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女神様の眷属  作者: みぬま
蝕まれる世界
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異変

 サリスタ様の神気に平伏していたコレンさんに事情を説明して、洋介が目覚めるまでに村の人たちに洋介の事情と、洋介の選択によっては村を出る可能性があることを伝えておいてもらった。

 そのおかげか人の好さからなのか、村を出ることに決めた洋介とティルフさんを彼らは別れを惜しみながらも快く送り出してくれた。



 ちなみに神鳥は洋介が目覚める前に飛び立っていて、去り際にサリスタ様がこんなことを言っていた。


『これで救世主全員の安否確認と所在の把握ができた。あとは星喰いを何とかすれば救世主たちを元の世界に帰すことができる。準備はこちらで進めておこう』


 上質な魔晶石は俺と花子さんがこの四ヶ月の間に相当数集めている。加えてこれまでに集めた魔晶石や希少石を合わせれば、クラスの半数以上が帰還できる数に至っているだろう。

 とは言え、まだまだ全員分には届いてなかったはず。


 そう思ってたんだけど、どうやらフォンファール帝国をはじめとする同盟参加国から魔晶石の提供があったらしい。その結果、魔晶石の数が必要数に届いたのだとか。


 思いがけない形で魔晶石の数が揃ったことで、何だか気が抜けてしまった。

 けれどその一方で、各国が提供した魔晶石が俺たちが召喚されて以降に集まったものだと考えると、魔物の脅威は減っていないのだという現実が見えてくる。



「そんなわけで、今後も魔物は見つけ次第討伐する方向で」

「うん、賛成」

「りょーかい」


 辺境都市ロンティアで洋介の旅支度を整えた俺たちは現在、エインルッツ王国の王都を目指して移動中だ。というのも単純にクラスメイトたちの様子が気になったからだ。


「俺がいる限り襲いかかってくるのは脅威度4級以上の魔物だし、洋介の訓練にもちょうどいいだろ」

「確かに。見つけたら俺に任せてくれ」


 魔物が番号で管理されている関係上それを覚える気は全くなかったんだけど、脅威度だけは把握しておこうと思ってロンティアにいる間に調べてみた。

 すると俺がいても積極的に襲いかかってくる魔物は脅威度4級以上であることが判明。


 脅威度4級以上であれば上質な魔晶石が手に入る可能性がある。けれどもう魔晶石を積極的に集める必要はない。

 ただ上質な魔晶石を集めるという行為がこの世界の人々にとって安心に繋がるのなら、集める必要性が薄れても続ける意味はあるだろう。そう考えて提案したら、花子さんも洋介も賛成してくれた。


 特に洋介がやる気を見せている。

 というのも、あの農村にいる間にも魔物被害はあったようで、脅威度5級以下なら村人が束になれば対処できても脅威度4級以上になると怪我人が出たり、場合によっては死人が出たりしていたという。


「今の実力的に、脅威度3級程度なら花子さんは瞬殺可能、洋介は頑張れば倒せるってところか」

「ティルフの力を借りても今はそこが限界だなぁ」


 確認の意味も込めてそう呟くと、悔しそうに洋介がぼやいた。そんな洋介の剣術に関しては、畑仕事をしていたからだろうか、半年のブランクをほとんど感じさせないものだった。

 とは言え俺や花子さんと比べるとどうしても見劣りしてしまう。でもそれは仕方のないことで。


「まぁ俺も花子さんも一朝一夕でここまできたわけじゃないから気にすんな。っていうか俺と花子さんはズルしてるからなぁ」

「そうだね。神界での一ヶ月は地上での一日みたいだから」


 俺の言葉に同意した花子さんは、申し訳なさそうに洋介を見た。


 俺も花子さんも神界にいた期間があるから、みんなより遥かに長い時間修練を積んできたことになる。

 ならクラスメイトたちも神界に連れていけばいいじゃないかと思うところだけど、白夜曰くいくら救世主とは言えほいほい神界に送り込めるかというと難しいらしい。


「まぁそれでも近いうちに追いついてやるさ」


 どうにも覆し難いものがあるよなぁと思う俺の思考をぶった切るように洋介が宣言する。すると洋介の言葉に応じてティルフさんも『私も力になるよ!』と声を上げた。

 何とも頼もしい限りだ。


「決意も新たにしたところで、そろそろ野宿の支度をした方がいいんじゃない?」


 そう声をかけてきたのは白夜だった。

 言われてみれば、太陽がだいぶ傾いてきている。日が落ちる前に野宿の準備を終わらせなければ。


 俺たちは休憩するのによさそうな場所を探して移動し、ここ数日の旅の間に決めた役割分担に沿って行動を開始する。

 食事の用意をするのは花子さん。テントを張るのは洋介。焚き木を探すのと周囲の警戒は俺の仕事。


 俺はさっそく近くの森に入って焚き木を集め始めた。けれど突然、ぞわりと背筋が粟立つ。

 反射的に周囲の気配を探ってみれば、そこかしこに散らばっていた魔物の気配が動き始めた。それも、ひとつの方向に向かって。


「何だ……?」


 何が起こっているのかはわからない。けれどこれは異常事態だと判断してすぐにみんなのところに戻った。戻ってみれば誰一人として異常に気づいた様子はなく、それぞれが自分の仕事に専念している。


「ちょっとストップ! 異常事態だ、一旦片付けて」


 そう呼びかけると不思議そうにしながらも花子さんや洋介は手早く片付けを始めた。白夜は周囲の様子を窺っている。


「……本当だ、なにこれ」

「魔物が揃って同じ方向に向かうなんて異様だよな?」

「うん。向かってる方向は──マルトレン方面みたいだね」


 マルトレンか……。

 異常行動をしている魔物の目的地がマルトレンかどうかはわからないけど、念のため何が起こっているのか確認しに──いや、花子さんや洋介もいるんだ。思いつきで行動するわけにはいかないか。


 そう思いとどまったところでふと気付く。白夜が花子さんの同行を推した意図はこういうことだったのかと。

 そして今思いとどまれたことで、それまでの俺がいかに無鉄砲だったのかを痛感させられた。


「情報収集は他の眷属に任せとけば大丈夫。この周辺に魔物が集まってくる気配はないし、とりあえずボクらは予定通り休憩しよう」


 白夜の一声で俺たちは改めて野宿の準備を始めた。

 不安はある。花子さんも洋介も同じようで、不安そうな表情をしている。

 それでも俺たちはしっかり休みを取り、いつ何が起こっても対処できるように万全の状態を保とうと心がけた。




 そして翌日。

 俺たちの不安は的中することになる。


「報告がきたよ」


 朝食を摂っていると白夜が静かにそう告げた。その声音があまりにも凪いでいて、嫌な予感を助長する。


「昨晩マルトレンに魔物の大群が押し寄せて、一夜にしてマルトレンは壊滅」


 告げられた言葉に息を呑む。

 白夜以外誰も一言も発せずにいると、止めとばかりに最悪の報告がなされた。


「生存者は、ゼロだって」

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