28話.再会
同級生とは知り合い以上、友達未満と言うこの世で一番歪な関係である。
自論なり
「.........なるほど、クラヤミ鉱山内で怪しい男を発見、その男が言うには鉱山内に大規模な爆発の魔法陣を設置している.....と。報告ありがとうヨツバ君。報酬を貰って今日は帰っていいよ」
「はい、ありがとうございます」
ぺこっと一礼をして俺は部屋を去る。
あの男と鉱山で出会い、命を狙われ、逃げてきた。そのことをギルドに戻り報告、一応アーサーにも報告をしておいた、クラヤミの冒険者のギルドにはいくつかの派閥的なものがあり、俺はアーサーの派閥に所属している
「...鉱山に怪しい男、このギルド所属の人間じゃないと考えると、タイミング的にこの前のあのガキとの関係を疑えますね」
「そうだね、関係がないと言い切るにはタイミングが良すぎる。もう少し調査を続ける必要がありそうだね」
南 明久のことは話さないでおいた、話す必要はないと思った
......なぜかって?それはね、もう少ししたらわかると思うよ?
俺は報酬をもらったが宿には帰らずギルドの休憩室でちょっと休憩していた
そしたら休憩室の外が急に騒がしくなってきたのだ
「誰だお前ら!何しに来た?!......ギャッ.......」
「......とっ、止まれ!.....」
騒ぎはだんだんと大きくなっていく、時折短い悲鳴が響き、周囲の人たちはそわそわとし始める。
休憩室から出て、騒ぎの大きな方に向かう
ギルドの外に出るとそこには騒ぎの中心が見えないほどの野次馬がいた
野次馬をかき分けて騒ぎの大元を見てみるとそこには2人の男がアーサーを含めたギルドの派閥リーダー3名と対峙していた
2人の男は俺が鉱山で見かけた男と南 明久だった。
その2人にアーサーが声をかける
「ちょうど君に会いたかったところだよ、だが冒険者ギルドになんの用だい?」
「無駄話はいい........探してるやつがいる、邪魔をしないなら殺しはしねぇ、退け」
「そうそう、僕たちは人探しちゅ~なわけよ、今はかまってあげられないから邪魔しないでね~?」
すこぶる自分ペースな2人にギルド派閥のリーダーの一人がキレて2人の元に歩き出す。来訪者の男と比べても負けず劣らずの筋骨隆々の男、名前はベクターと言うらしい
「おい!さっきからオレらのこと無視しやがって、ふざけんじゃねぇぞ!」
そう言いベクターは男の胸ぐらを掴む。
バキバキッッ!!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!」
ベクターが叫び声をあげる。何が起こったか理解できていないようだが簡単な話だ、男は胸ぐらを掴んだその手を上から握り、そのまま握りつぶしただけだ
馬鹿力すぎるな、魔力で強化できると言ってもその範疇を超えてるな
「何してんだテメェェ!!!!」
ギルド派閥もう一人のリーダーであるティアセルが怒りを叫びながら突撃する
「『疾炎牙突』!!!」
風と炎を纏い突撃する.....が、纏った風も炎も途中で霧が晴れるように散ってしまった
「なっ!?なにが......」
「邪魔しなきゃ殺さないって言ってんのにさぁ~馬鹿なんじゃない?おにーさんら」
「くっ.......くそ、何をした?!」
ドゴンッ!!
何かを答える前に男がティアセルの顔面を殴り、地面に叩きつける。
ギルドの派閥リーダーの2人がやられたことを理解した瞬間アーサーが野次馬全員に声をかける
「総員戦闘準備ぃ!!!」
その声を聞き、野次馬たちは一斉に構える
「あぁ~めんどくせぇ、この際全員殺しちまうか....」
「いいんじゃない~?全員殺せば目的の人も殺せるんじゃない?」
「さっさと終わらせるぞ」
「『巨槌』」
地面にたたきつけたその拳は地面を割るだけでなくその衝撃波をくらった者を全員ぶっ飛ばしたのである
なかなか珍しいスキルだな、見たことないし、能力もわかりずらい。優秀な力とはいつだってシンプルなもんだな
そんなことよりわかんないのは南のスキルだ。あいつに向かう魔法が一つ残らず霧散してしまうのだ、訳かわからんな。
「『火炎精人の舞踏会』」
無数の火の玉が逃げる人々を追尾する。被弾したものが燃え尽きるまで消えない炎を放つ魔法か、これもまた厄介。
「ねぇ~ファルス~?僕もう帰っていい?手ごたえなさ過ぎて飽きてきたんだけどぉ~」
「なんでお前ついてきたんだよ.....わがままクソガキが。じゃあさっさと要件済ませるかぁ、おい!そこの!リーダーっぽいやつ!」
「....私か?」
「そうだ、お前、ここ最近クラヤミ鉱山の依頼を受けた黒髪のガキを知ってるか?ぱっと見このクソ生意気なガキと同じくらいの年齢だ」
男は南を指さしながらアーサーに尋ねる
「知っている.....と言ったらなんなんだい?君がクラヤミ鉱山で発見され、魔法陣を置いている件となにか関係があるのかい?」
「......てめぇ、そこまで知ってんのか....」
「ほらぁ~僕言ったでしょ~?もう報告されてるかもよってさぁ~」
「うるせぇ!だからわざわざ冒険者ギルドまで来てんだろうがよ!そのことを報告したガキと情報知ってるやつを全員連れてこい、今ここで殺す」
「そんな要求飲むわけないだろう」
「そうだよな、じゃあ全員死ねや.....『大砲』。おい新入り、やれ」
「あいあ~い、付与『炎』」
男が炎を纏った右腕を前に突き出し、唱える。
「『発射』」
右腕からは目の前すべての光景を埋め尽くす量の炎が放出される
「!?」
これには俺も少し驚く、発動に使う魔力が少なすぎる......究極のコスパ魔法か?その線はちょっと考えづらいな
魔力を全く使わない南とコスパが良すぎる男、どう見ても怪しすぎる
........と言うかその前にこの炎の波をどうしようか、おそらくこの攻撃でここにいるほとんどの人間は死ぬだろう、それほどまでにこの攻撃は強力だ、受け流すことも受けきることも困難。普通の人間ではあっという間に丸焦げになるだろう
いや、別に俺にはなんの問題もないけど、耐えたら目立つじゃん?男にも南にもバレるし、まあ死んだふりでもしてればやり過ごせるか......
「皆!!!」
アーサーは炎の波の前に立ち、剣を取り、構える。そして自身のありったけの魔力を炎の波にぶつける。
「うおおぉぉぉぉ!!!!」
全身全霊、凄まじい気迫で俺らを守ろうとしているアーサー
何故なのだろう、完全に無意味な行動なのに、多分ここに100人余りいる野次馬は俺を除きアーサーよりも戦力にならない、助けるメリットはないのだ。なのに何故助けようとするのだろうか?自分だけでも回避に専念すれば体力、魔力の温存、不必要な負傷の回避ができるというのに.........
こういうやつを『勇者』と言うのだろうか?誰が為の自分を犠牲にできる。
.......いいな。
この行動は、同情ではない、傷つくこいつを哀れんだ故の行動ではない。憧れだ、人生で初めて会った純度100%の善意。本物の『勇者』。この行動が正しいだとか、俺が『魔王』だとか関係ない、だからこそ、俺はこいつを助ける。
迫りくる炎の波、俺は指を鳴らす。
「........『絶対零度』」
炎の波は凍り付き、目の前には氷の壁が成る。
「なっ........何が....」
「アーサーさん、今すぐあの2人に回復を受けさせてください、あいつらは俺が対処します。」
「ヨツバ君、何を.....?今の魔法は?」
「話は後です、今は回復を」
状況を理解できないままアーサーはベクターとティアセルを連れて後方に下がる。
バキバキッ.......バリンッッ!!!
氷の壁が砕け、壁の向こうにいた2人の顔が見える、2人はそれぞれ別の驚愕をした
「やっと見つけたぜぇ、クソガキィ!」
「.......四葉君....?なんでここに......?」
「.......よう、久しぶり」
再会は必ずしも感動的なものになるとは限らない。......よね?
あんま仲良くない同級生との再会は気まずいことこの上ない.......再会にはテンションが上がるけど話すことがない、故に話しかけないことが唯一の解決策なのはこの世の欠陥である。
次回29話は12/29 12:00 投稿予定です




