セピア色の旅路と冒険記
木漏れ日に輝く蝶に挨拶をして
家族でも友達でもない誰かの提案で
家でも学校でもない何処かへ
探し物すら思い出せないのに
わたしが車から降りると 車は煙を蒸して走り去った
砂埃とセピア色の森の中
おそらくここは山奥で あと少しで頂上といったところ
「その地には おまえ以外に誰もいない」
そう誰かに言われたことを思い出した
そういえば さっきの車の運転手の顔も 今はもう覚えていない
一緒に降りたトランクケースを持って 向かうことにした
でも どこに?
それでも 歩みを止めるつもりはないようだった
つまりは 自分を操作している人が自分ではないようだった
これが あの人が言っていたことか まぁそれは今はいい
とにかく今は この重たいトランクケースを引きずって 向かうことにした
どうやらわたしは 頂上に向かっているらしかった
道中 トランクケースの中身について考えたが もしくは思い出そうとしたが
あいにく 結論を出すこともできなかったし 思い出すこともできなかった
まもなくたどり着いた頂上で わたしは歩みを止めた
麓に沈むセピア色の街並みをじっと眺めて 想いを巡らせた
でも なにを?
なにを想うべきなのか 忘れるべきして忘れたことなのか
そうしたら 忘れたことすら忘れてしまって 想い出そうと
自分が咳き込んだので はっとした
どうやら もういいらしい
セピア色のどこかの街を背に歩き出した
でも どこに?
それでも 歩みを止めるつもりはないようだった
来た道とは反対の道を 迷うことない意志のもとで
途方もない最後の旅が始まった
これが最初で最後だと 気がついていた
そのせいで 嫌いなものまで愛せたのだろう
見たことのない景色を 見たことのある感覚がして
二度と見ることのない景色を 二度と忘れないようにして
綺麗なまま 今日を綴じた