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第一話 旅立ちと決意。

 エーギル共和国そこは様々な種族が住まう国。

 西の国境付近。

 そこには少数のエルフ族が暮らす村がある。

 村の名をカルネ村。

 人口は七十程度である。


 そこで暮らす15歳になったばかりの少年、ヨナは。


「よし!」


 そう意気込み。

 荷物を背負い込んで15年間、暮らした家に。


「帰って来たら立派にしてあげるからね」


 別れを告げ、古ぼけた家に背を向ける。


「ヨナ!」


 誰かが僕を呼び止める。

 その声は心地よく聞き慣れたものだった。


「やぁ…サラ……」

「『やぁ』じゃないわよ!!村を出て行くってどういう事!?」


 はぁ……ダランさんには言わないでってあれだけ念を押しておいたのに。

 ヨナは心にぼやきつつも少しの安堵を覚える。


「サラ、僕は成人と同時にこの村を出て行かないといけないから……」

「それは……」


 サラは泣きそうな顔で下を向いてしまう。


「そんな顔しないでよ」


 ヨナは申し訳なさそうにサラの頬を撫でながら言う。するとサラが顔を上げ言う。


「なら私もついていく!!」


 ヨナは首を横にふる。


「どうして?私、魔法も弓もいつも練習してうまく使えるわ」

「確かにサラは魔法も弓もうまいね…」

「なら!!」


 サラがヨナの話しを遮る様に言葉を強くする。


「……うまいよ。でもダメだよ。サラはまだ成人してないだろ?それにダランさんが許してくれるわけないだろ?」

「そんなのヨナが一緒ならおじいさまも許してくれるはずよ!!」


 村の掟では成人するまでは村からは出ることは出来ない、サラはまだ14歳だ。


 それに…

「もし、掟を破ってダランさんを無視したとしても僕はサラを絶対に旅には連れて行かない」

「どうして?」


 サラは不安そうな表情でヨナに問う。


「僕は弱いからだよ。サラを守りきれる自信がない」

「ヨナは弱くない!!私より魔法も弓もうまいじゃん!!村でヨナより強い人なんていない!!」

「それに、僕の目は呪われている…」

「呪われてなんかない!」


 サラはヨナの顔を両手で包む。

 そしてヨナの赤い瞳を真剣に見つめる。


「こんなに綺麗なのよ!!呪われているわけないじゃない。それに、村の他人にこれのせいで一度でも迷惑かけた?」

「それは…村の人達が」


 確かに迷惑と言う迷惑は…無い…けど。


「昔の人達が迷信を言ってるだけよ」


 それでも。


「迷信だとしても、村のみんなが安心できるなら僕はこの村を出て行くよ」



 悪魔の目。

 エルフ族で古くから言い伝えられている伝承。

 赤い瞳を持って産まれた者は周囲に不幸や災い、延いては天災を起こすとされる。

 村では赤い瞳を持って産まれた赤子はすぐに処分される。



 僕が産まれてからの事。

 元々病弱だった母は、僕を産んでからすぐに亡くなった。

 父は村の人達に僕が産まれた事を隠した。

 愛する人が命を賭して産んだ息子を村人たちに殺させまいとしたのだ。


 僕がひとり立ちができるようになった頃、幼い僕は家の外に出てしまった…

 案の定僕は村人たちに見つかったらしい。

 僕は即刻捕らえられ、すぐに村の掟に従って処分される予定だった。

 同時に僕のことを隠し育てていた父も村の掟により処刑という罰を受ける予定だった。


 しかし、父は魔法や弓が得意で。

 村の自給自足という生活にとって父は重要な人物だった。


 村としては父を殺してしまえば自分達が困るがその息子は殺したい。

 そんな都合の良い選択を迫っていた。


 判断を渋っていると父は『息子を殺せば私は自害する』と言った。


 そこで村長であるダランさんは『この村に住まわせても良い』と言ってくれた。

 ただし条件をつけて。


 1つ、子は村の敷地より少し離れた所で暮らす。

 2つ、子は村の敷地に絶対に入ってこない。

 3つ、父は今まで通り猟師としてこの村を支える。

 4つ、子が成人したら一ヶ月以内に村を出て行く。


 ダランさんとしては村人を納得させる条件と父と僕を守る為の条件を出してくれた。


 その時の父は村を出ることを考えたと言っていたが、僕の目の事は他のエルフの村に行っても絶対に受け入れてはもらえないし。

 何より母との想いは捨てきれなかったようだ。その話をした時は泣きながら頭を下げていた。



「おじさんには言ったの?」


 ヨルは首を横にふる。


「ううん。父さんには言ってないよ…」

「どうして?」

「父さんに言ったら、父さんはこの村を離れて僕について来そうだから」


 ヨナの父はこの村にとってなくてはならない存在。村一の猟師である父がこの村を出ると猟師の育成や食糧不足が進みこの村はいずれ廃れて行くだろう。


 父が1日に狩ってくる獲物の量は多い時で村の1日分の食糧をまかなう。


「だから父さんには。『この村を。母さんとの想いを守ってほしい。いつか帰るから』って言ってたって伝えてほしい」

「本当に行っちゃうの?」

「うん…それじゃあね、サラも元気で!!」


 少年は少女にそう言い残し背を向ける。


「ヨナ!!」


 少女は少年を呼び止める。

 そして少年が振り返る。


「ん!?」


 サラが抱きつき唇を合わせてきた…

 長く感じたその時間は一瞬で、サラは唇を離した。


「私、成人したらヨナのこと追いかけるから!!それまでに弓も魔法も今よりもっとうまくなってるから」

「う…うん」


 ヨナは困惑の中で頷くが。

 続いたサラの言葉に気を取り戻す。


「だから待ってて!」

「分かった……待ってる。それまでに僕もサラを守れるように強くなる。約束だ」


 そう言って、今度は少年から少女にキスをする。


「浮気、しないでね」


 サラはヨナの唇に指を添えて……悪戯に微笑む。



「じゃあ行ってきます!!」

「行ってらっしゃい!!」


 そして、今度こそ少年は村を発つのであった……




『血を…』


「ん?今…なにか聞こえたような…」


 ヨナは後ろを振り向くがそこにはなにもいない…

いつもご拝読いただきありがとうございます。


皆様の反応がすごく励みになっております。

作品への感想などございましたら是非書いて頂きたいです。

全て読ましていただき返信させていただきます!!


今後とも宜しくお願いいたします。

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