表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/338

97、アンデッドドラゴン

 ライトがアンデッドドラゴンを引き付ける中、オリーは荷馬車とステラの警護に回り、魔障壁を展開している。レッドはまだ動いていない。


「えっ?!レッドさん?!なんで……!?」


 ステラはライトと一緒に戦うことなく座り込むレッドに驚愕と懐疑の目を向ける。


「なぁにぃ?温存のつもりぃ?それともぉやっぱり強いってのは嘘だったのかなぁ?」


 ウルウティアはほくそ笑みながらレッドを煽る。レッドは煽りを無視してぶつぶつとライトに言われたことを反芻していた。その間にも襲ってくるアンデッドドラゴン。ライト1人に対して数が多すぎる。


 ガンッ


 だが、そんな不利をライトは一発で五分(ごぶ)に持ち込む。両手に持った2本のロングソードをクロスさせ、接敵と同時に開くようにぶち当てた。

 アンデッドドラゴンは骨の集合体。斬撃はほとんど効果がなく、打撃攻撃が有効である。ゆえにロングソードの峰で思いっ切り叩いたのだ。本来そんなことをすればすぐに折れてしまいそうだが、武器とは扱い方次第で伝説の武器になり得る。女神をロングソードで屠ったレッドのように。


「ヒュ〜」


 ウルウティアは感心して口笛を吹いた。通常は1体相手にチーム総掛かりで戦わなければ勝ち目のない強さを誇るアンデッドドラゴン。それをライト1人で3体を同時に相手している。


「人間もピンキリということかぁ……勉強になるなぁ」


 パイプ煙草を吹かしながらニヤリと笑う。正直驚いたが、ライトがどれだけ強かろうがライトの不利は覆らない。ゆえに余裕も崩れない。

 だがこれで良い。ライトの力がアンデッドドラゴンに通用することを見せつけるだけで良いのだ。


「あ、本当だ。アンデッドドラゴンってそうなんだ……」


 レッドは半信半疑だった気持ちを振り払い、荷馬車から立ち上がった。ステラは苛立ち半分、焦り半分でレッドに叫ぶ。


「は、早くライトさんを助けに行って下さい!殺されてしまいます!!」

「あ、その……すいませんすいません……」


 頭をペコペコと下げながら荷馬車から降りる。オリーは鼻息荒くするステラに苦言を呈す。


「ステラ。レッドを責めないでくれ」

「だって……!!」

「レッドは色々嫌なことを考えてしまう性格をしているんだ。納得出来たら突っ走るんだが……だから今のレッドは大丈夫だ」

「……どこがですか……」


 ステラは思った以上に頼りない背中に信頼を見出だせない。レッドは荷馬車を気にしながらロングソードを抜き払うとキリッと顔を締めた。

 ついに出てきた切り札にウルウティアは興味津々に眺める。


「さぁ、妾に見せて欲しいなぁ。炎帝を倒したっていう力をさぁ」


 ──ジャッ


 レッドの踏み込んだ音が鳴り響く。深く沈み込むように走り出したレッドは途中までステラの目に映っていた。しかし次の瞬間、フッと蝋燭の火を吹き消すように影も形も消える。


 パァンッ


「……ん?」


 火薬が爆ぜるような音と共に端のアンデッドドラゴンの頭が無くなった。


「「行けるっ!!」」


 レッドとライトの気持ちが重なる。ライトが流麗な剣捌きでアンデッドドラゴンの脚から崩しつつ致命的な骨を砕くのに対して、レッドは風船を割るような勢いでアンデッドドラゴンを潰す。


「……え?……は?」


 目減りしていくアンデッドドラゴンにただ困惑するしかないウルウティアとステラ。レッドの強さが異次元すぎて、ライトがまだ現実的な実力で戦っていると思わされる。

 レッドを抜けば人間最強はライトで間違いない。が、その力に開きがあり過ぎて、最早意味が分からない。


「うおおぉぉっ!!烈刃っ!!」


 ボンッ


 斬撃とは思えない破裂音が鳴り響き、吹き荒れる突風がウルウティアの展開する濃霧を一部晴らす。


(な、何が起こったの?)


 意味が分からなかった。これが現実で起こっているとは到底思えない光景。全ての常識が覆される。


「あなたぁ……急に何なのよぉ……?アンデッドドラゴンに怯えてたのは演技だったのぉ?」

「あ、いや……演技ではなくてですね……そのぉ……」

「これがレッドの力だ!」


 レッドの言葉にライトが大声で被せてきた。ライトの威風堂々とした立ち居振る舞いにレッドも心なしか触発され、虚勢を張るように胸を張ってみる。

 謎に包まれたレッドの急な覚醒についていけないウルウティアは警戒心を強く持つ。それはステラにとっても同じことで、意味不明なことに対する言動を持ち合わせていないために、レッドに忌避感を持っていた。

 これは至極単純な話。ライトとレッドの内緒話しまで巻き戻る。


「──良いかレッド。アンデッドドラゴンは厳密にはドラゴンじゃない。ドラゴンのふりをした怨霊の集合体だ」

「……えぇ?ほ、本当ですか?……」

「ああ本当だ。その証拠にドラゴンと呼ばれる魔獣の中で最も弱い。アンデッド化する際、ドラゴンに憧れを持った怨霊がドラゴンの亡骸に引っ付いたに過ぎない……そうは言われてもすぐには追い付かないと思う。だから俺が最初に突っ掛ける。それで判断してくれ」

「……ライトさん……」


 ただ少しの認識の違いからレッドはアンデッドドラゴンを倒すことに成功した。ライトが言い含めたことが見事に的中し、レッドの自信を舞い戻らせたのだ。


「もうアンデッドドラゴンなんて怖くないぞ!俺たちが相手になってやる!」


 さっきまでの怯えはどこへやら、レッドから湧き出る謎の自信は勘違いから生まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ