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女神様の眷属  作者: みぬま
エインルッツ王国 商業都市マルトレン編
58/113

修行、修行、修行!

 こりゃだめだ、ひとつずつ考えないと頭がパンクする。


 とりあえずまずは魔晶石に関して。これはもう地道に集めるしかないから考えるまでもない。今まで通り、強い魔物を見つけ次第やっつけて着実に集める。以上。


 次に王都にいるクラスメイトたちの状況確認。これは直に足を運べばいい話だ。問題は安全確保の方。

 どう考えたって協力者が必要だよなぁ。エンディルみたいに任せられる人物がいればいいんだけど……申し訳ないけど、王都の兵士さんたちではちょっと頼りない。

 う〜ん……保留!


 お次は瀬良くんたちの安否確認。これも直に確認しにいくしかないな。救出の必要性も状況を見てみないことには判断できない……これも保留!


 そして最後は特大爆弾、低級神に関して。

 これは眷属になりたての俺ごときではどうにもならない案件だけど、放置していいものでもない。もし本当に低級神が地上にいるとなると非常にまずい。

 だと言うのに地上にいる可能性が高いんだよな。何故なら、神界にいる神々がそれらしき存在を認識していながら対処できずにいるからだ。


 スワイズ様曰く、神が地上で力を行使すると世界に多大な影響が出るそうだ。最悪の場合、世界のバランスが崩れて世界そのものが壊れてしまうのだとか。故に低級神が地上にいる場合、力の行使イコール世界の破滅に繋がりかねない神々では手が出せない。

 となると必然的に世界への影響云々に関係なく地上で活動できる眷属が対処することになるんだろうけど……低級とは言え神を相手に眷属がどうこうできるもんなんだろうか。


 ちなみにスワイズ様から教えられたところによると、低級神とは神になりかけている存在を指す。亜神と呼ぶ場合もあるらしい。

 そしてこの低級神も地上で力を振るえば少なからず世界に影響を及ぼすそうだ。だからこそ地上にいたらまずいって話になるんだけど……。


「とりあえず低級神に関しては地道に探すしかないね。地上にいるのは間違いないだろうけど、探すのは他の眷属に任せちゃっていいと思うよ」


 とは白夜の言。


「そんな悠長に構えてて大丈夫か?」

「もちろん急いだ方がいいよ。でも下手に追い詰めて力を使われたらたまらないからね」


 なるほど。なら低級神については他の眷属に任せてしまおう。となると、次に考えるべきは……。


「お前さぁ、こいつらの仲間のことが気になってるんだろ?」

「ん? うん」


 唐突に話しかけてきたのはエンディルだ。こいつらっていうのが誰を指しているのか確認してみれば、エンディルの視線は洋介と委員長に向けられていた。なので素直に頷く。


「ならよ、そっちには別のストレイル様の眷属を送り込めばいいんじゃねぇか?」


 さらりと提案されて一瞬言葉に詰まる。

 俺は例外だけど、眷属っていうのは基本的に主人たる神から何かしらの使命を与えられているものだ。エンディルも武を極めるという使命のもと、日々精進している。

 そんな使命を持つ眷属を、俺の都合で拘束してしまってもいいのだろうか。


「……協力してくれるかな」

「ったりめぇだろ、お前は俺らの弟分だからな。それにストレイル様も今回の召喚に関しては気にかけてるし、頼めば何かしら手を打ってくれんだろ」


 なんやかんやで通常時は優しくて親切なストレイル様。その眷属たちも基本的には荒っぽいけど性根は優しく親切だ。エンディルもこんな感じだけど信用できる。


「……なら、ロイヤーかな」

「あん?」

「王城に行ってもらうならロイヤーがいいと思う」

「ああ、なるほどな。いいんじゃねぇの」


 ロイヤーは元貴族だからか礼儀正しく、人の話もよく聞くタイプだ。王城に送り込むなら彼以外に適任はいないだろう。


「ろ、ロイヤー様、ですか?」


 と、ここで反応を示したのはニムさん。


「ご存知ですか?」

「もちろんです! 剣聖のロイヤー様ですよね!?」


 は? 剣聖?


「ロイヤーって剣聖なの?」

「地上だと剣聖っていわれてんな」


 思わずエンディルに確認すると即肯定された。へぇ、ロイヤーが剣聖……剣聖ねぇ。

 つい遠い目になってしまう。


「俺、あの人から杖術習ったんだけど。そんでもってあの人、杖術めちゃくちゃ強かったんだけど」

「奴の本領は聖剣術っつうちょっと変わった剣技だぞ?」


 マジかー。あれで本領じゃないとかびっくりだわ。




 とりあえず下級神については他の眷属が対応。ロイヤーの派遣に関しては白夜経由で神界に連絡を入れてもらうことになった。

 で、だ。


「俺に弟子入りしたからには覚悟しろよ? 泣き言は聞かんからなぁ!」


 始まりましたよ、脳筋の脳筋による脳筋になるための修行が。

 ちなみに参加者は洋介、委員長、ニムさん、カントさん。一列に並ぶ四人を遠巻きに見ていると、ぐるりと体を捻ってエンディルが振り返る。


「おら、何見物しようとしてんだクライル! 久々に稽古つけてやるから並べ!」

「いやさっき思う存分やったでしょうが」

「ほう、鍛錬をサボるのか? いいんだな? 我が主に報告するぞ?」


 とんでもない脅しだ!

 ストレイル様に報告するという一言を耳にした瞬間、俺は即座にカントさんの横に並んだ。


「まずは走り込みだ! どんだけ体力があるか見せて貰うぜ? ちなみにクライルはいつものな」

「へぇい」


 げんなりしながら返事をすると、エンディルの眦が吊り上がった。


「何だそのやる気のない返事は!」

「はいっ!」


 うぉぉ、一瞬ストレイル様の姿と重なった! さすがストレイル様の眷属、とんでもない迫力だ。




 こうして走り込みが始まった。

 洋介たちはそれなりに早いペースで走っている。一方こちらは全力疾走、エンディルの妨害付きだ。


「オラァ!」

「ちょろい!」

「ソラァ!」

「甘い!」


 いちいち言い返すのは神界で特訓していた時についた癖である。黙って避けてると何故かやる気がないと見做されるんだよな……理不尽。


「ちょこまかと!」

「いやこれ回避走行訓練だからな!? 本気になるなよ!」


 ひょいひょい避けてると何故かエンディルのスイッチが入ってしまったらしい。妨害テンポが速くなり、もはや襲撃と化している。


「うっわぁ、何だアレ」

「俺たちもあれやるんですかね?」

「まさか」

「……すごい!」


 洋介たちがドン引きしている……かと思いきや、委員長だけはやる気を出している様子。実は委員長、脳筋系なのだろうか。


「ドラァァア!」

「つうかお前は真面目にやれ!」


 回避走行させる気のないエンディルの攻撃を躱し、広場の中央に移動する。もう走るのは諦めて、最小限の動きで回避する訓練に移行することにした。

 そのまま無手で構え、腰を落とし、飛びかかってくるエンディルの攻撃に備える。


「そらよ!」

「よっと」


 放たれた突きを僅かに体を逸らすことでやり過ごし。


「ふっ!」

「ほいしょ」


 引き戻し様に水平に振るわれた攻撃を身を屈めて躱し。


「シィッ!」

「おっと」


 素早く軌道修正して襲いかかってきた斬撃を転がって回避する。


「相変わらずすばしっこい奴め」

「ふふふ、これくらい楽勝!」


 転がった勢いで起き上がり、次に備えて身構える。

 しかし。


「ま、鈍ってないなら何よりだ」


 エンディルが剣を収めた。

 やけにあっさりだな……不気味だ。っていうか。


「お前さぁ、俺ばっかり構ってないでちゃんと弟子の面倒を見てやれよ。師匠の自覚が足りないんじゃないか?」

「おっ、そうだな! ちなみにお前はこのあとどうすんだ?」


 問われて一瞬考える。ここで一緒に修行しててもしょうがないしな……。


「マルトレンのことも気になるし、下の様子を見てくる」

「そうか。あいつらは俺が預かっとくからしっかり見てこいよ!」

「はいはい」


 適当に返事をしながら岩に立てかけておいた錫杖を手に取る。うん、やっぱり錫杖を持つとしっくりくるな。

 そのまま山道の方へと歩いていくと、走っていた四人が駆け寄ってきた。


「どっか行くのか?」


 声をかけてきたのは洋介。残り三人は息が整わないらしく、必死に呼吸を整えながらこちらを見ている。


「ええ、下の様子を見てこようかと」

「……お前、まだそれ続けんの?」


 洋介がじっとりとした目を向けてくる。

 十中八九、洋介の言う「それ」とは敬語のことだろう。でもな、そこにクラスメイトがいる限り俺は身バレ回避に全力を注ぐぜ!


「お気になさらず。そうだ、ヨウスケ殿。例の道具はハナコ殿にお譲りしたので私に連絡を取りたいときはエンディルに言って下さいね」


 エンディルは魔法が使えるし、白夜と連絡を取り合うことができるはず。遠巻きにこちらを見ている当人も頷いてるから大丈夫だろう。

 そのまま俺は洋介たちに別れを告げ、今朝登り切ったばかりの山を下りていった。

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