53話.友
今回は少し寄り道で過去話です
「避けろッ!流星ィ!!!!!」
後ろから友達の声がした、焦りだけを伝えるような必死の声
いつだっただろうか、同じような声を聞いたことがある。
およそ2年前、高校入学の日。同じクラスになった同級生。当時はただそれだけの関係だった。片や優等生のエリート学生、片や運動能力全振りの野生児、本来相容れないはずの関係だった。
関わりを持ったのは些細なきっかけだった。
「おっ!お前もその漫画好きなの?!俺も好きなんだよ!どのキャラ推し?」
「..........」
「.....!あっ俺、渡辺 治樹。青木クンだよね?ヨロシク~」
帰宅時、好きな漫画の新刊の発売日、学校から自宅への帰宅ルートにある本屋で新刊の漫画を手に取ったところにいきなり話しかけてきたヤツだった。
ヒラヒラと握手を求めるように差し出してきた手をじっと見ていると自己紹介をしてきた。
馴れ馴れしいヤツだと思った。
声と態度のデカいヤツ。その程度の認識しかしていなかった人物からいきなり話しかけられた時、その反応は当然冷ややかなものだった。
それとない返事を返し、その場はすぐに去ったのだがそれから妙にその男に付きまとわれるようになってしまった。
登校してから朝礼までの時間、休み時間、放課後。何かと話しかけてくるようになった渡辺に初めは鬱陶しく感じていたが次第に打ち解け一か月も経つ頃には友達といえる程度の関係を気づけていた。
とある日、事件が起こった。
その日は定期試験期間だった、親からの重圧で成績を落とすわけにはいかないと隙間時間をすべて勉強につぎ込んでいた俺は下校中、問題集を片手に『ながらスマホ』ならぬ『ながら勉強』で下校していた。そんな俺の背中に突然大声が飛んでくる
「おいッ!あぶねぇッ!!!!」
その声と同時にグイッと服を後ろに引っ張られ、バランスを崩した俺はその場で尻もちをついた。
その瞬間に俺の目に飛び込んできた光景は衝撃的なものだった
見覚えのある坊主頭の青年が車道に飛び込んでいた、横から迫る車
『危ないッ!!!』
声にならない大声で叫ぶ
車道に飛び込んでいたその青年はギリギリの所で歩道に転がり込み車を回避。
派手に転んだその青年は最近仲良くなった渡辺 哲弘だったのだ
「いってぇ~、あ、大丈夫?ケガない?」
いつもと変わらぬ笑顔でこっちの無事を確認する渡辺
「俺の心配してる場合じゃないだろ!お前の方が手怪我しているし!それに手の突き方!大丈夫なのか?」
明らかにダメな手の突き方をしていた、折れていたっておかしくない
「ん?あぁ、このくらい大丈夫だって!ほら、こんなに元気」
そう言ってブンブンと血の出ている右腕を振る
「うん、ケガはないっぽいね、んじゃ!また明日~」
俺が何かを言おうとする前にさっさと帰ってしまった渡辺、お礼も言えなかったことに後悔しながらも明日感謝を伝えればいいかと帰路についた
だが翌日、渡辺は登校してこなかった。
その日は金曜日でうちの学校は土日に学校は無いタイプなのでモヤモヤしながらせっかくの休日を過ごすことになり、その日の勉強にも身が入っていないことを親に注意されてしまった。
週明けの月曜日、渡辺は右腕にギプスと包帯を巻いて登校してきたのだった
驚愕した。と同時に心の底がズキズキと痛んだ。
『俺のせいだ』
その考えだけが頭の中を駆け巡る
朝礼が終わり一限目が始まるまでの少しの時間
「渡辺君......ちょっといいかい?」
「ん?いいよー」
俺達は階段の踊り場に移動する
「..........ごめん」
深々と頭を下げて謝罪をする
「......なんの話?」
「その腕。僕のせいだろ?先週、あの交差点で、僕を......」
「アレ?そう言えばあの時、青木君一人称『俺』だったよね~?普段はあっちが素ナノカナ?」
ふざけた口調で飄々と話す渡辺に少し場の空気が和む.....が、
「...........そ、それは......その..........学校じゃ成績優秀者ってことで猫被ってて.......一応、生徒会入ってるし.......ってか、そんなことより、腕!俺のせいだろ?転んだ時に手を突いて....」
「あぁ、チガウ、チガウ。ぜ~んぜん関係ない、これは休日の趣味でね、ちょっとやらかしちゃってさぁ~」
「.................ありがとう」
心の底から溢れた言葉はとてもシンプルだった。
「ん?だからなんの話ナノカナ?」
「「.......フッ.........」」
同時にこぼれた笑みに俺達の心は完全に打ち解けたのだった。
~~時間は進み現在~~
四葉 慎太郎の視点
目の前に転がる渡辺だったモノ。
それを前に俺は一体何を思うのだろうか
それ結果は誰にもわからない。
遅くなりましたが、今年も頑張って更新していきます!
よろしくお願いします!




