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女神様の眷属  作者: みぬま
フォンファール帝国編
78/113

情報共有(今更感)

 魔物討伐に出た日より二日後。

 昨日それなりにのんびりと過ごしたおかげか瀬良くんたちはすっかり元気になっていた。なので、とりあえず一昨日見せられなかったものを見せることにする。


「これが上質な魔晶石なのですが、こちらが2級の魔物のもの、こちらが1級の魔物のものです。そしてこちらが割と一般的な魔晶石になります」


 そう言って巨大緑熊、竜、その他の魔物から取れた魔晶石を並べる。ちなみにあの竜は脅威度1級の魔物だったらしい。


 しかしこうして並べてみると、2級と1級でも全然違うな。大きさはもちろん、色味の深さ、鮮やかさ、輝き、透明度。何もかもが段違いだ。


「……本当に、見たらわかるくらい違いますね」


 そう呟いた瀬良くんの声には感嘆の色が混じっている。岩井くんも「これはすげぇな。うまく説明できないけど、めっちゃ綺麗。全然違う」と絶賛中。

 一方鈴木さんはいろんな角度から魔晶石を見比べ、何やら得心顔で頷いていた。


「それでもたまに判断に迷う魔晶石もあるんですよ。エインルッツでヨウスケ殿やハナコ殿と集めた魔晶石は上質なものか判断がつかず、結局エインルッツの国王陛下に鑑定を含めてお任せすることになりまして」


 そんな三人の様子を眺めながら例外もあることを説明した途端。瀬良くんも岩井くんも鈴木さんも、それまで魔晶石に向けていた視線を剥がしてものすごい勢いで俺の方を振り返った。

 ……んん?


「そっか、桜庭ちゃんと大島くんはクライルさんのところに行ったんだっけ」

「なんでこんな大事なことを忘れてたんだろう」

「ヤバいな俺ら。自分たちのことで一杯一杯すぎだろ」


 鈴木さんが、瀬良くんが、岩井くんが。口々にそう零して呆然とした表情でこちらを見てくる。

 けど、おかげでなぜ注目されたのか理解できた。同時に俺も自分のすべきことで頭が一杯で、三人に大事なことを伝えていなかったのだと気付かされる。


「申し訳ありません。そうですよね、みなさん他の救世主様たちのことも気になりますよね」

「あっ、謝らないでください!」

「そうだよ、クライルさんが謝るようなことはなんもないんだから」

「僕たちも失念していたので、そんな風に謝られてしまうと自分たちこそ薄情で申し訳なくなってしまいます」


 謝罪すると三人は慌てて身を乗り出してきた。そう言ってもらえるとありがたい。

 気を取り直して差し障りない程度に情報を共有することにする。


「まずヨウスケ殿とハナコ殿ですが、商業都市マルトレンで無事再会できました。しかしあなた方が王城から連れ去られたと聞き、同時にマルトレン内でも間者の動きがあったので、そのままマルトレンから脱出することになりまして……」


 一旦言葉を切り、どこまで話そうか考える。とりあえず場所を特定できる情報は伏せておこうかな。


「どこに耳があるわわかりませんので詳細は伏せさせていただきますが、今は信用のおける、腕っ節の強い知り合いのもとに匿ってもらっています」

「……よかった」


 鈴木さんが脱力したように椅子に座る。それを見て、自分たちが身を乗り出したままだったことを思い出したらしい瀬良くんと岩井くんも席に着いた。


「そして王城に残ったみなさんですが……急いでいたもので直接お話はできなかったのですが、少し覗いた感じだと、リョウジ殿とアヤカ殿が残った方々をまとめているようでした。そちらも先ほどとは別の、信頼のおける腕っ節の強い知り合いにお願いしてきましたのでご安心ください」

「それはよかった。しっかし、あの亮司がねぇ」


 何やらニヤニヤしながら岩井くんが呟き、瀬良くんや鈴木さんに至っては安心した表情を浮かべていた。

 俺としては廣瀬さんはともかく田嶋くんがまとめ役っていうのは意外だったんだけど、どうやら瀬良くんたちからしたら意外ではなかったらしい。


 思えば瀬良くんも岩井くんも田嶋くんとはよく話してたし、鈴木さんもよく声をかけていた。俺よりよほど田嶋くんの人となりを知っていたということだろう。

 三人の反応を見て、何だか俺も安心した。


「そしてここにも、ミニスたちを呼ぶことができました。なので次はシュンペイ殿やギンタ殿、サナエ殿の無事を伝えにエインルッツに戻らなければ」


 改めて状況を振り返ってみれば、ひとまずこれで全員の無事の確認と安全確保ができた。なら次にすべきことは自ずと決まってくる。


「忙しいなぁ、クライルさん」

「他の人からも同じことを言われました」


 あれは確かロイヤーに言われたんだっけ。でも忙しいのは今だけだ。みんなを無事に元の世界に帰してしまえばのんびりできる。


「僕たちのために、ありがとうございます」

「サリスタ様の御心のままに。それに私がやりたくてやっていることでもあるので、お気になさらず」


 そう答えれば、三人は瞳を瞬かせた。


「クライルさんがやりたくてやっているんですか?」

「ええ」

「どうして?」


 鈴木さんが心底不思議そうに首を傾げる。これも委員長と似たような会話をしたな、と思わず笑みが浮かんだ。まぁ委員長の場合は詰問に近かった気がするけど。


「その件に関してはいずれ話しますので、どうかその日まで、みなさん生き延びてくださいね」


 あれは何だったんだろうなぁ? と内心で首を傾げながら、委員長に返したのと同じ言葉を口にする。

 すると三人は顔を見合わせ、三人ともよくわからないと言わんばかりの表情を浮かべた。それでもこちらに向き直り、しっかりと頷き返してくれた。

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