表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

7

城の庭園は、この日のために完全に姿を変えていた。

芝生の周囲には白いテントが並び、普段は手入れされた広場に、訓練用の鈍い武器や臨時の魔法施設が設置されている。

登録者専用のエリア、実技試験用のエリア、そして、古い木々の陰に守られた、小さな面談スペース。そこでは、特に有望と見込まれた候補者たちが個別に審査されることになっていた。

広場を囲むように、ダルカンの貴族たちや外国からの使節たちが静かに様子を窺っていた。

彼らが待ち望んでいるのは、未来の奇跡の誕生か——あるいは、都合のいい道具を見つけることだったのかもしれない。

空は澄み渡り、太陽は高く昇り、人々のざわめきは、秩序を保とうとする学院助手たちの掛け声と混ざり合っていた。

少年少女たちは何十人、いや、百人を超えているかもしれない。

紋章入りの華やかな衣装に身を包んだ者もいれば、村人のような粗末な服を着た者もいる。

怯えたように辺りを見回す者、緊張で固くなる者。

だが、その瞳には誰もが同じ感情を湛えていた。

——興奮と、不安。

彼らは、せめて師匠たちの姿を見たかった。

だが、この門を越えた瞬間から、試験場には受験者しか入れなかった。

庭園を見下ろす石造りのテラスでは、試験官たちが待機していた。

最初に顔を上げたのは、レディ・アンセラだった。

彫像のように背筋を伸ばし、鋭い眼差しで受験者たちを見下ろす。

しばし無言で全体を見渡した後、彼女は冷たく切り出した。

「役割を分担する。

私とローヴェンは筆記試験を担当する。……もっとも、彼の助けが必要だとは思わないけれど。」

ローヴェンは、少し離れた場所でこめかみを押さえていた。

昨夜、酒と戦った結果らしい。顔色が物語っている。反論する気力もない様子だった。

「リッサラ、マイラ、ハレス——魔法試験は君たちだ。

魔力感応と制御力を確認しろ。爆発騒ぎは厳禁だぞ。」

リッサラは静かにうなずいた。

どんな場でも優雅で完璧な王女らしさを崩さない。

マイラ——隊の癒し手——は明るく微笑み、すでにこの喧騒に馴染んでいた。

ハレスは、ただ無言で群衆を観察していた。

その視線は鋭く、誰よりも冷静だった。

「ダリアン、ガルリク、オーグリン——体力試験を頼む。

走破、反応、基礎戦闘。

重傷は禁止だ。」

オーグリンは大きなあくびを噛み殺し、動きは冬眠明けの熊のように鈍かった。

ダリアン・ヴォスは、そんな彼に鋭い視線を突き刺した。

「もう少し早く帰ってきてもよかったんじゃないか。」

ガルリクはぼそりと呟いた。

マイラがにっこりと笑いながら近づいてきた。

「だから私、先に戻ったって言ったでしょ? 誰かはまともでいないとね。」

ガルリクは横目で彼女を見て、小さくため息をついた。

「少なくとも一人は“大人”の振る舞いができると助かる。」

「まあ、今だけかもね。」

マイラは軽く肩をすくめ、持ち場へ向かった。

やがて、門は完全に閉じられ、新たな受験者が入る気配は消えた。

レディ・アンセラは一歩前に出た。

黒いマントが風に揺れ、銀糸の刺繍が光を反射する。

小さく咳払いをし、声を荒げることなく語り始めた。

だが、その声は空気そのものに命じるように、庭園の隅々にまで響き渡った。

目に見えない、だが確かな魔法だった。

「スパイア・オブ・ルーン入学選抜試験へ、ようこそ。」

それは、怠け者の見習いに接する時と同じ、厳しく冷たい声だった。

「君たちは、何らかの推薦を得てここに集った。

だが、本当にその価値があるのか——今から確かめる。」

ざわめきは、瞬く間に静寂に変わった。

緊張が走る。

誰もが無意識に背筋を伸ばし、口をつぐんだ。

「これから三つのグループに分かれる。

筆記、魔法、体力。

それぞれ試験を受けてもらう。

試験の合間には二時間の休憩時間を設ける。

その間、休んでもいいし、考えてもいい。

あるいは——怯えてもいい。」

間。

その沈黙すら、アンセラの威圧感に包まれていた。

「だが、今日ここで全員が生き残るとは限らない。」

冷たい現実だった。

だが、誰一人として文句を言う者はいなかった。

アンセラは少し声を落とし、試験官たちに向かって告げた。

「各自に判別用の筆が渡されている。

特別な才を見せた者には印をつけろ。

情けは不要だ。

同情も、憐れみもいらない。

印をつけた者には未来が与えられる。

つけなかった者には、故郷に帰る道しかない。

——公平であれ。

だが何より、厳格であれ。」

ガルリクは腰に差した黒い筆に目を落とした。

小さな木製の筆が、かすかに青い光を脈打たせている。

指示など、もう必要なかった。

レディ・アンセラは、鋭く手を一度だけ叩いた。

「——始めよう。」

その合図とともに、庭園は一斉に動き出した。

助手たちが名を呼び、テントが開き、子どもたちは小さな集団に分かれていく。

空気が震えていた。

期待と、恐れに。

スパイア・オブ・ルーンへの道は——

今、静かに開かれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ