8話.師匠殺しに向けて
師匠........殺ります。
「もっと死ぬ気で来いよ!本気で来ないと修行にならないだろ。」
「うるせーよ、こっちはとっくに死ぬ気でやってるわ!お前がほいほい避けすぎなんだよ。こっちの練習になんねーだろ!もっと当たれ!バカ!」
「誰がバカだアホが!」
修行が始まってからずっとこんな感じだった、この空間では時間の進みが超遅いらしい、通常の『試練の間』でも一日が一時間くらいに短縮されるらしいがこの空間は魔王お手製、なんと一年が一秒といった感じのとってもぶっ壊れとなっているのだ。すごすぎだろ。
そんで俺はこの空間で現在百年くらい修行をした。けれど現世では二分くらいになっているってことだ。魔王曰く通常の試練はだいたい現世の時間で一時間、こっちの時間で一年くらいはかかるものらしい、だからまだまだこの空間で修行していても不思議じゃないってことだな、逆に今のこのタイミングで現世に戻ったら早すぎで怪しまれかねない、この修行はきついが確実に俺のためになっている。もう少しここにいてもいいだろう。
ところで修行とは何をしているかって話だが、ただ魔王とタイマンで戦い続けるっていう地獄みたいな修行だ。俺は魔王に攻撃されるたびに魔王の記憶を受け継いでいる、そのため今の俺は魔王のほぼすべての技を習得することができた。ステータスのほうも確実に上がっている。
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『四葉 慎太郎』
体力 1,500,000/1,500,000
魔力 2,000,000/2,000,000
攻撃力 1,000,000/1,000,000
防御力 1,000,000/1,000,000
知力 1,000,000/1,000,000
運 1,000,000/1,000,000
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ユニークスキル
『魔法創造』『魔術創造』
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スキル
『鑑定解析』『範囲拡大』『最小魔力発動』『気配感知Lv10』
『危機感知Lv10』『オートマッピング』『転移魔法陣』
『全属性魔法』『真・魔法』『防御魔法』『真空魔法』
『即死魔法(弱)』『対内外魔力循環術』『付与魔法』
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隠しスキル(魔術)
『断絶の剣』『深淵魔眼』
『死告』
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称号
『魔王の卵』(孵化寸前)『賢者の弟子』『魔王の弟子』
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.........こんな感じにかなり成長した。ちなみに隠しスキルってのは魔術全般のことを指すらしい、これは自分自身にか見ることのできない隠しステータス。どおりで『賢者』を『鑑定』してもわからなかったわけだ。称号の『魔王の卵』がいつの間にか孵化寸前になっているのが気になるところだな、孵化の条件は詳しくはわからないし、魔王もなぜか教えてくれない。魔術は教えてくれるのにこれは教えてくれないってことはほんとに知らないか、教えられない理由があるのだろう、とりあえず気にしないでいよう。そのうち覚醒してくれるだろうって感じで放置ってことにした。
そんなことより魔術の技名が気になりすぎる。名付けてんのは魔王だよな?まじでどういう考えでつけたんだ?この魔術を習得した時に気になったから聞いてみたけど、笑って流された。
「そんなこと気にすんな~使うべき時が来たらわかるぞ?」
だってさ、なんかにやにやしながら答えてたから嫌な予感しかしないがこっちも気にしないでいることにした。修行に集中......
修行をしていて身に着けたものが新しい魔法や魔術、ステータスや知識以外にも結構ある。それは、体術。言ってしまえば殴り合いの技術がシンプルに上がった、ステータスに関係なく『技』というものを身に着けることができた気がする。これなら同じレベルのステータスの相手、さらにはステータスが上の相手にも抵抗できるようになっている。その証拠に今現在俺は魔王相手に結構いい感じに戦えている気がする。スキルにもあった『体内外魔力循環術』というものが働いている。このスキルは読んで字のごとく体の中と外で魔力をうまく運用できるようになるっていうスキルだ。便利だなこれ、シンプルに体術に運用するものいいし、魔法や魔術を発動する際に少ないコストで大きな威力を期待できるようになる便利スキルなのだ。これのおかげで格上とも渡り合えている、ステータスに頼りすぎるとろくなことにならないって魔王も言っていたし、体術を極めるのも悪くないだろう。というわけで修行、修行、修行、修行、修行、修行、修行。
修行を続けてしばらく.............
「そろそろ修行を初めて3,000年ってとこか、多分現世では一時間くらいたっていることだろう、お前は今ステータス上では『賢者』よりも強くなっている。が、油断したら簡単にヤツに殺されてしまうからな、十分に気を付けて戦えよ?『賢者』生きている限り俺ら『魔王』が自由に生きていくことなんて到底不可能だからな、必ず殺せ、そして滅ぼせ。俺の教えを忘れるなよ?」
「ああ、もちろんだ。必ずやり遂げる。」
「わかってるならいい、じゃあ、行ってこい。」
「おう!行ってくる。」
そういうと俺は、光に包まれた。現世に戻っているのだろう、魔王からもらった記憶が正しいのならば現世に戻った瞬間に『賢者』との闘いが始まるはずだ。用意しとくか.........。助けてもらった恩人で師匠を殺すのはなかなかに忍びないが、やるしかないことってのは人生で何回かあるものだ。そのうちの一回が今回だってだけだ、ただ無情に、理性的に、合理的に判断を下し、自分に利益のあるほうの選択肢を取るだけだ、いつもやってることだ。
いつもどうりにいこう。
目が覚めた。最後に眠った場所と同じ場所だ。
「..........。」
まだ『賢者』は気づいていない、背中を向けて何かをしている、仕掛けるなら今だ。俺は、魔王から受けた修行で習得した魔法を発動する。魔術はまだ俺には魔力諸費が激しい。初手は様子見且つ最大威力の攻撃を。
(「発動 真・魔法『断空・断地・断海』)
完全に不意打ちだった。完全な背後から魔力を完全に制御した完璧な一撃だったはずだ。そんな俺の全力の一撃を『賢者』は、ノールックで腕だけを後ろに伸ばし受け止めたのであった。
「...........なっ!?」
「やあ、起きたかい?いきなりびっくりするじゃないか、試練から目が覚めたと思ったらいきなり攻撃を仕掛けるなんて物騒だね。」
「なんで止められるんだ?俺の攻撃は完璧に隠してたはずだぞ?」
「私の魔術だ。ごめんね、教えていなかったね、魔術『読心の耳』周囲のものの心の声が無条件で聞けるようになるっていう便利な魔術さ。」
「そうか、攻撃のタイミングはわかっていても攻撃の種類まではわかっていなかったみたいだな、その攻撃、即死の魔法が付与されてるんだよ、触った時点で腕が腐ってくぞ?早くどうにかしたほうがいいぞ?」
「へー、面白いね、この短時間でそんな魔法を習得したんだね。興味深い、私が用意した試練ではそんなものは習得できるように設定してなかったんだけどね?どうやったんだい?私の領域に誰かが入っていく気配はしたけどその人が原因かな?あと、即死魔法の付与なんて『賢者』である私にはまったく効かないよ?」
「ああ、そんなものとっくに知ってるよ、けど考えが足りてないな、そんなことわかってる俺がそんな無意味な攻撃を不意打ちで使うわけないだろ?ほら、自分の手見てみろよ。」
「..............なっ!?」
『賢者』は自身の腕を見る。攻撃を受け止めた腕はボロボロと崩壊をしていたのである。魔術を習得しているものは魔法は効かない。これは例外はあるがほとんどの場合、絶対である。アルフレット・ワイズは『賢者』となってから戦闘した経験はないに等しい、隠居をしている彼に喧嘩を売るものなど実力を測れない盗賊か魔物、魔獣のいずれかになる。その中に魔法を使うものなどいないし、仮に使えるものがいたとしても使う暇もなく殺されている。故に彼は魔法を受けた経験など皆無だ、そんな彼が受けた魔法で傷つけられた、そんな初体験に一瞬動揺をした。
その動揺が致命的な隙になることを、『賢者』は自身の下半身が消え去ったことと同時に理解をすることになる。
まじで回収したい伏線が多すぎるよ、何してんだよ過去の自分..........