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せつな  作者: 666
春編
111/1444

Episode.14-E~Hardcore~

前話:Episode.13-C

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/100/

「……仕方ないな」


 圭は深く息をつきながら、凛の笑顔に根負けするように言った。


「よっしゃー! さすがセンパイ、話がわかる!」


 嬉しそうに両手を上げてぴょんと跳ねる凛。

 その横で、結菜がすっと立ち上がった。


「……じゃあ、行こっか」

「……いいの? つきあわせちゃって」


 圭が申し訳なさそうに言うと、結菜はほんの少しだけ口元を緩めた。


「別に、気にしてないよ。こういうのも、たまにはいい」


 そう言って鞄を肩にかける。

 夏の入口に差しかかる頃、山は緑に満ちていた。

 日差しは少しだけ強くなり始めていたが、木々が落とす影の中は涼しく、虫の音と葉擦れの音が空気をやさしく揺らしていた。



――――――



 二時間後。

 ゆっくりとしたペースで登った一行は、ようやく山頂にたどり着いた。

 標高はそれほど高くないが、町全体を一望できる眺望は、登ってきた苦労を報いて余りあるものだった。


「……きれい」


 結菜がぽつりと呟く。

 凛は既にシートを広げ、バッグからノートを取り出していた。


「さー、ここで勉強しよ!」

「ここでかよ……」


 圭はあきれたように言いながらも、やれやれとノートを開く。

 山頂で広げた問題集に、夏の光が柔らかく差し込んでいた。

 思った以上に風が気持ちよく、緑に囲まれた空間は集中にも適していた。

 こんな勉強風景が、あってもいいかもしれない。

 ――だが、それは束の間の平穏だった。



――――――



 しばらくして、スマホに通知がないことに気づいた圭は、ふと画面を確認した。

 表示されたのは、無機質な文字。


『圏外』


 (……嘘だろ)

 焦るようにスマホを持ち上げ、電波を探そうと歩き回ってみる。

 だが、何をどうしてもアンテナは立たなかった。

 山頂は、電波の届かない“孤島”だったのだ。

 (……まさか)

 嫌な予感が、背筋を冷たく走る。

 ポケットの中で、震えた記憶はなかった。

 でも、それは“圏外だったから”だ。



――――――



 下山し、ようやく電波が届く範囲に入った頃。

 スマホが一斉に震え出した。

 その数――十数件。

 全てが「高嶺雪那」からだった。


 《圭くん、ちょっとだけでいいから返事して》

 《今、いい? 聞きたいことあるの》

 《……そっか。だめなんだね》

 《もう、いいよ》


 最後のメッセージを見た瞬間、圭の胸に重たい塊が落ちてきた。


 ――間に合わなかった。


 ほんの少し、画面を見ていれば。

 ほんの数文字、返していれば。

 自分は“あの約束”を守ることができたはずだった。



――――――



 その夜、圭のスマホには、既読のつかない返信と、途切れた会話の断片が静かに残された。

 雪那は、圭との関係を――終わらせたのだ。

 声もなく、言葉もなく。

 ただ、約束が守られなかったという理由で。

 それは、あまりにも静かで、あまりにも確かな「終わり」だった。



――*――*――



 BAD END

最初からやり直す→プロローグへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/1/


一つ前からやり直す→13-Cへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/100/



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