見たことのない街並み
カミヤちゃん、今日は散歩がてら街を見に行ってみない?」
神谷が朝食を食べ終わる頃、コーヒーを片手にクボタがいった。
「行ってみたい」
昨日からわからない事だらけだけど、お腹もいっぱいでかなり前向きになった神谷の素直な気持ちが頭で思うより先に口をついて出ていた。
「今日は、クボタもオレも休みだから案内できるよ!」
ギンは、元気よく手を上げて神谷に提案する。
「よし決まり!早速いこう!」
ギンに神谷はそのまま手を握られ、急かされるように準備をして神谷は家を後にした。
家から街という所はそこまで時間のかからない所にあった。
およそ歩いて10分くらいの所だと思われる。
街並みはどこか漁港近くの商店街という表現が合うような様子で、和風のしっかりした木製の建物もあれば、東南アジアのような色鮮やかな建物前もあり、それらが雑多に集まった場所という言葉が合うような場所だった。
鮮魚を扱う店が多く、朝だと言うのに煮物や、焼き魚を焼くような香ばしい匂いが漂う。
それと、自分が違う世界に紛れ込んだのか夢を見ているのかもと思う事実が一つはっきりとわかった。
ギンのような大きな猫以外に鳥や、ねずみ、たぬきや、きつねのような生き物がせっせと店の仕込みや開店準備をしている。
しかしどれも自分が思っているサイズより何倍も大きい。
ねずみらしき生き物はちょうど自分と同じくらいのサイズだが、たぬきやきつねは、自分の7倍か8倍の身長がある。
ギンは、街に入ってすぐ匂いにつられて
「ちょっと見てくる!」
と、言ったきりどこかに行ったのか姿が見えない。
見慣れない景色に何だかすこし怖くなって少し前を歩くクボタの服の裾を思わずにぎると、クボタはそれに気づき、肩を優しく抱き寄せ小声で囁いた。
「大丈夫だよ。
カミヤちゃんの話を聞く限り、転生者ってタイプの人だよね。
俺の爺さんがそうだったらしいから何だか親近感わいちゃって。」
急に肩を抱き寄せられて驚いた神谷がクボタを見上げるとはにかんだ笑顔で神谷を見ていた。
「俺お爺ちゃんっ子だったからなんだか嬉しくて。
元の世界に帰ったって人は、聞いた事ないけど、話を聞く限りあんまり楽しそうなとこじゃないみたいだし、ここに馴染めるようにするからさ、
好きなだけここに居てよ。」
神谷の不安を見透かしたような優しい言葉に神谷は嬉しさと安堵の感情が、込み上げ目頭が熱くなった。
不安と安堵がどっと込み上げてきて涙の止まらない神谷を、大丈夫と肩を優しくぽんぽんと叩きながらクボタは、街を案内がてら歩いてくれた。
さっきより知らない街並みが優しい色に見えた。




