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夕暮れが始まり、空がオレンジと紫に染まり始めた頃、候補者たちは再び城の公園中央へ集められた。

空気は涼しくなっていたが、緊張感は変わらず濃かった。

その中で、軍人のような足取りで一人の男が前に出た。

短く刈られた黒髪、実用性を重視した軽装の鎧。

彼の冷たい視線が、候補者たちを一人一人無感情に見渡した。

男は鋭い声で名乗った。

「俺はダリアン・ヴォス。スパイア・オブ・ルーンの戦闘教官だ。」

その口調は、拍手や敬礼など求めていないことを物語っていた。

彼は後ろに立つ二人を無言で示す。

「こちらは、ギャルリクとオグリン。」

それだけだった。

余計な説明も、励ましの言葉も、一切なかった。

ギャルリクは、腕を組み、無表情で候補者たちをじっと見つめていた。

オグリンはというと、にやりと歪んだ笑みを浮かべ、何か悪戯を思いついた子供のような顔をしていた。

ダリアンは無駄なく続けた。

「これから行う試験では、持久力、瞬発力、力、そしてプレッシャー下での反応力を評価する。」

そう言って、森へ続く小道を指差す。

「このコースを走り抜け、障害物を越えろ。そして……予期せぬ事態にも対処しろ。」

その口元に浮かんだわずかな笑みには、情けも温かみもなかった。

「覚えておけ。早くゴールした奴が評価されるんじゃない。

備えのある奴が、勝つ。」

候補者たちの間に、微妙なざわめきが広がった。

ライヤは腕を組み、軽くため息をつく。

彼女の視線は、例の少女へと向かっていた。

「……残念。あの子とは、まともな一騎打ちで勝負したかった。」

ぼやきに込められた失望感は、隠しきれていなかった。

エリクは黙ったまま、森へ続く道を睨んでいた。

彼の表情は、すっかり戦う者の顔になっていた。

ダリアンが声を張る。

「スタートラインに並べ。」

候補者たちは草に引かれた白線の前に集まる。

そこへ、オグリンがずかずかと入り込んできた。

にやにやと笑いながら、あたかも自分も参加者の一人であるかのように立ち位置を取った。

一瞬、皆が戸惑う。

ギャルリクもダリアンも動かない。

そしてダリアンが、短く命じた。

「見るな。あれがお前たちの第一関門だ。」

理解した瞬間、全員の背筋が伸びた。

オグリンは拳を鳴らし、嬉しそうに言った。

「待ってたぜ。これが俺の一番好きな瞬間だ!」

続けて、誇らしげに宣言する。

「ちなみに、ここ二年連続で優勝してるからな。」

候補者たちは本能的にオグリンから距離を取ろうとした。

だが——

あの巨体を前に、安全地帯など存在しなかった。

ダリアンが静かに腕を上げた。

空気が張り詰める。

そして——

その腕が振り下ろされた。

「始めろ!」

一斉に草地が踏み鳴らされ、少年たちは走り出した。

オグリンもまた、楽しげな笑みを浮かべながら飛び出す。

その手が、一人の少年を襟首から掴み上げ、無造作に前方へ放り投げた。

少年は悲鳴を上げながら宙を舞い、数人を巻き込みながら地面に倒れ込んだ。

混乱の渦の中、オグリンは獲物を探すように走る。

エリクを見つけ、目を光らせた。

腕を伸ばす。

エリクは紙一重で回避し、草地に滑り込みながら立ち上がった。

その目に宿る光は、逃げる者のものではなかった。

戦う者のものだった。

アエレンは、出遅れた振りをして様子を窺っていた。

そして——

一瞬の隙を突き、オグリンの足に蹴りを入れた。

巨体がぐらつく。

オグリンは顔を向け、楽しそうに笑う。

だがその瞬間、エリクが助走をつけた跳び蹴りを叩き込んだ。

オグリンの巨体がわずかに後退する。

「エリク、走れ!」

アエレンが叫ぶ。

エリクは即座に反応し、走り出した。

二人は迷いなく駆けた。

だが背後から、地響きのような足音が追いかけてくる。

オグリンは完全に標的を定めていた。

一歩一歩が大地を震わせる。

すぐに追いつかれる。

その時——

アエレンとエリクは目配せし、言葉なく戦いながら走る戦術に切り替えた。

アエレンは再び足元を蹴る。

エリクは障害物を飛び越え、肩を狙ったキックを叩き込む。

瞬間、わずかな隙間が生まれる。

彼らは全速力で次の障害物を越える。

丸太の列、滑り込むアエレン、跳び越えるエリク。

後続の候補者たちは混乱し、進めなくなった。

小道は、戦場そのものとなった。

そして、ゴールはまだ遠かった——。


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