマホを伏せると、隣から凛の声が飛ぶ。
「センパイ、このページのここの問題、さっぱりなんだけど」
「どれどれ……あー、これはまずこっちの式から見直そうか」
そうして、また筆記の音が重なっていく。
勉強の進捗は緩やかだったが、確かな一歩がそこにはあった。
カフェの中は落ち着いた雰囲気に包まれていて、窓の外には午後の陽射しが広がっている。
場所は違えど、同じように勉強に向き合う誰かがいる。
そう思うと、不思議と背筋が伸びた。
こうして時間は、静かに、けれど確かに過ぎていった。
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