Episode.14-B~閑話休題~
前話:Episode.13-A
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自動販売機の前に立ち、圭は思案していた。
(甘いのは苦手かもしれない……)
雪那の好みは正直よく分からなかった。けれど、転校初日のことを思い出す。
駅前のカフェで、彼女が無表情のまま口をつけていた黒い飲み物――あれは、たしかにコーヒーだった気がする。
「……これでいいかな」
缶の並ぶ中から、無糖のブラックコーヒーを選んだ。彼女が本当にそれを好んでいたかどうかはわからない。けれど、他のどれよりも“外し”は少ないように思えた。
教室に戻ると、ちょうど雪那が英語の文法問題に取り組んでいる最中だった。
「はい、コーヒー」
声をかけて、そっと机の端
に缶を置く。雪那はわずかに目線を上げ、そして静かに呟いた。
「……ありがとう」
たったそれだけの言葉だった。
けれど、その一言に、圭の胸の奥がふっと温かくなる。
「えっ、高嶺さんって……コーヒー、飲めるんだ?」
近くにいた女子が驚いたように目を見開いた。
「なんか……苦そうなものとか、苦手そうなイメージだったから」
雪那はその声に反応して、わずかに頷いた。
「……好き。コーヒーの味、落ち着くから」
その返答に、女子たちは「へえ~」と感心しながらも、どこか意味深な笑みを浮かべる。
「ってことは、圭くん……ちゃんと覚えてたんだ?」
「えっ?」
「さっき“何でもいい”って言ってたのに、ちゃんと好きなやつ選ぶとかさ~。まるで……ね?」
「偶然だよ」
圭は肩をすくめ、できるだけ自然に、さりげなくはぐらかした。
しかし、女子という生き物はオシャレと噂話には目がないもので、勉強の手を止めて談笑に夢中になっている。
それに巻き込まれた形で、雪那が質問攻めにあっているが、彼女は全く動揺しているようには見えない。
しかし、微かに彼女の頬に朱色が刺していたのは気のせいだろうか。
「……ほら、そろそろ休憩終わりだぞ」
女子たちによって弛みかけていたクラスの雰囲気が竹下の号令によって引き締まったものに戻る。
そうして二人は、閉校のチャイムが鳴るまで、静かに、しかし確かに寄り添うようにして勉強を続けていた。
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