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第一話「脱走」

月も無く、明かりもない闇夜を一体の包帯に巻かれた有機物が息を切らしながら走り抜ける。


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


舗装すらされていない森の中…

半ば獣道の道中に、全身に包帯が巻かれた状態で小枝や草が生い茂る両脇を強引に振り払いながら…宛もなく、前へ前へと突き進み。


自分が置かれている現状から逃げ出せる事だけを目指してその身体を前進させた。


次第に、はるか後ろから複数のあかりがチラつき…逃げている者の身体を捉える。


「っ!

もうこんな所まで!!」


すかさず次の瞬間、遠くから声が響く。


「脱走兵を補足、これより捕縛する」


やがて、数人の歪な気配を纏った追手が走り抜ける一人に徐々に近づく。


走る勢いをそのままに、首から上だけで後方をみると、凡そ50m地点の位置から黒い光沢を放つ影が迫りきた。


「魔道軍部へ

こちらサンマル。

脱走中の人造兵ロクゴウを目視した。

尋問の後、復帰の意思が認められない場合破壊する

承認求む」


無機質な雑音と共に、その問いに対する答えが聞こえた。


『こちら魔道軍部。

サンマルの要請を承認する。

情報漏洩防止の為、破壊後は速やかに残骸を回収せよ。』


「了解」


目の前を走る者が、その声を聞き

一層慌てた様子で逃げる足を早めた。

その身体を道脇の小枝や草が遮り、強行する毎に保護していた包帯を引き剥がしていく。


すると、中から現れたのは全身がツギハギのように無数の縫い目が着いた醜い姿が現れた。


「た…頼む!見逃してくれ!!!」


「停止しろロクゴウ!

逃亡は反逆行為に相当する!」


取り付く島もない状況…

逃げるものは首を横に振りながら無様に喚き散らす。


「ヤダぁ…!俺はもう、エーテル液の中に戻りたくない!!

頼むサンマル!俺を見逃してくれ!」


一瞬の沈黙の後、後方の数名が

続けた。


「ロクゴウの復帰拒絶を確認、これより破壊に移行する。

ヨンナナ、ゴーニー、魔導銃を使用しろ」


「「了解」」


次第に、無機質な音が響くと同時…

数発の蒼白い光を纏った光線がロクゴウ目掛け放たれる。


「うぁ!来たぁ!!」


そのうちの一つが、足元に着弾し…

爆音と共に地形を破壊する。


「あぁぁ!!!」


爆風に吹き飛ばされ、脇道の大木に身体が激突した。


「グッ!…あ、脚が…」


左脚が飛散した破片で切れ…そこから水色の体液が漏れ出てくる。


「命中、ロクゴウの機動力を喪失させた。」


「了解、走行から歩行に切り替えて距離を詰める。各位武装そのまま」


無機質な足音が徐々に近づいてくるや、やがてロクゴウの周囲を三名の追手が包囲した。

三名は全身に黒い鎧と、顔を隠す兜が装着されており表情が読み取れない。


うち、サンマルと呼ばれた一人が、長身の銃口をロクゴウに向けて口を開いた。


「最終警告だ。

我々と共に軍部に戻れ。

さもなくば貴様はここで破壊される」


使い物にならない片足を引きずり首を横に振るロクゴウ、その目からは涙が流れ…

吐息を荒らげていた。


「お、お願いだサンマル…

死にたくない…あそこに戻るのもやだ…」


か細い命乞いを漏らしたロクゴウを見ながら

サンマルは少しの沈黙の後、手に握る魔導銃を起動、銃口から青白い光が灯る。


「破壊する…」


殺される…


そう確信してしまったロクゴウが目を瞑りながら身体を眺めた…


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