第一話
俺が水月鏡花と最初に出会ったのは、今から13年前の、とある雨の日の事だった。出会った時は勿論名前なんか解らなくて、「女の子」としてしか認識しておらず、名前を知ったのは、13年後の今になるのだが。
とにかく。
俺と「女の子」が出会った場所は公園だった。
雨はざぁざぁとかそんな軽いレベルじゃなくて、どしゃ降りで、針が刺さったな痛さみたいなのを覚えている。
そんな中で何故親の付き添いも無く俺と「女の子」が公園に居たのかは当事者である俺でも思うマリアナ海溝より深い謎だが、とにかく公園に居た。
「女の子」は、さびれた公園によくあるような、ピンクの像の滑り台の、腹部あたりに開いている穴の中で、雨音にかき消されない大きさで泣きに泣いていた。俺は子供ならではの純粋さで、「どうして泣いているの?」と尋ねたような気がする。何か尋ねたのは覚えているのだが、尋ねた内容は覚えていない。
「女の子」は、泣きながら「おかぁざんどばぐれじゃっだのぉぉ。」と言っていた。
これはやけにはっきりと覚えている。何故か。
それに対して俺は、当たり前のように「じゃあ探してきてあげるからちょっと待ってて。」と言ったのを記憶している。
泣きながらキョトンとしている少女を一人公園に残し、俺は公園を出て行った。
どれくらい時間がかかったか忘れたが、確か4分くらいだと思うが、俺は一人の女性を見つけた。雨の中、傘もささずに走っていた女性は、泣いていた「女の子」そっくりだった。
俺はためらいなく女性を公園に連れて行き、見事に親子は再開を果たした。
「さがじでぐれでありがどう。」
と、先ほどとは違う涙で「女の子」は言って、俺に「ありがとう、ありがとうね」と、言い続ける女性と一緒に去って行った。
と言うのが、俺と水月鏡花の出会いのエピソードである。
何故今更こんな古い話を思い出したのかというと、それは、水月鏡花と13年ぶりの再開を果たしたからである。