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女神様の眷属  作者: みぬま
蝕まれる世界
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洋介発見?

 ロンティアでの生活がすっかり板についたある日のこと。


「ヨウスケが見つかったって」


 白夜が発したその一言に、花子さんは嬉しそうな表情で俺を振り返った。けれど白夜の報告には続きがあった。


「ただ、訳あって保護できない状況みたいなんだ」

「どういうこと?」


 その言葉に首を傾ぐと、白夜は小さなため息をつく。


「それがね──」




 白夜の話はこうだった。


 およそ半月前、ラクロノースの眷属がロンティアから見て南にある農村で洋介を発見したのだと言う。

 しかしどうにも様子がおかしい。まず纏っているはずのラクロノースの神気が感じられない。慣れた様子で畑仕事をしているのも妙だ。


 そこでラクロノースの眷属はしばらく様子を見ることにした。その結果わかったことは。


「聖剣?」

「そう、聖剣」


 耳慣れない単語に花子さんが聞き返すと、白夜は首肯しながら話を続けた。


「その聖剣がどうやらヨウスケの神気を隠蔽しているみたいでね。だからなかなかヨウスケを見つけられなかったんだ。村人によると記憶喪失のヨウスケをティルフっていう少女が助けて、行くあてもなく彷徨った末に村に辿り着いたって聞いているらしい。ちなみにそのティルフっていうのが聖剣の精で、人化して人間の振りをしているみたいだね」


 記憶喪失に聖剣の精か……おまえはどこの主人公なんだと言いたくなるような要素が盛り盛りに盛られたな、洋介よ。


「そんなわけだから、まずはヨウスケの記憶を何とかしないと保護するのも難しいって話になってね」

「はぁ」


 意識が記憶喪失と聖剣の方に持っていかれて、つい気のない返事をしてしまう俺。その一方で。


「聖剣の精が人間の振りをしてるってことは、剣に意志があるってこと?」


 花子さんは聖剣の精のことが気になったらしい。


「その通り。聖剣や神剣、魔剣といった特別な武具に意思が宿ることは稀にあるんだ。しかもヨウスケのそばにいる聖剣は神気を隠蔽できるからね。相当な力を持ってるんじゃないかな」

「うわぁ」


 益々お前はどこの主人公だと。その手の主人公タイプになるのは瀬良くんだと思ってたんだけどなぁ。


「まぁそういうわけで、スワイズ様の眷属であるボクの出番って話になったんだ。位置的にも近いしね」

「ああ、なるほど」


 スワイズ様の権能には「記憶」も含まれる。つまり記憶喪失なら神様権限で元に戻してしまえばいいと。


「だからふたりにも同行してもらうよ」

「それはもちろん!」


 勢い込んで応じたのは花子さんだった。星喰いに襲われて以降、洋介のことがずっと気がかりだったんだろう。

 時間的にもまだ昼前だし、善は急げとさっそく件の農村に向かうことになった。




 そうしてロンティアから南に向かって歩くこと一日。

 辿り着いたその場所は、長閑で平穏な「これぞ農村!」って感じの村だった。野良仕事の合間に日向の縁側でお茶でも飲みながら休憩したくなるような雰囲気だ。

 それでもここは魔物のいる異世界。村の周囲をぐるりと囲む高い塀は魔物対策なのだろう。そのさらに外側に畑が広がっていて、畑の外縁には腰くらいの高さの簡易的な柵がある。


 そんな農村の景色を眺めながら俺たちが近づいていくと、武装した男性が駆け寄ってきた。


「神使様がた、この村に何か用ですか?」


 相変わらず一目見ただけで神使って呼ばれるんだなと思いつつ、男性の問いに首肯する。


「この村に探し人がいると聞きまして。ここ数ヶ月の間に私たちくらいの年頃の男性が来て、ここに住み着いていませんか?」

「神使様たちくらいの? ああ、ヨウのことですかね」


 男性はポンと手を打つと、改めて俺たちをじろじろと眺めた。


「ちなみにその探し人の特徴は?」


 ぽろっと呼び名を漏らした割に警戒されているらしい。疑わしげな視線を受けながら、俺は洋介の特徴を説明し始める。


「私たちの探し人は、最後に会ってから背が伸びていなければ身長はこれくらい」


 と、俺は自分より十センチほど低めの位置を手で示す。


「黒髪に茶色がかった黒目で、右の手のひら、親指の付け根に黒子があって……」

「そこまで知ってんなら間違いないか」


 さすがに黒子の位置まで知っていれば納得してもらえたのか、男性から疑いの眼差しが消えた。


「あいつ、記憶がないからうちの村で保護してんですよ。と言っても村に連れてきたのはティルフちゃんっていう女の子なんですけどね」


 話しながら村の中へと誘う男性。疑いが晴れた途端に信用されすぎな気もするけど、素直に従って村に入る。


「この村に連れてこられた時は血塗れだったんですけど、ティルフちゃんが治癒魔法が使えるとかで傷自体はなくて」


 途中で会った村人に「ヨウを探しに来た神使様たちだ」と紹介しながら男性はどんどん村の中を進んでいく。


「そのティルフちゃんも身寄りがないらしくて、ヨウも記憶がないからどこから来たのかもわからないって言うし、なら二人ともこの村で引き取ろうかって話になって」

「それは、ご親切にありがとうございます」

「いやいや。この村は貧しいというほどでもないし、たまたま空き家があったから」


 洋介を保護してくれたことに感謝の意を伝えると、男性は人の良さそうな笑みを浮かべながら「あそこです」と前方を示した。そのまま家に近付き、扉をドンドンと叩く。


「うぉーい、ヨウ、いるか!?」


 そんな大声要る? と問いたくなるような大きな声で男性が呼び掛けると、しばしの間を置いて家の中からパタパタと軽い足音が聞こえてきた。


「ごめんなさい、コレンさん! ヨウはさっき畑に出たばっかりで」


 そう応じながら扉を開け現れたのは、俺たちと近い年頃に見える少女。

 外見は普通の人間に見えるけど、気配がやばい。なんだこれ、星喰いとは別種の異様な気配が──


「ひぅっ!?」


 しかし俺が彼女の異様さに警戒する一方で、彼女の方はあからさまに青ざめて一歩引いた。かと思ったら目にも止まらぬ速さで地に頭をこすりつけ、こう叫んだ。


「お許しください、サリスタ様! 不可抗力なんです!」

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