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異世界転移で追放されたけど自由に生きたい  作者: なぎちゃ
四章.エルフの国の災難
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47話.死にたくない

普段は静かな森の中に似合わない金属音が今日は響く。


ガキンッ!!!


その音の元には3名の人間と6名のエルフがいた。

3対6。傍から見れば人間側が圧倒的に不利な状況といえるだろうが実際は人間側が優勢なようだ。


人間一人に対してエルフが二人で応戦する、常に人数有利を作れるこの状況でなぜエルフ側が追い込まれているのか?

それは人間側の力がエルフ側と比べ圧倒的に勝っていたからである。無情なまでの実力差をエルフ側は嫌になるほど感じていた。



戦うエルフの一人、ヴィヴィオ・アルラット。四葉がエルフの国に初めて入った時に嫌味を言いに来たエルフである。『ニンゲンは下等な生物』と思いながら..生きてきた彼にとって今この状況ははらわたが煮えくり返る思いである。


彼が生まれて育ち、戦士となってから100年、彼は無敗を誇っていた。

実際の所は彼は彼より格下の者としか戦おうとしないので無敗なのはある意味必定なのだ。かといってもある程度の実力者であることは事実。それこそ、この世界の人間の魔法使いとは比較するまでもないほどの実力を備えている。


本人に多少の驕りがあるのも事実だが、人間相手に負けるほど自分は弱くないと自覚している。

....だからこそだ。だからこそ、ヴィヴィオ本人は困惑している。


なぜ、自分は人間の前に跪いているのか?生まれ育った百と数十年、人間はいつだって汚らしく、下等で、脆弱な存在だったはずだ。

過去、愚かにもこの森に侵入しようとしてきたすべての人間の中に自分を脅かすほどの実力を持った者は一人として存在しなかった。



自分が.....負ける......?散々見下してきたニンゲン相手に......?

そんなことがあっていいのか?100年間無敗だった俺が?そんなこと.........

「あって言い訳がないだろうがぁぁぁぁぁあああああ!!!!」


腹の中に渦巻いていた黒い感情が突如爆発した。

怒りによるアドレナリンの効果か、魔法による治癒か、正確なことはわからないが今はそんなことはどうでもいい。ヴィヴィオの頭の中にあるたった一つの想い。

『負けたくない』

そんな強い想いがヴィヴィオを強くする。ヴィヴィオの中に潜んでいたポテンシャルが覚醒.......






「うるせぇよ.....」


パンッ.............

乾いた破裂音が響き、ヴィヴィオの放とうとしていた火球は突如として消える。

青木 流星のユニークスキル『星支配(スターマスター)』による()の力で火球と相殺。


怒りによって強化しようとも()()()()()()エルフくらいじゃ『勇者』には勝てないのだ。それほどまでに絶望的な実力差。それが『勇者』なのだ。

120%の力を発揮して尚、勝てない。そんな残酷な事実がヴィヴィオの心を叩き折った。


地面に這いつくばり、顔を上げる気力すらも起きないヴィヴィオを目の前に青木は...

「もう終わりか.....やっぱ話にならないな」



「..........シッ!」

ヴィヴィオの前に立つ青木の死角、正確には左斜め後ろからの刺突。ルイという男のスキルの影響か、足音も気配すらも断った必中の一撃......のはずだったのだが、青木は余裕をもってその攻撃を躱す。


後方に飛び、突き出された刀を握るルイの腕を蹴り上げる。そしてそのままルイの頭頂部に蹴りを入れる。

「『重力強化(グラビテッド)』!」

ドゴッと重く響く音が鳴る。


ルイの口から血が漏れ、その場に倒れる。



「全然弱ぇ」

そう呟き、周囲を見回す青木。それに合わせるように少し遠くから渡辺 治樹が小走りで寄ってくる

「おう、リュウ。そっちも終わったか?」

無傷。少しの息切れも見られない様子で、余裕の完勝だったことが容易に想像できた

「そいつら....生きてんのか?」

「さぁ?どうだろうね、あんまり興味ないからね」

「まあ、俺がやったヤツらもどーなんだろ、生きてんのかな?」


渡辺がブツブツと漏らす独り言を黙って聞いている青木、そこにまた少し離れたところから林が合流する

「俺が最後か...悪い待たせたな」

「いや、特に待ってないよ」

「おう、行こうぜ」


他愛のない会話をし、目的であるエルフの国に潜入しようと歩き始めようとしたその時


ガシッ.....


横たわっていたヴィヴィオが青木の足を掴む


「.....なんだよ」

捕まれたその足を振りほどく

「ま......まて.....」

ボロボロの体でもう一度青木の足を掴もうと手を伸ばすヴィヴィオ


「だから、なんだよ」

まるでゴミを見るかのような目でヴィヴィオを見る青木





ヴィヴィオは消え入りそうな意識の中で考えていた。

『自分は何故こんなにも無力なのだろうか』

今、自分にできる最大限の行動が足を掴むことだけという事実。あまりにも無力。

今まで見下していたニンゲンに、ここまで手も足も出ずに完封されるとは思ってもみなかった。


無力だ、無力すぎる。無力で、そして無様だ。


何もできない現状と己の実力に失望と絶望しながら心の底から出た言葉は......




「............死に......た.....く....ねぇ............」

次回、久々に四葉君が登場します。

ご期待ください!

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