第八話 ヘタレと呼ばれても。
「血を吸うってそんな、吸血鬼みたいな……」
『冗談やないで、儂ら悪魔は女の血を吸う事によって細胞が活性化され。本来経験値を吸収しない体が一時的に経験値を吸収する事になる』
確か、6歳の頃サラが僕に血を吸われたって。
「と言うことは6歳の時にレベルが上がったのは君がサラの血を吸ったからか」
『せやで。あの時、血を吸うまでに貯めていたお前の経験値が吸収されて。レベルが一気に上がったんや』
経験値は蓄積されていくと言うことは今僕が蓄積している経験値は上位種のオークの数百体分に近い経験値だ…
えーっとどの位レベルが上がるんだろうか。
『あ、それとな。もうそろそろ血を吸わんと儂らは爆散するぞ』
え?は?爆散?バラバラ?
『お前が貯めた経験値の量が異常でな。もうそろそろ経験値の魔力が収縮してその反動で……ぼーんって感じ?』
「えーっと後どのくらい?」
『儂ら悪魔は空間に含まれる魔力も経験値にする。だから持って…………あと3日や』
「えええええっっ!!!!」
そんなの早く言ってよっ!!
『お前が成人した日から言うとるわっ!!』
「え?ほんとに?」
『ほんまや!!天使は嘘つかん!!とりあえず早う血を吸うんや!!もうそろそらお前の目が醒める、ちょうど女が一緒におるんやからっ!!』
「え、え?シルクさんの!?むむむ無理だよ!?」
『ほな死ね阿呆!!』
『あかん、もう時間切れや。ああ。それと儂の名前は"リリム"や。ほな、またなヨナ』
リリムと名乗った声は薄く聞こえ。
目が覚めるというのに意識が遠のいて行く気がした。
「んっ……」
僕はゆっくりと目を開く。
「えっー…と何してるんですか?」
目を開くと目が合った。
何故だかシルクさんの顔が目の前に。
「膝枕だ。男とはこう言うのが好きなんだろう?」
「好きですけど僕らは今日会ったばかりですよ?そう言うのは恋人同士でしないと」
「そういうものなのか?」
「そうです」
僕は起き上がろうと上半身を起こす。
その時シルクさんの胸に僕の肩があたった。
「ん?」
シルクさんの顔を見るが、全く気にしていない様子だ……
『「女の血を吸う事」』
リリムの顔が浮かぶが僕は……
「……むり」
「何かあったのか?」
「いえ、何も。では、お風呂に行ってきます」
「おう。ゆっくり疲れを癒すと良い」
シルクさんの言葉を背に僕は脱衣所に向かう。
『おいっ!!血を吸わんかいっ!!』
うお!?びっくりした。
再会早くない……?
『何をビビっとるねん。早うあの女のちちを吸わんかい!!』
おい。一文字多いよ……
シルクさんは今日会ったばかりなんだ。
そんなの無理だよ。
僕は冷静に返答する。
『いや。あの女以外この街に知り合いなんか居らんやろ。というかお前と仲ええ女なんかあの村の娘しか居らんやんけ』
僕は服を脱ぎシャワーを浴びながら話す。
え、あ、そうだった。なら今から村に帰ってサラの血を…もらう……
ヨナは唇を触り顔を真っ赤にする。
頭を冷やす為、冷水を浴びる。
『お前…キスぐらいで何を熱あげてんねん……ほんでその案は却下や』
「え、なんで?」
『さっきも言うたけどこの身体はもっても、今日入れて3日やから村には帰られへん』
本当に言ってる?それ。
『だから、帰っとる暇なんかない!!さっさとあの女の血を吸え!!せやないと儂らは血肉ぶちまけて爆散や!!』
ど……どうすれば。
『どうもこうもあるかいな、早よ吸うてこい』
ああ、僕は死んじゃうのか……
『吸うてこいて!!阿呆なんかお前は?あの女が寝てる間に牙立てて吸うだけや!!一瞬や!!傷跡も何も残らんわ』
そっか!!なら!!
僕にもやれるかもしれない!!
『おうおう!!その調子や!!ええど〜』
「はぁ……いいお湯だった〜」
『そんな事より血や』
「分かった、分かったよ。寝静まった頃ね?任せて……」
「スゥスゥ」
シルクさんはベッドの端で半分足を落として寝ていた。
僕はシルクさんを持ち上げベッドの真ん中に、そして布団をかけてあげた。
『今だ』
そ…そうだね……
■■■
『……この根性なしのくそ童貞が』
あのあと……結局シルクさんの血を吸えず。
リリムの声から逃げる様に僕はソファーで眠った。
寝るまでの間リリムは相当文句を言っていたと思う。僕は完全にシャットダウンしていた。
「すまないヨナ君昨夜は君をソファーで寝かせる事になってしまって」
「全然気にしないでください」
「今日からは一緒にベッドで寝ような!」
「いえ、他の部屋を…」
「さっき朝食のあと女将に聞いたら無いと言われた」
あのおっとり小悪魔め……
「はぁ……」
「今日は何をしようか?」
「僕は冒険者ギルドに行って素材のお金をもらって少しクエストを受けてみようかと」
「おお。元気がいいな。もちろん私も同行させてもらう」
「でも、クエストは冒険者登録している人しか受けられない筈じゃ」
「それが私も昔ちょっと冒険者をやっていた時期があってな…」
シルクさんは腰に着いているアイテム袋に手を入れ何かを出そうとしている。
アイテム袋とはアイテムボックスほど容量はないが高級な物になると家一軒分の物は入れておける貴重な物。
「あ、あったこれだ」
そう言ってアイテム袋からギルドカードを取り出した。
カードの色は金色に輝いた。
白がF、緑がE、黄色がD、青がC、赤がB、紫がA、金色がS、白金がSS、黒がSSSと冒険者ギルドカードはランクによってカードの色が違う。
17歳でSランクってシルクさんは一体何歳で何をしてきたんだ……
■■■
「これが素材分になります」
そう言って受付嬢さんは金が入っている袋を僕に渡す。
中身は白金貨一枚と金貨が七枚銀貨銅貨が何十枚か入っている…
「おお、結構な額になっているな」
白金貨三枚程で小さな家が買えて…金貨十枚が白金貨一枚で…金貨は一枚で冒険者の一年分の稼ぎで……
今日から夜道には気をつけます……
「それではクエストを受けるか。私とパーティーを組んでいるから最高Sランクのクエストが受けれるぞ?Sランクの報酬は大きいぞ?」
そりゃ、Sランクのクエストと言えば災害級のクエストで。大体一緒に軍が動く様なクエストですから。
そりゃ報酬は独り占めできたら一生遊んで暮らせるくらいだろう。
「Sランクのなんて僕には力不足ですし、そんな災害級のクエスト何十年に一度でしょう?」
「まぁそうなんだがな。最近なんだか胸騒ぎがするんだ……」
シルクさんには騎士としてか、Sランク冒険者として何か感じるのだろうか。
「とりあえずこれにしましょう?」
僕はそう言い掲示板からEランクの討伐クエストを選んだ。
「ロードウルフを10体討伐か。少し手を抜きすぎじゃないか?」
「手抜きなんてしてません。僕は弱いですし、昨日冒険者になったばかりですよ?」
「そうか、ヨナ君がいいならいいが」
「こちらのクエストですね。了解致しました。討伐の証として鼻についている角を持ち帰りください」
ロードウルフの鼻には牙が特殊に発達した角があり。その角は死ぬまで決して折れず永遠に伸び続けその命が消えると同時に折れるそうだ。
初クエスト張り切って行きましょう!!
『ヘタレ!!はよ血吸え!!』
あ、いたの?
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