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大陸深度鋼鉄迷宮探検譚  作者: ドウロ
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第5話:探索に歩み出す

 僕達に負傷はなく、スケルトン2体は撃破された。完全勝利と言っていいだろう。

 通路のただ中にはくすんだ銀色の骨格が、3体分散らばり倒れる状況となった。


「いや~、最後のは肝が冷えたで」


 コートの袖で額を拭いながら、ラウルはへらりと笑ってくる。

 握る短剣はベストの鞘へ収めると、足元に落ちている銀の頭骨へ手を伸ばした。


「二刀の交差斬りやないと、やっぱりコイツらの首は落とせんなぁ」


 銀骨眼窩に突き立つ短剣を引き抜きつつ、ラウルは一つ息を吐く。

 緊張を解くなかで、些かバツが悪そうに僕の方を窺ってきた。


「まさかあそこで、ワイを素通りしよるとは思わんかったんや。あんままこっちに突っ込んできとったら、返す刃で華麗にスパッといっとったんやで?」

「魔物が予想通りに動いてくれるなら、苦労はないさ」

「いやぁホンマやなぁ、あははのは。……大口叩いとってこのザマや、すんまへん」

「ま、初めての共闘にしてはいい感じだったんじゃないかな。怪我もなく勝てたわけだし」


 肩を落とすラウルに告げて、僕は遺物弓に視線を落とす。

 スケルトンの頭をブチ叩いたわけだけど、傷一つついていない。魔法の矢を撃ち出す武器ではあるものの、尋常じゃないこの強度も殴打武器として役に立つ。


「ラウルの投擲は正確だった。短剣捌きも隙なく速い。キミの腕前はきっちり見せてもらったよ」

「いやいや、ワイの本気はこんなもんやあらへんで」


 遺物弓をローブの内へとしまったあと、ラウルの背中を軽く叩いた。

 送った評価は瞬時に響き、長身の冒険者は途端に得意そうな顔をする。

 やはり立ち直りが早い。


「ここでジッとしてても稼ぎにならないし、先へ進もう」

「せやな。いざ、目の前の通路!」


 元気を取り戻したラウルを促して、迷宮の路を先へと踏み出した。

 スケルトン達が歩いてきた方向だ。

 石畳を踏み叩く二人分の足音が、左右に上下、四方の壁面に反響している。

 眼前には厚い闇だけが深く広がり、殆ど何があるかは分からない。

 実際に歩いてみて、自分の目で見て確かめる。その場その場で、遭遇する状況に対応する。それが迷宮探索の基本。

 先行した冒険者達が地図を描いて売っていたりもするけれど、彼等の労力が詰まっているため高額だ。かといって安い地図は大きく手抜きをされていたり、下手をすればデタラメだったり、かなり酷い。

 特別裕福でもない冒険者は、結局自分の体で調べていくより他にない。自分が見聞きし、体験したことは、間違いなく信じられる。


「しっかしや、腕前披露ゆうてもスケルトンは迷宮なかん雑魚の部類やしな」

「一番相手をしやすいのは確かだね」

「直線行動やし、動きは単調やし。あんまりすばしっこくもないよって、弱点の首が狙いやすい」

「だけど素人が簡単に倒せる相手でもない」

「冒険者やったら、最低限コイツ程度は独りで倒せな話にならん。ちゅうもんやろ」

「逆に言えば、単独でもスケルトンに勝てるなら、冒険者の実力として認めるに足るということさ」


 スケルトンはダンジョンの浅層を徘徊している魔物の代名詞だ。

 厄介な攻撃手段があるわけでもなく、接近戦法が主体のために戦いやすい。

 銀色の骨格は多少硬くはあるけれど、武器を使って攻めれば破壊も難しくない。足音も独特でよく響くから、暗い迷宮内でも接近に気付くのは容易。

 ただし痛みを与えても野生動物のようには怯まないし、炎などにも恐怖せず、冒険者を見付けると猪突猛進な攻撃を止めないため、油断はできない。

 硬いからこそ拳や脚の攻撃は手痛いダメージを与えてくる。加えて数が多い。1体2体ならどうにでもなるけど、5体6体と集まってきたら相当危険だ。囲まれないよう注意して進む必要がある。

 相手を甘くみて、思わぬ反撃により命を落とした冒険者の話は、それこそ掃いて捨てるほどあるのだから。

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