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233/310

233、一宿一飯

 夕暮れとなり徐々に日が落ちる。

 空を赤く染める頃、露店も店仕舞いのために片付け始め、ぽつぽつと建物に光が灯る。


「で? どうすんのこれから」


 シルニカは先に歩くティオに話しかける。


「どうって?」

「そのままの意味よ。宿も取ってないし、もし取れたとしても支払いは宝石でしょ? 金貨が使える宿なんてあるの?」

「ああ、大丈夫大丈夫。ここには私たちエデン教の支部があるの。そこに泊めさせてもらうから」

「えっ?! なによ~先に教えといてよね~。水臭いなぁ~」


 シルニカは猫なで声で喜びを表現する。シルニカの変わりようにリディアは苦笑した。


「とは言っても質素なものですよ? シルニカさんたちのお眼鏡にかなうかどうか……」

「この際ベッドがあれば質素でもなんでも良いわ。運転で思ったよりも疲れちゃったし」


 肩をグルっと回しながら首をコキコキと鳴らす。

 ティオに連れられ、見えて来たのは白い清潔そうな建物。レッドは首を傾げる。


「これは……何の建物ですか?」

「病院です」

「教会じゃなく?」

「やっぱ気になりますよね。本当は教会を建てたかったそうですが、この国にはこの国の宗教があると言って頑なに断られてしまったのです。でも神聖魔法は手放したくなかったのか、病院なら建てても良いとのことでこうなりました。夜は急患でも出ない限り何事もないので安心してください」


 病院に入るや否や休診であることをそっけなく伝えられたが、ティオとリディアの顔を見て態度を一変させる。


「あやぁっ!? 何故このような場所に七元徳(イノセント)様がっ?! た、たた大変失礼いたしましたぁっ!!」

「いや、こちらも特にお伝えしていなかったので申し訳ありません。泊るところがないので一晩だけ宿をお借りしたくて……」

「もちろんです! あ、どうぞ! どうぞこちらです!」


 焦りながらも奥の間に通され、二段ベッドが2つある部屋に到着した。リディアは困惑しつつ当直医を見る。


「ここ仮眠室ではありませんか? 私たちが使用してもよろしいのでしょうか?」

「ええ、もちろんですとも。何でしたらお連れの男性の方だけ別の部屋をご用意いたしますが?」


 女性3人に男性1人というのは確かに不味いかもと思ったレッドはその提案を承諾しようとしたが、ティオはすかさず「あ、この人は大丈夫です」と断った。一瞬呆気にとられた当直医とレッドだったが、当直医がすぐに深々と頭を下げてその場を後にした。


「じゃ、私上で寝る~」


 シルニカはさっさと二段ベッドの上に杖を置く。


「えぇ? こういうのって話し合うもんなんじゃ……」

「なんで? 早いもん勝ちでしょ?」


 レッドの言葉を軽く往なしてシルニカはキョロキョロと廊下を見る。


「食堂ってあるの? お腹空いちゃったよ」

「申し訳ないです。この病院も寄付で成り立っている部分が大きいので最低限の食料しか用意されていません。彼らの食料を取るわけには行かないので、荷物に食料をお配りします」


 リディアは乾パンと干し肉を配る。


「……ま、贅沢は言ってられないしね。あと、湯あみはどこで出来るの?」

「ふふっご案内します。レッドさんも」

「え、ええっ?! 俺、俺もっ?! 俺も行っていいんですか?!」

「キモ。何勘違いしてんのよ。場所だけよ場所だけ。一緒に入るわけないでしょ」


 シルニカに指摘されてしゅんとするレッド。『キモ』は心に刺さる。とはいえ、きょどってしまった自分も悪かったと思って気持ちを切り替えた。


「あ、えっと……なんかすいません。案内をよろしくお願いします」

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