3章
3章 ようこそ、商店へ
「まずは、このエプロンを付けて頂戴。付けないと、怪しいやつと思われちゃうからね。あと、装備は更衣室においておいで、荷運びには邪魔だから。」
クレイナさんは、てきぱきと指示しながら、今日届いたであろう荷物を片付けている。クレイナさんの言う通り、装備は邪魔だし、エプロンを付けないと、俺を初めて見た人からすると不審者だからなと思い、そそくさと更衣室へ向かった。
着替えが終わり、クレイナさんのもとへ向かうと、
「クレイナさん、これは、ここでいい?」
なんと、カーラがお手伝いをしていたのであった。知り合いなのかなと思い、近づくと、
「あら、似合っているじゃないか。」
と、俺のエプロン姿をほめてくれるクレイナさん。
「うん、似合ってる。」
伏目がちながら、カーラもほめてくれた。
「ありがとうございます、そんなに似合ってますか?だったら、このまま就職しちゃおうかな?」
と、王都で商人で一山あてるのもいいなと思っていたら、
「でも、あんた、商人の気質がないから失敗しそうね。」
と、現職の方からの厳しい一言。
「失敗して、借金、抱えてそう。」
と、幼女からきつい一言。
なんだろう、王都にきてから、辛辣な言葉ばっかり、もらっている気がする。
「さてと、冗談はさておき、ささ、あんたの仕事はこっちよ。」
※
今日に仕事は、荷運びだったはず・・・
そう思い出すたび、違うよなと思っている。実際にやっている作業は、検品作業。問屋などから届いた商品が、正しく納品されているかを確認して、店先に仕出しをしている。荷運びって、荷物を特定の場所から特定の場所に運ぶ作業のはず・・・・
「いやー、ごめんね。本当は、荷運びだけと思っていたんだけど、今日、バイトが休みでさ、人の手が足りてないのよ。」
なるほど、それは納得だ。
「代わりにね、報酬は上乗せしてあげるから」
それは、ラッキー。報酬が増えるなら、頑張ろう。
「そういえば、カーラとは、知り合いですか?」
なんとなく、さっき見た光景をもとに聞いてみた。
そうしたら、クレイナさんは苦虫を噛みつぶしたような顔をした。そして、カーラについて話し始めた。
「カーラはね、もともと、母親と一緒に暮らしていたのよ。母親の名前はレーナって言ってね、すっごく美人な人だったのよ。でもね、レーナは病気がちでね、そのため、カーラは母親のためにいつもうちの店で薬を買ってくれていたのよ。ただ、つい3か月前に母親がなくなちゃってね、しばらく見なかったんだけど、1か月前ぐらいから見かけるようになって、路地裏で暮らしているって聞いたから、たまに店を手伝わさせて、お金をあげているのよ。教えてあげたのだから、あなたから、あの子のこと詮索しないようにね。」
あの小さい子にそんな過去があったとは。こんなヘビーな話を聞いたのは初めてだったためか、顔に出てたらしく、
「あの子の前では普段通りの顔をしなよ。あの子、人の顔、よく見ているからさ。」
「わかりました。教えてくれてありがとうございます。」
※
作業にもやっと慣れてきたが、検品するものがなくなりそうだった。なんだかんだ、検品作業は楽しく、意外なアイテムがあるんだなとか、このアイテムはどのように使うのだろうか、ついつい考えてしまう。
と、最後の一個の検品を終え、クレイナさんのところに持っていく。
「クレイナさん、終わりました。」
「あら、早いね、初めてだからもう少し時間がかかると思ってたわ。」
どうやら、ほかの冒険者にもやらせているらしい。ベルさん、本当にここ、ギルド公認のお店ですか?
と、奥から、カーラが両手いっぱいに商品を抱えてやってきた。
「クレイナさん、これ、最後。」
と、商人をテーブルに乗せ、汗一つかいていない額を拭った。
「よし、二人ともお疲れ様。今日はこれで終わりよ。」
と、今日初めて受注した依頼が終わるのであった。
「さあ、あんた、ラーストーンを貸してちょうだい。依頼が無事に達成した情報を記憶させないと。」
と、ラーストーンを催促するクレイナさんに、石を渡すと、なんだか不思議な装置に石を置いた。そうしたら、俺の名前や、ランクがかかれた画面が出てきた。どうやらそこに、依頼の達成の情報を記載するようだ。
「えーと、そういえば、あんたの名前聞いていなかったわね。」
そうだった、今日、誰にも自己紹介していなかった。
「俺の名前はグランバルド・アーケイン。グランでいいです。」
「グランね。わかったわ、憶えておくわ。冒険に出る際はうちの店、使っておくれ。安くするから。」
特に、俺の名前に関していじることもなく、商人らしく、自分の店の宣伝を行った。
「グランっていうんだ、憶えた。」
と、隣にいるカーラにも、俺、この子に、名前言ってなかったんだと自問自答した。
※
その後、クレイナさんから、ラーストーンを受け取る際に、「これ持っていきな」と何本かポーションを受け取った。それとカーラにも、多分、携帯食料と、少しのお金を渡して、俺たちは店を去った。
冒険者ギルドへの道大丈夫?と聞いてきたカーラにさすがに迷わないと言って、別れた後、本来なら10分で付く道を30分かけて、ギルドに帰った。
ベルさんに、どうでした?と聞かれ、聞いていた仕事と違ったんですが?と返したら、
「実はですね、クレイナさんのところの依頼内容だけ、あえて違う内容にしています。もし違ったら、断ってもいいし、違っても、そのまま受けて、仕事をこなすか、選べるんですよ。大体の人は文句は言いますが、仕事をこなしますね。」
そんなからくりだったとは、露知らず、馬鹿正直に依頼を受けてしまったようだ。
まあ、依頼達成の報告すれば、報酬はいっぱいもらえるからと思っていたら、
「では、報酬はこちらになります。」
と渡された額は、クエストの依頼書通りの額だった。
「なんで、クレイナさん、多く払うと言っていたのに!?」
と、疑問を口に出したら、
「追加報酬はもらっているじゃないですか。」
と、ベルさんは俺に手の中にあるポーションを指さして、にっこりと笑うのであった。
ちなみに、このポーション、今日が検品した新品ではなく、少し古いものだった。