35話.進化
同窓会みたいに和気あいあいとはいかないもんだねぇ
「見せてやるよ、俺の力を」
「.....ぜひ見せてほしいねッ!」
灰色の霧を常人には目にもとまらぬ速さで抜けた南は右の手に握った剣で俺に斬りかかってくる
俺は最小限の動きで南の攻撃を躱すと即座に反撃に出る
右の手に風属性を付与。南に向かって手刀を振り下ろす!
「.......『精霊変化』『風の盾』」
少し遠くから水代の声がした、途端に南の持つ剣が形状を変化させる
ガキンッと鉄どうしがぶつかり合ったときのような音が響く
「なんだそれ...?精霊変化....か....従えた精霊の形を自由に変えられるってところかな?」
「何を思っても一緒だよ、どうせ君はここで死ぬんだからねッ」
いつの間にか形が剣に変わりまた南が俺に斬りかかる
俺は一旦距離を取り、南に話かける
「ここで死ぬ........ね、お前はなんで俺を殺したいんだ?」
「...?理由?僕が君を狙う理由が知りたいの?」
「まぁ、別に日本にいたときはなんの関わりもなかったし、恨まれることをした覚え.....は、ない訳ではないけど.....まさかあれが原因?」
「わかってんじゃん~、んじゃ話は終わりね、続けよう」
聞いといてなんだがあんま興味はない、くだらねぇ。くらいの感想しか思い浮かばないしな
「剣での勝負をお望みか?付き合ってやるよ。『魔剣召喚』発動」
相手は精霊使い、特効でいいか
「召喚、『精霊殺し』」
「精霊殺し?なにそれ?」
「受けてみればわかるぜ?」
俺の口から出た言葉に怪訝な顔をする南、その表情は数秒後には絶望へと変わる
召喚した剣を振り下ろす俺に対し、剣を盾に変化させ受けようとする南
「待てっ!南!受けるなっ!!」
もう遅い...
スパンッ!!
南の右腕が鮮血をまき散らしながらはじける
「うわぁぁぁぁぁあああああ!!!!!う、腕が......腕がぁぁぁぁ!」
「うるせぇ」
「空間の精霊ッ!重力の精霊ッ!」
少し遠くにいた水代がこちらに向かいながら魔法を発動させる、グイッと背中を強く引っ張られ、前からは強い風に押される。
浮きかける体を何とか地に留め、剣で360度、空を斬る。
確かな手ごたえを感じ、水代が放った魔法を断ち切る。
「この程度で俺を止められると思うな、雑魚が」
地面に無様に転がる南に剣を突き立てようとした瞬間に俺の目の前の景色がパッと変わる
「なッ!?」
地面が遠い、空中に飛ばされた?どうやって?これも精霊魔法の力か、面白いな
宙に魔力を留め、足場にする。作り出した足場を蹴り、地面に向かって急降下、魔剣を両手で握り、着地に合わせ振り下ろすッ!
舞う土煙、手応えはない。気配も消えた、奇襲狙いか。
周囲を探知、俺の左右に一人ずつ反応あり
「闇の精霊!力を貸せッ!」
「『死毒』ッ!」
右から南、左から水代、精霊の力を借りた同時攻撃
よく見たら南の傷が治ってるな、水代の精霊の力か、南よりも優秀な精霊を従えているのか.....?まあ先に潰すべきは弱い方からだ
南が繰り出す拳を受け止める
「闇属性が効かないってこともう忘れたのか?」
俺はもう一度腕を斬り落とそうと剣を振るう
「......もちろん、忘れるわけないだろう?」
ヒュンッと南を斬ったつもりが霧で作られた幻を斬る、拳を受け止めた時は実体があったんだけどなぁ、入れ替わり?いや、実体を伴う実像分身ってとこか...
幻を斬ってちょっと硬直している俺の背後から水代が追撃を試みる
「炎の精霊、暴風の精霊。『炎の竜巻』!」
俺を囲うような炎の竜巻が巻き起こる。俺は魔剣を振って、魔法をかき消す。
「俺に精霊は通用しねぇぞ?さっさとあきらめろ」
「魔剣程度で私に勝てると思うな」
こちらを睨む水代の目には少しの絶望も感じられない、むしろ自信に満ち溢れたような目をしている。何か隠し玉でもあるのか?
まあ何があっても関係ねぇ
「発動前に殺せばないも同じだ」
「もうその魔剣は使わせないぞ、反剣の精霊『魔剣封印』」
ビキビキッと魔剣が音を立てる、次の瞬間には魔剣が錆び、ポロポロと崩壊する。なんだこれ、精霊の力にしてはピンポイント過ぎんだろ
「......何をした?」
「ただの精霊の力だ....」
そんな訳ないだろ、多分こいつのユニークスキルか......鑑定した時に見えた『精霊創造』か、俺の『魔法創造』と同じか、オリジナルの魔法を創り上げる俺のユニークスキルと同じように望む精霊を創り出すことができるってわけか。
おそらく『精霊使役』の上位スキルなのだろう、詳しい事情はわからないが、俺らよりも先にこの世界に召喚された水代が南と行動を共にしている理由が何となくわかった気がする、スキルが似ているからシナジーでも感じたのだろう
「僕を無視してんじゃ.....ねぇ!」
突如上から奇襲を仕掛ける南
単純物理戦闘で俺に勝てると思うなよ?
「魔力解放.....『魔力纏 炎』」
解放した魔力をその身に纏う魔力纏、その魔力に属性を付与。火属性の付与をすることで俺自身が発する魔力が炎属性へと変わる、触ると熱い。
まあデメリットとして火属性以外の魔法を使うと威力がだいぶ落ちるけど火属性の攻撃は威力があがるメリットがある
原則として魔力で強化した攻撃はその強化に費やした魔力の量によって威力が大きく異なってくる、俺の魔力量は人間や召喚勇者たちと比べても一番だろう、そんな俺が相当量の魔力を使い強化した拳、しかも火属性付与
高威力の打撃と高温による火傷、その攻撃の連打。当然、強力なものとなる
「グッ!ガハッ!!........クソッ!」
攻撃を受けながらも反撃をしようと精霊を使おうとする南、しかし発動した瞬間に俺の発する熱に焼き殺される。もはやこいつに成すすべはない、このまま仕留めるッ
「大海の精霊『深淵の海』!沈めッ」
地面が急に抜ける。戦場変化の精霊もいんのかよ、火属性を纏う俺に対し水属性....というか海を呼び出したんだろうけど、海程度では俺は止められない。
ジュウゥゥゥゥウウウ!!!
と俺に近づく海はことごとく蒸発する。床が海へと変わったことで蒸発させるたびに俺と南は落ちてゆく....が関係ない、落下しながらでもこいつを殺せる
「な........舐めるなァァァァ!!!」
俺が繰り出した拳に合わせるように南も拳を繰り出す。
......ドンッ
拳と拳がぶつかり合い低い音が響く。.......なんだ?魔法が....打ち消された?
俺の脳裏に少し過去の記憶が蘇る。あれはギルド襲撃の時、南が放った全力の魔法を俺は同じ属性、威力の魔法をぶつけ、消滅させた、それが今ここでも起きたのだ
実力の拮抗した者同士の戦闘ならば、偶に起きる現象だが、俺の魔法が消された.....?
こいつの魔力が俺と同じレベルになっただと?死の淵に立たされたことによって急激な成長をしたのか?これが勇者の特性なのか.......かなり厄介だな。
だが、魔力の出力が一瞬俺と並んだだけだ。もう一度......
「火の精霊、集え!」
南がスキルを使い精霊を集めようとする
「させねぇよ、魔剣召喚 『精霊殺し』しょうかn......」
できない?!魔剣封印の影響がまだ残っているのか...!?
「集いし火の精霊よ、重なり合い高位の存在へと成れ!
..........太陽の大精霊!『フレアバースト』ッ!!!」
進化した精霊で南を中心とした大爆発が起こる。空中というか落下中だったのもあり、素早い回避行動ができない。俺は魔力を防御に当てる。
ボカンッッッ!!!!!
一瞬気が飛んだ。空中じゃない、地面だ。上まで吹っ飛ばされたのか.......体中が痛い、魔力でガードしたとはいえかなりのダメージをくらったな........建物も全部吹っ飛んで瓦礫ひとつない更地になっていた。立ち上がり、すぐそばには大きな穴があった、底は見えない、結構落ちたし結構吹っ飛ばされたんだな
あいつらの姿は見えない、気配を探知しても引っかからない、ていうかこの更地で身を隠す場所なんてないか、魔法を発動した南は百歩譲って無事だとして、水代はさっきのやつで死んでいると助かるんだけどなぁ
「大層な攻撃だったな、あのひよっこがここまでの威力を出せるまでに成長するとは........勇者とはよくわからん生物だな」
更地に突如として気配が現れる。南でも水代でもない。魔族だ。突入する際に感知した魔力だ、南や水代、他の冒険者たちと比べても段違いの魔力だな....
「成長....?伝説の魔族サマが勇者を育成か?」
前に魔族と見たときはもちょっとカタコトだったような気がするが、個体差でもあるんかな?
「いや?ただの気まぐれだ。それより、あのファルスという男を殺した魔法、実に興味深い。現存する回復魔法のすべてをもっても回復させることのできない魔法..........
.....いや、魔術か......?」
「..........」
「沈黙...か、実力行使で吐かせるとしよう」
「かかって来い。勝てたら何でも教えてやるよ」
魔王と魔族の歪な戦いが始まる
かっこいい感じの技名を考えるとだいたい英語になるんだけど、ネタが尽きてくるんですよね、属性が同じような技だと最終的に同じような技名になってしまう.......




