第2話:冒険仲間
「いや、分かるで。パーティー希望者を装った強盗もおるからな。仲間になったと思わせて、油断しとる相手を背中からバッサリ。そんで装備や道具を剥いでトンズラと。そういう節操のないモンちゃうかと、疑っとるわけやろ?」
「冒険者なんて、何考えてるのか分からないのが大半だからね。警戒はするよ」
「せやな。でも考えてみぃな。もしワイが強盗野郎やったら、兄ちゃんにわざわざ声なんぞかけず、暗がりからバックアタックかましとるで。気付かれずに殺る方が、圧倒的に楽やし効率がええ。ちゃうか?」
「……確かにそうだね。一理ある」
「せやろせやろ。ワイはホンマに兄ちゃんと同行したいだけやってん」
「分かったよ。僕も個人での探索には限界を感じてた。一緒に行こう」
「よっしゃ、話しは決まりやな! ワイの名前はラウルや。得物は短剣の二刀流。素早い連続攻撃が得意やで」
「僕はフユ。遺物弓を使う。基本は遠距離戦かな。よろしく」
ニッカリと笑い、差し出されたラウルの手。僕もそこへ握手を返し、頷きで応じる。
お互いに相手がどういう人間か分からない。同じダンジョンに挑んでいる冒険者という立場以外は不明のまま。当然、信頼関係などまるでない状態だ。
簡単に仲違いして別れるのか。それとも上手く進んで財宝を見付けられるのか。全てはこれからの行動次第。
折角パーティーを組んだのだから、空中分解せず一稼ぎはしてきたいところではあるけれど。
「ところで、フユ。一つ聞きたいんやけど、ええか?」
「別にかまわないよ」
「遺物弓っちゅー武器使いはたまーに見かけよるけど、詳しいこと知らんねん。どういうもんなんや?」
握手を解いた後、ラウルは笑い顔に疑問符を満載して聞いてきた。
両腕を組み、首を傾げている。
話題作りの為でなく、本当に分からない故の質問らしい。
普通の武器屋には流通していないし、使い手もそんなに多くないだろうから、当然かもしれない。
「遺物弓というのは、ダンジョンで発見される飛び道具の総称だよ。魔法の武器だね」
「ほほぉーん、魔法の武器かいな。そうとなれば、やっぱり強力なんか?」
「種類は色々あるから一概にこうだとは言えないけど。役立つ物は多い印象かな」
「なんや、曖昧な表現やな~」
「効果が千差万別だし、仕組みも複雑で、簡単に使えない物もある。どんなに優れた道具でも、正式な使い方を知らないと役に立たないだろ」
「弓やったら、構えて弦を引いたら、こうピカピカ光る矢がつがえられたりとか。そんなんとちゃうんかいな」
ラウルは右腕を伸ばし、左手を添え、弓引く動作をしてみせる。
こうだろ、と言わんばかりの顔ではあるが、残念ながら的を射ていない。
僕は首を左右へ振り、否定で返すよりない。
「さっきも言ったけど、飛び道具の総称なんだ。だから弓の形をしてるとは限らない。寧ろ、弓型の方が珍しいぐらいだよ」
「そういうもんかいな」
「既存の武器とは根本から異なっている物も多い。だから扱いが難しいけど。その反面、正確に使えればかなりの威力が出る。手入れに手間が掛かったりと面倒な点もあるけど、それを差し引いても十分に頼り甲斐がある」
「なるほどのー。やっぱり魔法の武器っちゅうんは、一筋縄ではいかんもんなんやな」
ラウルは納得の表情で相槌を打っている。
ただし要点を理解しているのかは分からない。
一緒に冒険するにあたっては、互いの手の内を知っておく必要がある。誰にどのようなことが出来るのか、何が得意で、どう動けるのか。分からないままでは連携がとれないからだ。
瞬間的な判断が求められる戦闘時では尚更に。
「口で説明するよりも、実際に使って見せた方が分かりやすいだろうね」
「そうやな。ワイの戦い方も知っとってもらわんとやし」
僕達は言葉を交わしつつ、一つの伸びた通廊を見据えた。
闇に閉ざされた道の先より、足音と共に人ならざるモノの気配が近付いてくる。
ダンジョン内を徘徊する魔物が、すぐ近くまで迫ってきていることが知れた。