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大陸深度鋼鉄迷宮探検譚  作者: ドウロ
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第4話:魔物再襲撃

 得意気な顔で大笑いしていたラウルだったけれど、僕の言葉で目を剥いた。

 またまた糸目が開いて切れ目を晒し、食い入るように僕を見てくる。


「な、なんやて?」

「この遺物弓は、一度使うとしばらくの間は反応しないんだ。魔力を集めてるのか、魔法の詠唱をしてるんだと思う。僕も色々試してみたけど、どうにもならなかったね」

「そうかぁ~。やっぱり世の中、そう上手いこといかんねやなぁ。ま、しゃーないわ」


 ラウルはガックリと肩を落としつつ、糸目に戻って力ない笑いを零す。

 期待感がそれだけ強かったのだろう。可哀そうになるぐらいの落胆ぶりだ。

 長々と吐き出される溜め息が重い。


「そもそも、これ一つで簡単に探索できるなら、僕はキミとパーティーなんて組まなかったよ」

「そりゃそうや」


 項垂れていたラウルは顔を上げ、口の端を歪めて見せる。

 立ち直りの早さも冒険者には必要だ。成功より失敗の方が多い生き方なのだから、いつまでも直面した問題を抱え落ち込んではいられない。意識と頭の切り替えは早ければ早いほどいい。それが自身の生存率を上げることに繋がる。


「それに新手のお客さんも来たみたいやしな」

「今度はキミの腕前を拝見させてもらうよ」


 ラウルが両手の短剣を構え直すのに合わせ、僕も暗がりの奥を向く。

 今しがたスケルトンがやって来た方向から、同じような足音が聞こえてきていた。

 重複する硬い音は単独の敵が発すものじゃない。今度は2体がこちらへ歩いてきているらしい。


「僕の遺物弓はまだ使えない。任せたから」

「安心せぇ、ワイが頼れるっちゅーところを見せたるさかい」


 僕らが言葉を交わしている間に、通廊の闇から新しいスケルトンが歩み出てきた。

 先と同じくすんだ銀色に、骨格だけの体。両眼窩の赤い光は、こちらを見付けると明度を増す。

 上顎と下顎が何度も嚙み合わされ、銀色の歯並びが不気味な音を響かせた。


「毎度毎度、やかましいねん!」


 ラウルは真っ先に両腕を振り、握っていた短剣を投げ放つ。

 二本の刃は宙を滑り、スケルトンの両眼部へと正確に突き刺さった。

 左右の赤光が減り込む短剣で塞がれ、僅かに魔物のバランスが崩れる。この時にはもう、ラウルはベストに吊るす鞘から短剣を抜いており、両手にしっかりと握り締めていた。

 そして飛び出す。石畳を蹴って前方へ駆け、一気にスケルトンへ肉薄すると、銀の骨首目掛けて両腕を振った。

 握られた短剣が左右から素早く走り、魔物の首を挟んで交差する。砥がれた刃が加速と共に圧力を掛け、両隣から迫ることでスケルトンの首を切り落とす。

 硬質な擦過音を周囲へ飛ばし、銀色の頭骨が石畳へ転がった。首の斬られた体は力を失い、糸の切れた操り人形のように倒れ伏す。

 だが終わりじゃない。すかさず後続の2体目が参戦し、ラウルの隣を走り抜けようとした。


「行かせるかい!」


 即座にラウルも反応し、短剣を共に左腕を伸ばして大きく振る。

 薙がれた短剣はスケルトンの首に当たったが、片側を擦って傷付けはすれど、切断には至らない。

 眩い火花が刃と骨の接面で散り、一瞬だけ周りを照らした。けれどそこまでだ。

 このスケルトンはラウルの斬撃範囲から外れ、僕の方へと駆けて来る。


「ちょぉっ!? 抜かれてもうた、すまん!」


 慌てたラウルの叫びを余所に、銀骨の魔物は僕の前へ達した。

 スケルトンの拳が固く握られ、曲げられた肘が腰の捻りに合わせ、後方へ引く。

 それに応じて僕は敵の懐へと踏み込んで、自分から近付いた。後ろへ退けば拳打のリーチから逃れられたが、そうはしない。

 一息に接敵し、銀色の拳が繰り出されるより先に、手中の遺物弓を振った。

 頑強な黒の長方体がスケルトンの側頭部に激突し、それそのものの硬さで容赦なく押す。遺物弓は衝撃に負けず、逆に銀色の頭部を凹ませて、壁際へと叩き付けた。

 スケルトンの体は横側へと勢いよく流され、体勢が崩れたことで拳打もあらぬ方向を突いて終わる。

 ラウルの一斬を受けていた首骨は、僕の殴撃を食らったことで亀裂を深めた。あとはそこからボキリと折れ、頭と体が分離したことで、活動が止まる。

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