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女神様の眷属  作者: みぬま
フォンファール帝国編
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弱気バージョンのストレイル様は癒しです

「アキオと一緒に行くなら、ハナコも巡礼者の服がいいよね?」


 そう言って委員長用の巡礼者服を用意してくれたのはスワイズ様だ。

 聞けば、俺にくれる予定だった加護を委員長に授けて呪いの影響から保護した関係で、今の委員長はスワイズ様の神気を纏っているのだとか。つまり地上に下りたら委員長は必然的にスワイズ様の神使として見られるわけだ。


 そんな理由もあって、委員長はスワイズ様の色である落ち着いた青を取り入れた巡礼者服を身に纏うことになった。仮面の色も誂えたようにスワイズ様の色に近くて、ますます俺との色違い感が増した気がする。


「錫杖も……と言いたいところだけど、ハナコは剣を使うんだよね。だから剣を授けよう」


 何と剣も用意してくれるらしい。

 厳かに剣を授けるスワイズ様と、恭しく剣を受け取る委員長。その光景を少し離れた場所で眺めながら、俺が錫杖を賜った時は気付いたら持たされてる状態だったなぁと、ちょっと懐かしく思うのだった。




 そんなこんなで服装を改めた委員長は現在、マリアールと鍛錬をしている。

 俺は療養するように言われてるし、激しい運動も禁止されているから暇だ。仕方がないので委員長の様子を見に来たり、瑠璃と遊んだりしながら過ごしている。


 ちなみに今日は久しぶりにストレイル様と会ったので、のんびりお茶を飲んでいた。鍛錬中じゃないから弱気バージョンのストレイル様だ。癒される。


「クライルは、地上に下りてからもしっかり鍛錬を続けていたみたいですね……」

「はい。でも最近はできない日も多くて」

「それは仕方ありません……あなたは救世主たちのために走り回っていますから……」


 ふわりとストレイル様が微笑むと癒し効果は倍増する。

 ちなみに弱気バージョンのストレイル様は気遣いの神でもあって、今飲んでるお茶と目の前に置かれているお菓子はストレイル様が用意してくれたものだったりする。それらをありがたく頂きつつ、地上での出来事を話していた。


「そう言えばエンディルは無事救助されましたが、シェラとあなたのご友人はいまだ所在不明のようです……あと、重傷を負ったエインルッツの兵士たちですが、彼らは命を取り留めたものの、二度と剣を握ることはできないと……」

「……そうですか」


 脳裏にエンディルの許で必死に走り込みをしていたニムさんとカントさんの姿が浮かぶ。あんなに強くなろうとしていたのに、二度と剣を握れないだなんて……言葉にならない。


「彼らが救世主のために力を尽くしてくれたことは、わたしたちも理解しています……わたしとしては、いずれ何らかの形で彼らに報いたいと考えていますので……」

「ありがとうございます」


 どんな形であれ、少しでもあの二人が救われたらいいなと思いながら礼を言うと、ふふ、とストレイル様が小さく笑った。


「もちろんあなたにも報いたい……わたしたちは本当に、あなたに感謝しているのですよ……」

「感謝、ですか?」


 『わたしたち』というのがどの範囲を示すのかわからないけど、神様から感謝されるようなことをしただろうかと首を傾げる。


「ええ……今回の召喚については、本当に申し訳なく思っているのです……あなたが命を落としたことも、ハナコの紋のことも、救世主たちが望まずにこの世界に喚ばれてしまったことも……」


 手元のお茶に視線を落とし、ぽつりぽつりと語るストレイル様は本当に申し訳なさそうな表情をしていた。一方でその指には強い力が込められていて、全ての元凶である星喰いへの怒りも感じているのだと察せられる。

 パキリと音を立てて、ストレイル様の手にあるカップに罅が入った。


「それでもあなたは、わたしたちを責めなかった……それどころか、わたしたちにはできない、けれどわたしたちが望んでいることをしてくれている……」


 そう語るストレイル様の手から、そっとカップを取り上げる。この程度で神様が怪我をするのかわからないけど、念のため。


「えーと……あ、そうだ。本来の召喚ってどういう感じなんですかね?」

「え……?」


 話の流れ的にどう返したらいいのかわからず、ずっと気になっていたことを問いかけてお茶を濁す。するとストレイル様は不思議そうに首を傾げた。突然の話題変更に戸惑っているようだ。


「ずっと気になってたんですけど、本来喚ばれる予定だった人であっても召喚されることを望んでいない場合もあるんじゃないかなと思って……その、拒否されたりしないのかなと」

「ああ、それは問題ありません……通常は召喚の際に意思確認をして了承した者のみを招いてますし、帰ることを望んだ場合も必要な魔晶石を集めてくれば帰すようにしていますから……」


 けれど今回はその意思確認すらなかった。つまり、本来行われる手順が星喰いの干渉によって乱され、潰されてしまったということだろう。


「なるほど。ちなみにですが、今まで召喚に干渉したのは低級神だって言われてましたけど、どうしてそう思われていたんでしょうか」

「そうですね……そもそも星喰いという存在は基本的に神々の間に伝わる噂のようなもので、実物を知らなかったというのが原因でしょうか……そして神の力に干渉できる存在となると、神、もしくは亜神──つまり低級神しかおらず、神同士の干渉は行われればすぐにわかるようになっているので……結果、低級神による干渉であるという結論になったのだと……」


 ふむ……星喰いは神々にとっても初めて遭遇する存在なのか。そうなるとさらに気になることがひとつ。


「ならばなぜ、白夜はあれを見た瞬間に星喰いだと断定できたのでしょう?」


 この問いに、ストレイル様はちらりと視線を動かした。その視線の先には神界で委員長が迷子にならないよう、委員長に付き添っている白夜の姿がある。


「それは、わたしの口から説明することはできません……」

「そうですか」


 つまり白夜には何らかの秘密があるのだろう。

 まぁでもそれは別に重要なことじゃない。白夜が一目で星喰いだと断定したのは確かに気になるんだけど、気になっただけで根掘り葉掘り聞きたかったわけじゃないし。


「ところで、ストレイル様。俺の療養が終わったら少しだけ鍛錬に付き合ってもらえませんか?」


 俺は話題を変えるべく、同時に自ら地獄に飛び込むことになると理解しつつもリハビリは必要だろうと判断してそう申し出る。するとストレイル様は微笑みを浮かべ、嬉しそうに頷いた。

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