219、迷子のレッド
レッドはアリーシャを城から連れ出そうと思っていたのだが、曲がる道を間違えて城の中で迷っていた。
「しまったぁ……目印になりそうなものを覚えとくんだった……」
こんなところで方向音痴が発動するなど、気を使ったグルガンにも体調不良を訴えるアリーシャにも申し訳が立たない。アリーシャの体を思い、途中でお姫様抱っこに切り替えたものの、同じ場所をぐるぐる回るようなことになっては乗り物酔いを別に発症しそうである。
とりあえずどこかで休ませる必要があるだろうが、勝手に部屋に入るわけにはいかない。体調不良なら医務室だろうが、どこにあるのかなんて想像も出来ない。
道を聞こうにも教皇の謁見で人が取られているのか不思議と見当たらない。さっきまでちらほら衛兵が居たような気がしたが戻ることが正解かどうか疑問である。
結局動かない方が誰か通りかかるのではと感じ、レッドがアリーシャを抱えたまま途方に暮れていると背後から声を掛けられた。
「あのぅ。どうかされましたか?」
ハッとして振り向く。そこには心配そうな顔で見つめてくる女の子がいた。肩口まで伸ばしたオレンジ色の髪。もみあげだけが鎖骨まで伸びているのはオシャレだろうか。見た目から溢れ出る雰囲気は凄い活発そうである。純白の衣装からエデン正教の誰かだと思われるが階級までは分からない。ただ、見た目と溢れ出る雰囲気からお城勤めなどしなさそうにも見える。
「あっいや、えっと……い、医務室を探してましてね? 俺ここ初めてなもので全く分からなかったというか……」
「そうなんですね。良かったら医務室まで一緒に……って、アリーシャさんっ!?」
女の子は目を丸くしてレッドの抱きかかえるアリーシャを凝視する。
「あ、お知合いですか?」
「知り合いも何も……と、とにかくこっちです! こっちにどうぞっ!」
女の子はパッと駆け出した。慌てているのか思った以上に足が速い。レッドは置いて行かれないように気を付けつつアリーシャに負担のないよう自分なりに心がけながら、つかず離れずの距離感でついて行く。
程なくして部屋に到着したのか、扉を壊す勢いで開けながらバタバタと入っていった。あまりの勢いに驚いたレッドは、このまま入って良いかどうか分からず待機を選択する。
「リディア! 急患急患っ!」
「どうしたのティオ? 急患って誰が?」
「いや、ほらアリーシャさんが!……あっ!? しまった!」
ティオと呼ばれた女の子はまた慌てて部屋から出てくる。しかし廊下に立っていてレッドを見てホッと胸を撫で下ろした。
「うわぁよかったぁ。置いて行っちゃったかと思ったよぉ」
安心したのか急激に力が抜けてへなへなと床に座り込んだ。同時に部屋からヒョコッと顔を出したのはリディアという少女だろう。ホワイトブロンドの長髪がキラキラと光り輝いている。レッドはようやく医務室へとたどり着いた。




