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女神様の眷属  作者: みぬま
エインルッツ王国 炭鉱街ドイロック編
33/113

魔法って便利ですね(ちょっと羨ましい)

 どうしたものか、なんて考えたところで下りる方法なんて限られてるわけで。

 俺なら飛び降りて多少ダメージを受けても再生の加護で復活できるけど、このふたりは無理だよなぁ……なんてことを思っていたら。


「オレの風魔法で下りよう」

「いやいや、俺の土魔法にしておきましょう。足場を作るので、万が一足を踏み外した人がいたらキールさんの風魔法で補助してもらっていいですか?」

「なるほど、じゃあそれでいこう」


 キールさんとユギスさんの口からさらっと魔法という単語が出てきて目が点になる。

 そっか、この世界って魔法があるんだっけ。自分が使えないもんだから全く頭の片隅にも浮かばなかった。


「そうだアキオ。キミがどれだけ理解してるかわからないから言っておくけど、足場みたいなキミを対象としない魔法は問題ないけど、キミを対象とする魔法に関しては使っても意味がないから伝えといたほうがいいよ」


 音声を遮断しているのだろう、普通に話しかけてきた白夜に首を傾げて「もっと詳しく」という意思を伝えると、白夜は言葉を選ぶような間をあけてから続けた。


「魔法っていうのは使い手側の魔力を消費して発動するものなんだけど、受け手側に使い手側の魔力を受ける器があって初めて成立するんだよ。つまり魔力を受ける器がないキミに魔法を使っても使い手側の魔力で支えられている一瞬しか効果が得られないわけ」


 なるほど、魔法ってそういう仕組みなのか。で、魔力の器を失っている俺に魔法は実質無効であると。

 確かにこれは伝えておいたほうがいいな。


「あの、ちょっといいですか?」


 足場を作る位置や間隔について話し合っているユギスさんとキールさんに声をかけてみる。するとふたりは会話を中断し、こちらを振り返った。


「あのですね、私、魔力の器がないので魔法が効かないんですよ」

「えっ、そんなことってあるの?」


 驚くキールさん。一方でユギスさんはポンと手を打った。


「ああ、稀にそういう体質の人がいるんですよね。魔力の受け皿がないからその人自身に魔法をかけても意味がないんでしたっけ」


 おお、稀にとは言えほかにも同じ体質の人がいるのか。覚えておこう。

 ということで心のメモに書き留めつつ、ユギスさんの言葉に頷いた。


「そうなんです。足場みたいな私自身を対象としない場合は問題ないのですが、私自身を対象とする魔法は意味がないらしくて」

「へぇ……でもそれじゃ万が一クライルさんが足を踏み外したら危険──ってこともないか。そもそもクライルさん、足を踏み外さなそう」

「それは確かに」


 笑い合う二人に俺も愛想笑いを向けて、そっと嘆息する。

 魔法が使えないってのもちょっと残念だったけど、まさか魔法をかけてもらうことすら適わないとは。ショックというほどではないにしても残念には思うわけで。


「キミの場合、再生と再起の魔法が常時かかってるようなものだから」


 励まそうとしてくれたのか、白夜がぽそりと呟く。

 しかしそうか、加護は常時発動の魔法みたいなもんなのか。ならま、いっか。


 そうこうしている間に相談が終わったのだろう。ユギスさんが何やらぶつぶつと呟きながら地面に手を押し付けた。

 すると縦穴の壁に沿って螺旋状に足場が形成されていく。


「おお〜」


 すごい! 火を出したり水を出したりする魔法なら城にいたときに見たことあったけど、こういう補助的なものは見たことなかったんだよな。攻撃魔法よりこっちの魔法の方が便利そうだ。


「……こんなもんですかね。俺の魔力量だとこの間隔がギリギリなので、くれぐれも踏み外さないように気をつけてください」


 言われて確認してみれば、若干飛ばないと次の足場にたどり着けない程度の間隔で足場が形成されている。

 これ、下りるのはいいけど登る時大変なんじゃ……いやでもこの世界の人なら大丈夫なのか? よくわからん。


 そんな俺の心配をよそにユギスさんとキールさんは身軽に足場を渡って下り始めていた。いつの間にか明かりの魔法を使ったらしく、ふたりの頭上にはそれぞれ周囲を照らす光の球が浮いている。


 ……って眺めてる場合じゃなかった。俺も急いでふたりの後に続き、最下層に到着。

 さっと見回してみれば狭かった坑道とは比べ物にならないほど広い空間がそこにあり、ややデコボコしている地面からは異様な気配が漂っていた。


「……足下」

「ですね……」


 キールさんとユギスさんが武器を構える。俺は相手の動きに合わせるスタイルなので特に構えることなく地中に意識を傾けた。


 間違いなくこの地面の下にボス岩モグラと思しき強力な魔物がいる。けど超巨大ムカデもどきの時と同様、手下である雑魚岩モグラも山ほど潜んでいるようだ。

 いや、いるのは岩モグラだけじゃなさそうだな……正確な形までは読み取れないけど、細長い何かがいる。


 それを察知した瞬間、地面を突き上げて何かが躍りかかってきた!


「ふっ!」


 すかさずユギスさんが剣を振るう。向かってきた何かは一刀両断され、ベシャッともビシャッとも取れる水分の多そうな音を立てて地面に落ちた。

 ……って、うっわ!


「巨大ミミズもどき!」

「キミのネーミングセンスは相変わらずだね……」


 だってほかに言いようがないんだもの。

 ぱっと見は一メートル強まで巨大化したミミズ。だけど頭がトゲトゲの球形をしていて気持ち悪さが激増している。


「こいつは頭部が異様に固い魔物ですね。あの頭にさえ気をつければ脅威ではありません!」

「了解です!」


 どうやら既知の魔物だったらしい。ユギスさんの言葉に頷いている間にも次々と地面から飛び出してくる巨大ミミズもどきたち。それをユギスさんは剣で、キールさん短剣で、俺は錫杖でちぎっては投げ、ちぎっては投げ。


 それにしても弱い、弱すぎる。なのに数が多くて煩わしい! と思っていたら巨大ミミズもどきに続いて雑魚岩モグラも襲いかかってきた。

 事前に絵で見た通り腹部以外が岩の鱗で覆われており、故に弱点も腹部になる。弱点さえわかっていれば対処は容易い──と言いたいところだけど、とにかく数が多い。集られて動きが制限されるのが面倒くさい!


「風よ、切り裂け!」


 キールさんの声。続いて魔物たちの悲鳴。

 見ればキールさんに集っていた魔物たちが血を撒き散らしながら吹き飛ばされていた。致命傷は負わせられなくとも煩わしさから解放されたキールさんは弓に複数の矢を番え、一気に放つ。ほぼ全ての矢が弱点を晒していた岩モグラに突き刺さり、息の根を止めた。


「すごっ……」

「彼は腕のいい狩人みたいだね」


 珍しく白夜も称賛の声を上げる。


「どぉっりゃぁあああ!!」


 感心していると今度はユギスさんの雄叫びが上がる。そちらを見れば傷を負った魔物が放射状に倒れていた。どうやら剣ごと体を一回転させたようだ。

 こちらも魔物に集られている状況から脱して身軽になり、息のある魔物に次々と止めを刺していく。


「うわぁ、ユギスさんもすごい」

「しっかり仕掛けるタイミングと位置を読み切ってたね」


 おお、ユギスさんも白夜に誉められてる。羨ましい!


 かく言う俺はまぁ、集られはするものの神気のおかげで魔物の方が離脱していくからあれだ、ヒットアンドアウェイを延々と仕掛けられているような微妙な状態でして。振り払う必要はないけど鬱陶しいことには変わりないという。


「ああもう、邪魔っ!」


 飛びかかってくる魔物を錫杖で薙ぎ、至近距離まで詰められれば拳で殴り飛ばし。そうしている間もずっと地中にいるボス岩モグラと思しき気配の主へと意識を向け続け──


「来る!」


 俺が叫ぶのと同時、ユギスさんとキールさんが壁際に寄った。俺も巨大な気配から離れるべく壁際に寄り──直後、地面を吹き飛ばす勢いでそいつは現れた。


 逃げ遅れた魔物たちが宙を舞う。


 その光景を見ながらふと思った。

 超巨大ムカデもどきがロッセさんを吹き飛ばした時もこんな感じだったのかな、と。

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